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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第八章 古の廃都
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十八號の未来

 人面鳥神官(ハーピィプリースト)達を始末した私達は、地上でンケルフォーと戦っているジゴロウ達と合流した。


「こっちは終わったぞ、皆!」

「チェッ、今回は俺の方が遅かったか」


 ジゴロウは悔しそうに顔を歪める。どうやら圧倒的に格上の相手を私達よりも早く倒してやろうと意気込んでいたようだ。いやいや、流石にそれは無理と言うものだろう。


「ぐぬぅ、あの役立たず共が!じゃが、我が一族はまだまだ数がおるわ!グギョオオオオオオオッ!!!」


 ンケルフォーは私を睨み付けたあと、上を仰いでから雄叫びを上げた。きっと廃都にいる人面鳥(ハーピィ)達に召集を掛けたに違いない。確かに効果的な手段なのだろうが…悲しい事にそれは無意味なのだ。


「ど、どうしたことじゃ!?何故、儂の呼び声に応えぬ!?」

「理由を教えて差し上げようか、ンケルフォー殿?」

「なんじゃと?」

「それはな…私の魔術で全滅させたからだ!星魔陣起動、聖光(ホーリーレイ)!」


 私は返答と共に【神聖魔術】で攻撃する。別段弱点属性という訳ではないが、逆に言えば耐性を持っている訳でも無い。当たればそのままのダメージが期待出来るのだ。


「ぐっ…!わ、我が一族が全滅じゃと?馬鹿な事を言うな!儂がどれだけの時間を掛けて数を揃えたと思うておる!」

「信じて貰えんとは悲しい事だ。私の人徳が足りんということかな?星魔陣起動、暗黒糸(ブラックスレッド)

「ぬかせぇっ!(ストーム)!」


 ンケルフォーは私の暗黒糸(ブラックスレッド)を翼で薙ぎ払うと魔術で応戦してきた。おっと、空を飛んでいる状態で(ストーム)を食らうわけにはいかない。きっと洗濯機に突っ込まれたような気分を味わう事になるからな!


「それで、私ばかり見ていてもいいのかね?」

「余所見たァ余裕だなァ!」

「お仕置きが必要じゃな?」

「隙あり!」


 私が気を引いた隙を突いてジゴロウと源十郎とルビーが脚を切り刻む。ダメージエフェクトが飛び散り、マーカーの横にある体力バーが減少した。よしよし、やはり数の暴力で畳み掛けるのはどんな相手にも有効だな!


「ガッ…!このぉ…!地虫の分際で、調子に乗るなぁぁぁ!!!」


 周囲と頭上まで包囲されたンケルフォーだったが、怒りの咆哮と共に二枚の翼の振り回すと、その鋼鉄めいた硬度を誇る羽根を飛ばして来た。おそらくは毒炎亀龍(タラスク)の棘と同じく【射出】の能力(スキル)を用いているのだろう。


「っとォ!掠っちまったか!」

「あの亀よりも速いようじゃし、仕方がなかろうよ」

「グルルルル…」


 だが、我々も伊達にあの毒炎亀龍(タラスク)を撃破してはいない。ジゴロウと源十郎は掠り傷こそ負ったものの、殆どの羽根を回避しているし、カルは自慢の鱗で全て弾いていた。私?さっさとカルの後ろに逃げ込んでいますよ。


「あ、危なかったぁ~!」

「チクチクします…」


 毒炎亀龍(タラスク)と戦っていないルビーとアイリスの二人だが、ルビーは咄嗟に能力(スキル)で防御力を上げて耐え、アイリスは分厚い細胞壁で受け止めている。


 ルビーの表面は削れているし、アイリスの全身に羽根が突き刺さって剣山のようになっているものの、二人ともダメージは大したことは無いようだ。因みに、アイリスの背後にいた十八號は勿論無傷である。彼女に感謝するのだな!


「儂の矢羽根を防ぐじゃと!?」

「似たような攻撃を食らった経験があるのだよ。では、袋叩きを再開するとしようか?」


 本来ならば今の広範囲攻撃で数名の負傷者を出させて逆転の好機を作り出すつもりだったのだろうが、そうは問屋が卸さない。何だかんだで我々は幾つもの修羅場を潜り抜けて来たのだ。今さら中途半端な威力の全体攻撃くらいで怯んでやるものかよ!


「オラオラオラオラァ!」

「おっ?羽根を斬るコツが解ってきたわい!」

「お祖父ちゃん、そんなことして遊んでたの!?」


 ジゴロウ達が脚や腹部への攻撃を再開し、私やアイリスはその援護に回る。ンケルフォーのレベルは高いものの、はっきり言って毒炎亀龍(タラスク)よりは弱い。タフさでもパワーでも劣っているだろう。そんな相手を今よりも少ない人数で、しかも低レベルかつ進化する前に倒している我々を苦戦させたければ、目からビームでも出すくらい突拍子の無い事をして貰わんとなぁ?


「ギェギャアァッ…!この、虫ケラがぁぁ!」


 ンケルフォーはジゴロウ達の猛攻に耐えられず、翼を羽ばたかせて空へと飛ぼうとする。おいおい、いいのか?そんなに悠長な事で?


「グルアアアア!!」


 巨体を浮かせてジゴロウ達の手から逃れたその時、背後から急降下してきたカルが空中で前転しつつ、尻尾をンケルフォーの背中に叩き込んだ。身体が大きくなるのと並行して先端の鋭さも増しているので、カルの尻尾はンケルフォーの背中を強かに打擲しつつ、深々と切り裂くことにもなった。


「ぎゃあああ!?」

「もう逃げられんぞ?星魔陣遠隔起動、呪文調整、茨鞭(ソーンウィップ)


 呪文調整によって極太になった茨が魔法陣から伸びたかと思えば、ンケルフォーの全身へ蛇のように纏わり付いた。金属と同等の硬度を誇る奴の羽根によって、茨の棘では傷付くことは無い。しかし関節を極めるように巻き付けたことで、力を入れ難くなり、結果として空を飛ぶどころか立ち上がることすらままならなくなってしまった。大チャンス到来である。


「つくづく思うがよォ、魔術ってなァ便利だよなァ」

「違うよ、ジゴロウ。この前しーちゃんと魔術師プレイヤーが実況放送してるの見たけど、イザームとは全然違ったから。ボク達のリーダーが特別に使い方が巧いだけだから」

「そうなのか?」

「そうだよ。少なくとも腕利きって評判の実況者よりも上手いのは確かだよ」

「お喋りはその辺にしておけ、二人とも。それよりも、千切られる前に…な?」


 何やら小声で会話しているジゴロウとルビーだが、この好機を逃す訳にはいかない。今でこそ無様に転がっているンケルフォーだが、ボスモンスターなのだ。どうせ力任せに茨を引きちぎる位の筋力はあると思われる。今のうちに止めを差してしまおう。


「ま、待て!待つのじゃ!儂は!儂はこんな所で死ぬ訳にはいかぬ!」

「よーし、皆!やってしまえ!」

「ぎぃぎゃあああああああああああ!!?」


 私達は命乞いのまるっと無視してタコ殴りにしていく。大鎌が、拳が、蹴りが、刀が、短剣が、鉈が、木槌が、牙が、爪がンケルフォーの体力をゴリゴリと削って行く。ふむ、体力はもうすぐ無くなってしまうか。次の形態があるかと思ったが…そんな事は無かったようだな。


「かつて膝を屈した相手の末路がこれですか。ここまで来るといっそのこと哀れに思えてくるのだから不思議ですね」


 アイリスの後ろに控えていた十八號がそんな事を呟きつつ前に出てきた。自分で言うのもアレだが、我々が今やっているのは囲んでリンチに掛けているようなものだし、可哀想に見えるのも仕方がないだろうな。


「イザーム様。ここまでお世話になっておきながら、私の不躾な願いを聞いていただけないでしょうか?」

「願い、とは?」

「奴の止めは私に刺させてていただけないでしょうか?」


 おや?おやおやおや?何だか楽しい事になって来ましたねぇ?十八號の正体は魔道具の一種である魔導人間(アンドロイド)である。しかし彼女には疑似人格かそれに限りなく近いAIが搭載されているのはこれまでの会話で明らかだ。


 ならば人間が彼女と同じ境遇に陥った際、恨みという感情を抱くのかは想像に難くない。しかもその憎悪の対象に長い間コキ使われていたのだ。十八號がそのアルカイックスマイルの裏では黒く澱んだ感情が渦巻いていたのかもしれない。


「私は一向に構わんよ。皆はどうだ?」

「いいぜ、別に。もう楽しめそうにねェしな」

「ジゴロウと同じじゃよ」

「ボクはどっちでもいいよ」

「ということで、やっちゃって下さい!十八號さん!」

「皆の同意が得られたな。さて…」


 我々全員が止めに拘るような理由も無いし、やりたいのならやらせてしまえばいいのだ。


「むぅぅ!裏切り者のガラクタめ!勝手に壊れておれば良かったものを…!」

「ああ、これほど視覚システムが故障している事を悔しく思った事はありません。もし正常ならば、地べたに這いつくばる負け犬を眺める事が出来たというのに」

「きっ、貴様ぁぁ!」

「ですが同時に、聴覚システムに異常が無い事をこれほど幸運に思えた事はありません。負け犬の遠吠えをハッキリと聞くことが出来るのですから」


 うおぉ…キッツ…!あんなことを正面から言われたら私なら滅茶苦茶悔しいだろうなぁ。お、ンケルフォー君は口をパクパクさせながら顔を真っ赤にしているぞ。


「言いたいことは山ほどありますが、時間を掛けすぎる訳にもいかないでしょう。では、死んで下さい」


 十八號は機関銃の銃口をンケルフォーの額に押し当てる。頭部に風穴を空けてやろうと言うのだろう。


「くおおおお!貴様だけでも道連れにしてくれるわ!」


 ベキベキと音を立てながら、ンケルフォーは無理矢理に右翼を茨から抜け出した。あの音から察するに、関節は挫いているだろうし、下手をすれば骨折しているかもしれない。


 それでももう逃れられないと悟ったのか、ンケルフォーは最後の力を振り絞って十八號を道連れにする事を選んだ。命乞いをしないのは、奴のプライドが邪魔したからだろうか?


「させんよ。発動、聖盾(ホーリーシールド)


 私はこういう悪足掻きに備えて起動待機していた魔術で十八號を守る。ンケルフォーによる決死の一撃は、儚くも不死である私の作った輝く盾に防がれてしまった。奴は呆然として此方を凝視している。いや、そんなに見られたら照れるじゃないか。


「それでは、さようなら」


 廃都の屋上で、戦いの終わりを告げる銃声が轟いた。



◆◇◆◇◆◇



――――――――――


戦闘に勝利しました。

フィールドボス、人面鳥酋長(ハーピィチーフ)・個体名『ンケルフォー』を撃破しました。

全員に特別報酬と6SPが贈られます。

種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

従魔の種族(レイス)レベルが上昇しました。

従魔の職業(ジョブ)レベルが上昇しました。

【知力強化】レベルが上昇しました。

【精神強化】レベルが上昇しました。

【体力回復速度上昇】レベルが上昇しました。

【魔力回復速度上昇】レベルが上昇しました。


――――――――――


 ボス戦が終わった後、私とアイリスは剥ぎ取りやンケルフォーの巣を捜索して目ぼしいアイテムの収集を行った。奴の巣にも他の人面鳥(ハーピィ)と同じく多くのお宝が眠っており、我々としては非常にウハウハである。


 しかし、ジゴロウと源十郎の戦い大好きコンビは消化不良なご様子だ。彼らは毒炎亀龍(タラスク)との戦いのようなギリギリの戦闘を楽しめると思っていたのに、その予想を裏切られたかららしい。うーむ、二人を満足させるような強敵と短い期間で幾度も戦うなど御免被りたいのだがね。


「こっちのアイテムは全て集まりましたよ、イザーム」

「おお、そうか。私も終わったところだよ。幾つか使える装飾品もあったし、実入りは上々だな」

「こっちもそうでした」


 ンケルフォーの巣のお宝には、魔術のダメージを軽減させる指輪や筋力を上げる腕輪など、興味深い品々が揃っていた。私とアイリスが集めた物を合わせるとS(特別級)が三個、R(希少級)が十個といった所か。分配は後回しだな。


「私もいつかもっと良いアイテムを作れるようになって見せますね!」

「期待して待っているよ。っと、ジゴロウ達が戻って来たようだ」


 創作意欲を刺激されているアイリスに期待を寄せつつも、エレベーターから出てくるジゴロウ達に注意を向ける。彼らは十八號と共に一階まで戻り、屋上に設置するための慰霊碑を取りに戻っていたのだ。


「では、よろしくお願いいたします」

「ぬおあぁぁぁ!お、重てェェ…!」

「リアルじゃと腰をヤっとるじゃろうなぁ」

「がんばれー二人ともー」


 ジゴロウと源十郎は高さ四メートル程もある巨大な石碑を二人で担いでいた。この石碑はロビーの床にも使われている特殊な石材から出来ており、頑丈で風化しにくいらしい。十八號が長い時間を掛けて床から切りだして加工したんだとか。


 主人による最期の命令を果たす為に頑張ったのだろう。泣かせる話じゃないか。因みに、後から聞いた話によるとゲーム的には特殊なアイテム扱いなのでインベントリに突っ込んで運搬することは出来なかったようだ。お疲れ様と言いたい。


 アイテムの回収し終わった後、ンケルフォーの巣を焼き払って広くなった屋上のど真ん中に慰霊碑を設置する。これでクエスト完了だ!


「…………。これで任務完了です。皆様、本当にありがとうございました」

「いや、こちらも報酬を貰っての仕事だ。頭を上げてくれ」


 十八號は感慨深そうに聳え立つ慰霊碑を眺めてから、我々に向かって深々と頭を垂れた。私は頭を上げるように頼んだものの、彼女はたっぷりと十秒以上も頭を上げなかった。


「こちら、報酬のアクセスキーです。お納め下さいませ」

「…ああ、確かに受け取った」


――――――――――


緊急クエスト:『墓標の摩天楼』をクリアしました!

報酬が贈られます。


――――――――――


 うむ、ゲーム的にもクエストは終了したようだ。明日に向けての憂いはこれで無くなったな。


「十八號はこれからどうするの?」


 後は別れを告げてから拠点転移(ベーステレポート)で帰って終わり、かと思っていたのだが、ふとルビーがそんな事を聞いていた。確かに、これで彼女を縛るものは何も無くなったのだ。ならば壊れるその時まで自由に活動すればいいだろう。


「これから…何をすればいいのでしょうか?考えた事もありませんでした」

「あの、だったら私達と一緒に来ませんか?」

「えっ?」

「は?」

「お?」

「む?」


 私は驚いて唐突に勧誘したアイリスを見詰めてしまう。ジゴロウと源十郎も似たような反応であった。


「ああ!いいじゃん!そうしようよ!」

「で、ですが私は様々な機能にエラーが出ております。お役にたてるとは…」

「でも、簡単な作業なら出来るんですよね?」

「は、はい。単純明快なものなら…」


 そして勧誘を受けている本人が一番驚き、狼狽していた。その上、これまで終始控え目であったアイリスが積極的にグイグイと迫っている事で戸惑っているようだ。


「何時になるかは解りませんが、貴女を修理する知識と技術を身に付けてみせます!ちょうど助手を募集していた所ですし、ね!?」

「アイリスもこう言ってるんだし、一緒に来なよ!きっと楽しいよ!」


 女性陣二人による説得に対し、十八號はしばらく熟考した後、首を振った。それも縦に、である。


「ここで朽ち果てるものと思っておりましたが、やはり私は魔導人間(アンドロイド)として主人の元で働く事にこそ存在価値を感じるようです。わかりました。我が機体が壊れる日まで、皆様にお仕え致します」


 何と言うことだろう。私が小賢しい考えを巡らして十八號を手元に置こうと画策していたのに、それを()()()()にしたルビーの一言であっさりと仲間に引き入れてしまった。ワイワイと盛り上がる女性陣を、我々男衆は呆然と眺める事しか出来なかった。

 正直、この章は不完全燃焼でした。結構悩んだのに、上手く表現出来ませんでした…。


 自分の力不足を痛感しております(´;ω;`)


 次回はこの章の最終回であり、次章のプロローグです。掲示板回も同時投稿します。久々の悪役プレイの予定です!


 9月27日に投稿予定です。

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【誤字報告】 「私もいつかもっと良いアイテムを作れるようになって見せますね!」 ⇩ 「私もいつかもっと良いアイテムを作れるようになってみせますね!」 「何時になるかは解りませんが、貴女を修理する知識…
[一言] 面白かったですよ
[一言] 十八號の未来 それをオシャカにしたルビーの一言であっさりと仲間に引き入れてしまった。 ルビー?仲間にならないかと勧誘し始めたのはアイリスでは?
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