『お先にどうぞ』他
・九藤 朋は『お先にどうぞ』を最初に使ってSSを書いてください。
「お先にどうぞ」「貴方こそお先に」美しい譲り合いではない。ここは地獄の門。一切の希望を捨てる場所。荒野に捨て置かれた方がましというもの。けれど必ず自分の番は来る。生前の行いとは逆に整然として並んだ列に乱れはない。譲り合う二人も解っているが、一刻でも地獄に行くのを遅らせたいのだ。
・九藤 朋さんは、「夕方の学校」で登場人物が「歌う」、「太陽」という単語を使ったお話を考えて下さい。
夕方の学校の屋上で、君は歌を歌いながらフェンスの向こうに座っていた。太陽がもう沈もうとして、あたりは茜色の光に満ちている。「考え直してくれないかな」 「嫌よ」「僕も君を喪うのは嫌なんだ」「……」「嫌なんだ」君は答えずにこちらを向いた。涙の光る頬。うん。僕も好きだよ。
・九藤 朋は『白い』と『終焉』を使って140字SSを書きましょう!
白は始まりと終焉の色。そう歌うように彼女は言った。栗色の髪が棚引き、珊瑚色の唇が躍る。白い肌。白は始まりと終焉の…。もうすぐ彼女を終焉に導く白い病。サナトリウムに射す光の中で、天使のように綺麗な彼女が、もうすぐ終わるだなんて信じられない。僕は彼女の手を取り、外界へと連れ出した。
・『君という名の』をお題にして140文字SSを書いてください。
僕は花が好きだ。色とりどりの花たち。手入れをしてやるとさんざめくように生気に満ちて輝く。それらを手折り、花器に活ける時、一つの終焉をせめても美しく彩ろうと僕は腐心する。ねえ。だから君という名の花も。終焉はこの上なく美しく仕上げよう。溢れる花々で君の亡骸の周囲を埋め、葬礼を行おう。
・九藤 朋へのお題は〔眠れない狼〕です。 〔形容動詞禁止〕かつ〔「走る」描写必須〕で書いてみましょう。
眠れない狼が繁みに潜みその時を待っている。獲物が通りかかる瞬間。彼は走り、跳躍し、その肉に喰らいつくのだ。一人の旅人が狼と出くわした。狼はその喉笛めがけて牙を剥いた。旅人の首にかけられたリングが見える。それはまだ狼が子供だった頃、育ててくれた人間の物。狼はその頬をそっと舐めた。
・『愛してみろよ』をお題にして140文字SSを書いてください。
あの人は逝ってしまった。遠い霧の彼方。生身では行き着くことの出来ない場所に。私は嘆き悲しみ、自暴自棄になって自傷した。そんな私の手首を掴んだのは義理の弟。「兄貴の為に傷つくくらいなら、俺を愛してみろよ」私たちは抱き合って泣いた。泣いて口づけを交わし、慰め合うように肌を重ねた。
・九藤 朋は『本』と『公園』を使って140字SSを書きましょう!
私は宙に浮き、本をぱらりとめくる。そこには公園を歩く一人の男の姿が映し出されていた。次に魂を導く相手だ。私は死神。この本に映る人物の魂を天国、もしくは地獄に導くのが役割。その時、男に駆け寄る女の姿が見えた。仲睦まじそうな、二人は恋人だろう。私はパイプを燻らせ、そっと本を閉じた。
・九藤 朋さんは、「夕方の会議室」で登場人物が「見つめ合う」、「太陽」という単語を使ったお話を考えて下さい。
彼らは見つめ合う。片や社長、片や専務。二人は親子だ。誰もいなくなった夕方の会議室で、意見の相違の溝を埋めるべく、話し合っていた。堂々巡りだ。西日が射す部屋は太陽の威勢に満ちている。二人は手を取り合い、飲みに行くことにした。彼らは肩書以前に親子だった。




