人面鳥の巣
4日に投稿したと思い込んでいました!すみません!
八羽の人面鳥に襲われた後、我々は一度の襲撃も無く地下街の出口付近まで辿り着いた。ここは人面鳥の巣の密集地帯のど真ん中にあるのだが、それでも襲われないのは一周回って不気味ですらある。
「ギリギリまで儂らを釣り上げる策じゃとしたら、余程胆が据わっておるのぅ」
「恐ろしい事を言わんでくれ」
もしそうだとしたら、厄介極まりない。しかし、巣をここまで危険に曝してまで不意討ちを狙うのは不自然だと思う。そこまでしなければならない程追い詰めていたのかもしれないが…
「あー…下からじゃあ巣の様子は見えねェな」
「屋上に行かねばどうにもならんじゃろうなぁ」
ジゴロウと源十郎はそんな事を言いながらこちらをチラチラと見てくる。盗み見るような仕草だが、動きが無駄に大袈裟だ。明らかに私にやらせる気マンマンだな?
ビルの入り口は崩れて塞がっている所が多いし、一々階段を使って昇るのは面倒だから自由に飛べる私にやらせたいのだろう。面倒臭がりめ。いや、そのくらいやるけどさ。
「仕方がない。カルよ、見に行こうか」
「グルッ!」
私はカルの背中に飛び乗ると、一人と一頭で空へと舞い上がった。私は一人で飛ぶことも出来るのだが、カルは私に限らず誰かを乗せて飛翔する事がマイブームなご様子。なので緊急時以外は彼の背に乗るようにしているのだ。
カルは私を乗せているなど微塵も感じさせない軽やかさで飛び立った。骨だけの私は軽いように見えるが、色々と追加しているせいで成人男性の平均値を越える重さになっている。それを鑑みれば、龍という種族の力強さがわかると言うものだ。
「さてと、巣に人面鳥の姿は見えないな。本当に全滅したっぽいぞ、これは」
「グルル?」
瞬く間にビルの屋上よりも更に上へ飛んで巣の現状を上から観察したところ、人面鳥らしき影は一つも見えなかった。どうやらこの人面鳥の群れは本日をもって滅亡してしまったらしい。南無南無。
「一応確認はしておこう。カル、あのビルに降りてくれ」
「グルッ!」
私達は真下のビルに着地し、そこにあった巣の一つを調べることにした。
人面鳥の巣は、円形のすり鉢状というオーソドックスな形状だった。ただし、人面鳥そのものが大きいので、巣も大型である。一つ一つの大きさは四畳半くらいはあるのではなかろうか。
「近付いてみるまでは気付かなかったが…なんというか、狂気の前衛芸術のようだな」
十八號の言っていた通り、人面鳥はこの都市にあるもので使えそうな物は何でも集めて巣作りを行ったのだろう。都市中に生えている木の枝や道路標識のような大型の鉄パイプは普通だ。しかし人や魔物の骨、魔導人形の残骸、更に魔導人間と思われるモノまであった。
何故断言出来ないのかと問われれば、表皮が剥げて内側の骨格や人工筋肉がむき出しになっているのだ。その程度なら保存状態が良好な方で、上半身だけであったり下半身だけであったり、中には頭部の上顎から上が無くなって下顎だけになってしまった不気味なものまである。
はっきり言って悪趣味である。もし私の寝床がこんな感じだったなら、夢に出てきそうだ。
「おっと、これは武器っぽいか。あとは、ガラスに宝石か?」
巣の材料を検分していると、数点の銃器や刀剣らしきものを発見した。どれも状態は悪いし、人面鳥の羽毛だらけだが、修理すれば再利用出来るようになるかもしれない。こういう話は私にはわからんし、アイリスと十八號にしてもらおう。とりあえず回収。
他にはガラスや貴金属、宝石のような光り物も巣に埋め込まれていた。装飾のつもりなのか?カラスは光り物を集めると聞いた事があるが、似たようなものだろう。こちらも回収しておくか。
「ん?これは卵?」
最後に私が巣の真ん中を見ると、幾つかの卵が転がっているのに気が付いた。卵の殻にはウズラのように白地に黒の斑点が浮かんでおり、大きさはバスケットボール程もある。流石は魔物の卵だな。
ふむ、卵か。インベントリに生物は入れられないが、カルの卵は入れられたのだ。アイテムとして持って帰る事も可能なのでは?先ずは【鑑定】しておこう。
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人面鳥の卵 品質:良 レア度:S
高級食材である人面鳥の卵。無精卵なので孵化はしない。
人面鳥は獰猛かつ群れを形成するため、卵を盗み出すのは非常に難しく、市場でも滅多にお目にかかることは無い。
滋養強壮作用があり、万能薬の材料となる。
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おぉ~!結構なレアアイテムじゃないか!私は食べられないし、薬も使った所でダメージにしかならないのだがね。
しかし、これを売り払えばいい財源となるハズだ。明日以降、私はイベントに参加するが、女性陣三名は鳥人の商人と一緒に華国へ行く。その時に換金出来るアイテムがあれば、いざと言う時に役立つだろう。
「グルゥゥ…」
私が卵を掌に乗せて眺めていると、カルが非常に物欲しそうな顔で卵を見詰めていた。試しに卵を持った手を右に動かすとカルは追いかけるように首を動かす。それは左に動かしてもそうだった。
「…食べたいのか?」
「グルッ!」
うぐっ!や、やめろ!そんな瞳を輝かせて見られたら断れないじゃないか!こ、これ以上甘やかす訳には…!それに、これはアイリス達の金策に使えるアイテム!無為に消費しては…!
「い、一個だけだぞ?」
「グルルゥ!」
ダメだ…私はダメな男だ…。あのキラキラとしたピュアな目で見られたら断る事は出来ない…。きっとこういう奴が娘に甘い父親になるんだろう…。
卵を受け取ったカルは、何と卵を殻ごと口に放り込んだ。そして牙によってバリバリと音を立てながら咀嚼している。ワイルドだな、おい!
「グオオオオン!」
「そんなに美味いのか?」
カルはとても機嫌良さげに雄叫びを上げる。これまで戦闘になると、ついでのように敵を補食していたのでてっきり肉が好きなのだと思っていた。しかし、卵だとこんなに幸せそうに食べるんだな。どうにかして卵の安定供給を実現させられないだろうか?
「おーい!兄弟!どうだァ!?」
おや、ジゴロウが痺れを切らして呼んでいるな。さっさと降りて様子を教えろと言うことだろう。やれやれ、では降りるとするか。
◆◇◆◇◆◇
巣の安全を確認すると、私とカルが皆を順番に屋上へと運び、それから手分けして物色を開始した。その後、約二時間ほど掛けて全ての巣から使えそうなアイテムを回収し終える事が出来た。
途中で三度ほど人面鳥と戦闘になった。奴等は果物や小型の鳥、または虫などを足で掴んでいたことから、食料調達のために巣から離れていた個体だったのだろう。群れという規模にも達していなかったので一蹴したがね。
回収したアイテムの内訳は約五割が魔物の骨、約三割が魔導人形や魔導人間のパーツと残骸、約二割が宝石などの光り物で、残りが武器や卵などであった。武器類は数そのものはそこそこあったのだが、状態が悪い物ばかりで厳選した結果としてこうなったのである。
「アイリス、十八號殿。どうだ?使えそうか?」
「うーん、銃の詳しい仕組みは知りませんけど、パーツは同一規格っぽいですね。なので部品を遣り繰りすればどうにか使える銃が出来そうです」
「アイリス様の仰る通りかと。最も良好な状態な物をベースにすれば、拳銃と狙撃銃が一丁ずつ再生可能だと思われます」
「ほう、それは良かった。十八號殿の使える手札が増えたのだから」
私がそう言うと、十八號は微妙な顔つきになって首を横に振った。
「先程も申し上げました通り、私は視覚システムが不調です。なので精密射撃は出来ません。ですので拳銃は副武装になりますが、狙撃銃の方は使いこなせないでしょう」
「そうか…残念だ」
十八號が求めていたのは機関銃のオプションパーツだったようだ。そもそも精密射撃が出来ないから、機関銃で銃弾をばら蒔く戦い方をしているのだろう。難儀なことである。
「じゃあこの長い銃、しーちゃんのお土産にしていい?きっと大喜びするよ!」
「構いません。そもそも私の依頼は報酬としてアクセスキーをお渡しすることになっているのです。実質的にこの都市の遺物を自由に持ち帰る権利を譲渡したのですから、狙撃銃の一丁ならば前金代わりに受け取って下さいませ」
確かに、VRS出身のシオからすれば最高のお土産になるかもしれない。だが、せっかく剣と魔法のゲームに来たのにやることが鉄と硝煙なのはどうなんだ?
「あと、魔導人間の方は十八號の修理に使えるのか?」
数の上ではかなり手に入った魔導人形や魔導人間のパーツ類。これらを用いてガタが来ている十八號の修繕が出来ないかと考えたのだ。
「すいません、わからないです」
しかし、アイリスは残念そうな口調で続けた。
「何をどうすればいいのかのアシストが働いていないんです。私の能力レベルが足りないのか、必要な能力が無いのか、ひょっとしたらその両方かもしれません」
生産系の能力を手当たり次第に取得し、それらを順調にレベルアップさせているアイリスでも無理なのか。となると現状ではどんなプレイヤーにも不可能と考えて遜色無いだろう。
「すまんな、十八號殿。どうやら貴女の戦力増強にはならなかったようだ」
「いえ、むしろ拳銃の一丁でも見つかっただけでも重畳というものです。まともな武器が見付かる可能性は低いと思っておりましたから」
「もともと連携の具合を確かめようって話だったしなァ」
ジゴロウの言う通り、我々の主目的は十八號の戦力調査と彼女を加えた状態での連携が上手く機能するかの確認である。連携に関しては想定以上に敵の数が少なかったので微妙な結果だが、戦力に関しては最低限の評価は下せていた。
銃の威力はそこそこあるし、躱すには速すぎる銃弾の速度は十分なダメージを叩き出せるだろう。しかし十八號の視覚システムが十全でないために、狙いがどうしても甘くなる。それを連射力によってカバーしているようだ。
これ、同士討ちが有効な今の環境では結構致命的である。流れ弾が当たる可能性が高いからだ。なので外し様の無い巨大な相手、即ち人面鳥酋長を主に狙って貰うことになるだろう。
「ここにいてもやれる事はもう無い。ビルに戻って休憩してから作戦会議、その後ボスに挑むとしよう」
「わかりました!」
これで思い残す事なくボスに挑めるというものだ。あ、いや。一つだけ確認しておかねばならない事があったな。
「十八號殿、この巣はどうする?焼き払った方がいいか?」
人面鳥の巣は主人がいなくなったが、別の魔物が流用しないとは限らない。それにどこかから他の人面鳥の群れが来てそのまま居着く可能性だってある。魔物の生態に決して詳しくは無いので断言は出来ないがね。
「…燃やして下さいませ。それも盛大にお願い致します」
「ん?わかった」
何故『盛大に』という枕詞が付いたのかは不明だが、依頼人の指示には従おうじゃないか。
「星魔陣起動、爆弾」
私は空へと飛び上がると、【爆裂魔術】を連打してビルの屋上を占拠していた人面鳥の巣を次々に爆破していった。派手な音を立てて破片が飛び散り、巣に使われた木材に引火して燃え上がる。
「…」
瞬く間にもうもうと煙を上げ始めた人面鳥の巣を、十八號は一切の感情を読み取らせない真顔で見詰めている。炎に照らされて陰影の濃くなった彼女の美貌に、私はどこか恐ろしさを感じたのだった。
リアルが忙しかったとは言え、しょうもないミスをしてしまって申し訳ありませんでした。
あと、執筆時間が中々とれないので投稿は4日感覚にしようと思います。ご理解下さい。
次回は9月11日に投稿予定です。




