51話 夏休みと問題発生②
「死ね!!」
「うおっ!」
タンクトップ男は待っていたパイプを、俺の体目掛けて振り下ろしたが、俺は軽くスッと避けた。
「おいおい、和解しようぜ?」
「馬鹿な事をぬかすな!」
パイプを何回も振り下ろしたら、薙ぎ払ったらしているが、全て俺は軽く避けていた。
体力がないのか、タンクトップ男は息が上がっていたのだ。
「はぁはぁ、ちょこまかと。おい、いっせいにやるぞ!」
待機してた男達が、千秋を襲い始めた。
バッドで叩こうとしたり、グーが飛んできたり、蹴りが飛んで来たりしてるが、全て避けていた。
「もう、辞めないか?」
「うるせぇ!!ンゴッ!」
金髪男が俺に攻撃しようとした瞬間、ずっと無言で見てたミズキが横から顔面にグーを入れた。
「千秋、何してんの?」
「んー?」
「何で反撃しないの?」
「もう、喧嘩しないって約束したからね。俺が喧嘩して怪我すると悲しむ人が居るからね」
「...そうか、なら後は僕がやるよ」
ミズキはポケットからヘアゴムを取りながら、タンクトップ男に近づいた。
「何だよ?お前も喧嘩するのか?」
ミズキは口にヘアゴムを持って。髪を結びながら、コクリと頷いた。
「はっ!インキャみたいな奴が何ができる!」
「うーん、確かに僕はインキャの分類なのか?初対面の人にはコミュ症だし、アニメも漫画も好きだな」(*あくまでミズキの偏見です。)
「なら、お前もくたばれ!」
タンクトップ男は、ミズキの顔に拳を飛ばした。
だが、弱そうに見えたミズキは、そいつの攻撃を素手で受け止めて、腹に蹴りを入れた。
「グハッ」
「千秋、これ持ってて」
ミズキは、自分のメガネを山なりで俺に投げた。
ミズキのマンバン姿を見て、不良達はざわざわと騒ぎだした。
腹を抱えて地面に這いつくばってる、タンクトップ男はミズキを見上げていた。
「黒川!!!」
「はい、黒川ですが?」
タンクトップ男は、千秋だけだと思っていたが、まさかひ弱そうな男がミズキだと知って、少し焦りを出した。
「流石に、この人数で、あの2人同時にはきつい...」
「あははは、え?何々?もしかして、その人数で千秋に勝てると思ってんの?無理無理、10倍増えても勝てないよ」
いや...110人じゃないですか..流石にそれは無理ですよ。
「はぁはぁ、また関係ねぇ!2人ごとぶちのめせ!」
他の不良どもは、俺たち2人相手だと知ると恐る恐る襲ってきた。
ミズキは次々と、不良どもを蹴散らして行った。
「おりゃ!」
「やべっ」
ミズキは気付かず、背後から襲って来るバットに当たりそうな所に、千秋が不良の後ろから足を崩して、地面に転ばせた。
その上からミズキは転んだ男の顔面に足を振り下ろした。
「...喧嘩しないんじゃないの?」
「さぁ、虫がいたからね」
「ふん」
俺の下手な言い訳に、ミズキは鼻で笑った。
そして、残ったのはタンクトップ男だけだった。
「クソ!」
「こいつらで僕1人でも倒せないのに、これで千秋を倒そうと思ってたの?本当、まだ手加減出来る僕が相手で良かったね」
倒れてるタンクトップ男にトドメを刺すために、顔面に思いっきり蹴りを入れた。
「...千秋君?」
ビクッ
俺の後ろから見知った声で呼ばれた、恐る恐る後ろを振り向くと泣きそうな目でこちらを見ていた灯里が立っていた。




