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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第45話 剛力無双

 リグルが一直線に走り出した。

 彼は絶えず衝撃波を飛ばしてすべてを粉砕する。

 災害に等しい破壊力だった。


「ぶわっははははははははははは!」


 爆笑するリグルが魔族に跳びかかり、全力でマギリを叩きつける。

 豪快な斬撃はあらゆる敵を抹殺した。

 強靭な筋肉も、鋼の如き鱗も、強固な甲殻も通用しない。

 斬撃のはずだが断面は粗く、まるで鈍器で潰されたような有様だった。

 乱暴な猛攻の数々に、マギリが大声で文句を言った。


「いってえな! もうちょい丁寧に扱えよッ!」


「もっとだ! まったく足りんぞォ!」


「聞けっておい!」


 リグルは一心不乱に攻撃を繰り返す。

 そのたびにマギリは己の軋む音を聞いた。

 血みどろになりながら、彼は焦りと怒りを覚える。


(ふざけんな! 冗談抜きで折れちまうぞっ!?)


 マギリは知らない情報だが、リグルは"武器破壊"の二つ名で呼ばれている。

 敵の武器を狙うことが由来……ではなく、己の武器をすぐに壊すことから来ていた。

 圧倒的な怪力に武器が耐えられないのだ。


 リグルがマギリの使い手になることを承諾したのも、単に頑丈な武器が欲しいだけだった。

 さらに言えば剣である必要もなかった。

 普段は戦場で拾った様々な武器を片っ端から使い潰しており、その辺りのこだわりは皆無なのだ。

 つまり実情をまとめると、リグルは剣士ですらないのである。


「俺様はっ! 一流の剣士じゃねえと認めねえぞおおおおおおおおっ!」


 怒るマギリが絶叫する。

 彼はリグルの戦い方に技術がないことに憤慨していた。

 ちなみに斬撃に伴う衝撃波は、マギリの発した魔力が遠心力で放出されているだけだ。

 馬鹿力が生み出した偶発的な攻撃であり、技未満の現象だった。


 そうして廃砦の魔族が壊滅寸前になったところで、人型の黒い樹木が出現する。

 黒い樹木は付近を統括する上級魔族だった。


「来たか勇者よ……ッ!」


 憎悪を滲ませる黒い樹木は、数百の枝を伸ばして攻撃を仕掛ける。

 ところがリグルは、無数の枝を一太刀で粉砕した。

 そのまま速度を落とさずに突き進む。


「甘い甘い甘い甘いッ! この程度でワシを止められると思うなぁッ!」


 黒い樹木は咄嗟に防御を試みるも、その前に叩き斬られた。

 衝撃波が全身へ浸透し、砕け散って消滅していく。

 付近の魔族がいなくなったことでリグルはようやく立ち止まり、そして大笑いした。


「がっはっはっはっは! なかなかよいではないか! ここまで丈夫な武器は初めてじゃのう! 気に入ったぞ!」


「ふっざ、けんな……滅茶苦茶に使いやがって……」


 マギリが疲弊した声で呟く。

 彼はとんでもない使い手に出会ったことを悟った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] > 来たか勇者よ……ッ! うん 多分間違えてんね
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