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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第41話 死体運びの傭兵

 生き残った人間が戦場で死体の回収作業を行う。

 中央付近を闊歩するのは糸目の少女だ。

 少女は茶色い癖毛を揺らしながら、まるで散歩のような足取りで進む。

 服装はワンピースの上に革鎧という軽装で、端々に返り血が付着していた。


 やがて彼女は頭部が欠損した死体の前で足を止める。

 その少女——傭兵エナはぼやいた。


「あちゃー、スロゥさんもダメッスか。厳しいッスね。これで何人目でしたっけ」


「三十八人目だ」


 すぐそばで声がした。

 近くに誰も立っていないがエナは驚かず、スロゥの死体に縄を結びながら挨拶をする。


「どうも、マギリさん。起きてたんスね」


「俺様が寝れる身体だと思うか?」


「冗談ッスよ」


 死体を担いだエナは、落ちていた白銀の剣を腰に差した。

 留め具で固定して落ちないようにする。

 その状態で彼女は歩き出し、帰還する兵に混ざって移動を始めた。

 前後には死体が山積みとなった馬車があり、血と臓腑の悪臭が漂ってくる。

 鼻の曲がりそうな環境だが、それを嗅ぎ慣れたエナは表情を変えない。


「スロゥさんはどうでしたかね」


「まあまあだな。動きは速えし、技も悪くない。ただ、覚悟が足りなかった」


「覚悟ッスか?」


「死んでも殺し切るって覚悟だ。それがないから肝心な時に腰が引いちまうのさ」


 声は自慢げな雰囲気だった。

 対するエナは少し考えて指摘を返す。


「死んだら終わりだから慎重になるのは当然じゃないッスかね?」


「うるせえな! 死ぬ気でぶつかって生還すればいいだろっ!」


「わがままッスねえー」


 エナは暢気に笑う。

 その反応に何を持ったのか、声は呆れた様子で述べる。


「お前……俺様は勇者なんだぞ? もう少し敬うというか、言葉を選ばねえのかよ」


「あたしは相手の身分で態度を変えないッス。尊敬されたいなら行動で示してほしいッス」


「ちょっ、さすがに言い過ぎだろうが!? ぶっ飛ばすぞ!」


「別にいいッスよ。その代わりマギリさんはここで置き去りになりますけど」


「ぐっ……」


 声は言葉に詰まって悔しそうにする。

 言い負かされた自覚があるようだった。

 勝ち誇るエナは嬉しそうに笑う。


「魔術工房まで大人しくしといてくださいね」


「……ったく、生意気な女だ」


「マギリさんも同じくらい生意気ッスよ」


「ああぁッ!?」


 怪訝そうにする周囲をよそに、二人は楽しげに会話をする。

 それは魔術工房に到着する数日後まで続くのであった。

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