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人造勇者の死想譚  作者: 結城 からく


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第16話 乖離した実力

 落下したルーンミティシアは、受け身も取れずに地面に激突した。

 全身が爆ぜたような痛みで満たされ、彼女はあらん限りに叫ぶ。

 視界は明滅し、不快感のあまり嘔吐した。

 震える手で地面を掻いて涙を浮かべる。


 人間なら即死する高さだったが、人造勇者のルーンミティシアにとっては致命傷ではない。

 彼女は近くに転がる脚を拾って断面に密着させる。

 脚は繋がりかけるもすぐに外れてしまう。

 断面から漏れ出る液状の魔力を見て、ルーンミティシアは焦燥感に歯噛みした。


「くそ、くそ……ッ!」


 人造勇者は賢者シエンがあらゆる戦闘を想定して設計している。

 標準の機能として切断された四肢も繋げることもできる。

 しかし、前線に出ないルーンミティシアは重傷を負う経験がなく、そのためスムーズに処置できなかった。

 これが他の人造勇者ならば、速やかに回復していたところだろう。


 数度の失敗を経てルーンミティシアが脚を繋げた時、彼女の前に大鎌を持つ悪魔が降り立った。

 全身が黒い毛に覆われた悪魔は、ただ存在するだけで他を圧倒する威圧感を発している。

 ルーンミティシアは咄嗟に飛び退きながら身構える。


(この魔力量は上級魔族……!)


 両者は少し距離を取って対峙する。

 ルーンミティシアは辺りに視線を向けて武器を探すも、使えそうな物はなかった。

 彼女は魔術を使えないので肉弾戦しか選択肢がない。

 記憶の吸収を拒み、普段から侍女ユナの結界魔術に依存してきたことが仇となった。


 周囲ではたくさんの魔族が暴れており、街の人々が虐殺されていた。

 その悲惨な光景にルーンミティシアは憤りを感じる。


「何をよそ見しているんだ」


 すぐそばで声がした。

 ルーンミティシアが反射的に屈み込むと、頭上を大鎌が通り過ぎる。

 少しでも動きが遅れていれば、胴体を真っ二つにする軌道だった。


 悪魔は二撃目、三撃目と連続で大鎌で切り付ける。

 ルーンミティシアは辛うじて避け続けるも、悪魔の蹴りが腹に突き刺さった。

 そのまま彼女は吹き飛ばされて瓦礫に埋もれる。


 もがくルーンミティシアが瓦礫から這い出る。

 すぐさま悪魔に背中を踏み付けられて身動きが取れなくなった。

 悪魔は大鎌を振りかぶりながら語る。


「……この街には勇者が二人いる。向こうは苦戦しているらしい。早く加勢に行かねば」


 言い終えた悪魔は音もなく大鎌を回転させる。

 ルーンミティシアの首が刎ね飛ばされた。

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