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死神 Danse de la faucille  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第八幕  乱気流 ~Le Prince du monde~
92/124

緋村 信二の場合 ~ゴルトーという町にて~

  リンドと信二が出会っている場所から約80キロ

 グランドと呼ばれるこの世界にある中心都市ゴルトー

 大きな城塞都市で、大きな外堀に城門の跳ね橋、何本もの見張りの塔がある。

 中は石造りの中世風の建物が建ち並び、商店や宿屋など繁華街もあるまさに都市だった。

 着ている服や装飾、店構えに行きかう馬車…ほぼ中世風のいで立ち、

 妖怪や化け物みたいな姿の異形も楽し気に買い物などを楽しむ風景が

 あちらこちらに見られる特殊な世界だった。 


 その中心には、周りを圧倒する中世風のお城が立っている。

 赤い西洋瓦がきらびやかに光り、

 飾り石は大理石、床には大きな自然石が隙間なく敷き詰められており

 門をくぐると結構な庭園や噴水もある作り


 それは、この国の女王でありグリムリーパー序列3位のヒラリーこと

 ヒラリー・グランド・インテリアスヒル・リネカーランドの住む屋敷だった。


 その建物の一室で退屈そうに、大きくて豪華な革張りのソファーに深々と腰掛け

 ベス・ハートランディア・クラインは目の前の白い壁に四角く開いた穴を見ていた。


 そこには、まるで窓の外のような感じで深い森の中が存在していた。

 ただし、ベスの方からは画像や、匂い、音、気配という現実を感じる事が出来ても、

 反対側には何もなくただの壁が存在しているだけ。

 

 時空間投影…高度な能力だった。


 ベスは仕立てのいい黒いメイド服を着ていて銀の指輪を3つもつけた手の甲を顎の下に置いていた。


「 ふ~ん、ちゃんと上手く行ってるじゃないかい? ちょっと嫉妬するなぁ 」


 森を楽しそうに歩いているリンドと緋村の姿を見てベスが面白くなさそうな顔で呟いた。


「 ま~ええんじゃない?上手くいって貰った方がさぁ

  誰かが子供産んでくれねえとさぁあたしら、最後には滅びちまうからねえ… 」


 そう言った女は、

 深い毛足の絨毯が敷き詰められた広い部屋のど真ん中に置かれたベッドの中で

 気だるそうに呟いた。


「 まあ、そうだけどさヒラリー…あの男の子も美味しそうだし

  長い事、欲求不満の私には羨ましいんだよ…本気で羨ましいわ 」


 ベスは髪を少し振り払ってため息をついた。


「 はあ?何言ってんだよ、万年発情期のフェリルとは違うんだぞうちらはさ 」


 レース模様のカーテンが幾重にも降りている天蓋の下にあるキングサイズのベットの上で、

 黒いブラと黒いショーツ姿のまま、

 ヒラリーは何かの余韻を楽しむかのようにのたうつように動き回っている。


 身長が180近い長身でスリムな体形は、

 金色の目と、やや高く筋の通った鼻と形のいい紫の唇に

 やや浅黒い肌…

 ヒラリーは物凄い美人ではあったけど、言葉づかいは悪かった


「 あんたも似たようなもんじゃない。

  私は異性だからまだいいけど、あんたみたいに同性オンリーの変態じゃないわ 」


 その言葉に眉を寄せてヒラリーが反論する。


「 お、男も相手するがな…子孫作らないかんし…極極稀にうちの女が泣くときもあるし 」


「 女が泣くね~ 凄い表現だわ 」


 下品な表現だなとベスはふっと息を吐いた。


「 ベスさ~、リンドの場合はちゃんとした発情期なんだから羨ましがるなよ。

  運命の相手って決まっているんだからさぁ…

  あたいらがほとんど無限の寿命といっても、

  事故やくそったれの病の前じゃあ、当たり前に死んじまうから無限に存在できねえし。

  そのために発情の季節があって子孫残すじゃんか。  


  それに、前の発情期にっても、どえらー遠い昔だが子供産んで育てたやろ?

  お互い同時期やったで知らんってことはお互い無いし夢中やったやん 


  今はリンドの番って言うだけやろ? 」


 腹這いの姿勢のまま両足をバタバタさせながらヒラリーは笑顔を浮かべる。


「 ああ、…子育てに悪影響あるから力減らされて随分と不自由な思いしたけど、

  炊事洗濯に掃除に子育て、学校行かせたり面白いって言うより楽しかったかなぁ…

  能力使わず自力ってのも面白かったわ 」


「 そうそう… 」

 

「 うちらもジャニスの所と同じで人間とも結婚は出来るから

  結婚前はよく任務で出かけては一緒に粉かけてたな~

  同僚や同族は、馬や豚、大鹿みたいな恰好の化け物大いし、

  たまにいい男がいてもさ、大概は競争が激しいし男もちやほやされるもんで根性腐ってたし… 」


「 ええやん、それで十柄門を捕まえたんやし。

  いい男やったやん、あんたメロメロやったしな… 」


 ヒラリーはごろごろ転がりながら、適当にそう呟いた。


「 それを言うならヒラリーだって、ビルヘランドもいい男だったぞ。

  今思えばホント…夢の様な日々だったなぁ。


  まあ、元が人間なんで、二人とも転生しちまって

  今どうなってるか知らんがもう一度会いたいもんだ。」


 その言葉に、転がっていたヒラリーの体が止まった。

 ヒラリーは苦笑いを浮かべたが直ぐに何か思い出したかのように呟く。 


「 そういや、ジャニス最近どうしてるか知らんか?

  あんた最近会ったんやろ…あいつ、いまだに処女とかふざけたことぬかしとるんか? 」

 

 ベスは、思いっきり顔をひきつらせて答える。


「 ああ、信二の事でジャニスに話を持っていったからな。

  もともと、信二は前の事があるから、

  ジャニス側では引き取らない事が決まっていたから、話に飛びついたよ。

  そちらでうまくやってくださいって事で貸し借り無しになったから丁度よかったわ。


  リンドと一緒にさせるって言ってもあまり驚かなかったな。

  一緒に1年以上も一つ屋根の下にいたんだから別にいいんじゃない?という感じでな。

  

  でもあいつの最後の言葉は傑作だったわ。


 ” あんな年端もいかない子供が結婚ね~私なんか生まれてこの方相手も出来やしない ”

  ってボヤいていたからマジで処女じゃないのかな。 ちょっと気持ち悪いけどさ 」


「 ホントホント、あたしらとそうも年は離れてない大年増なのにね~

  しかし、あんな凄い体と美貌やんか~

  くそっったれって感じでぶつかってくる男っておらへんのかいな? 」


「 さあね。ま、こう言うのは縁だからさ。

  リンドだってたまたま、功名を焦った上での出会った偶然だからさ。」


 そうベスが遠くを見るような目つきで語りかけると、

 二人は遠い過去を思い出して、大きくため息をついた。


「 それにしても、ベスがリンドを引き摺って来た時は凄かったなぁ、

  あんこ、ガタガタ震えて涙流していたけど、

  しっかり信二の写真握りしめて涙眼で離さんかったもんな~。


  一応、懲罰で舐めまわして力を剝ぎながら心理トレースもしたけど、

  べたぼれやったもんな…本人自覚なしやったけど。 」


 ニヤニヤと笑いながら、ヒラリーはそう言ったが、

 

 ベスはよく知っていた。


( 何言ってるのやら…あれ、あんたの趣味でしょ?

  リンドに馬鹿にされたって、丁度いいやって切れてやったんでしょうがぁ…

  別に裸に剥いて、体中を揉みまくって舐めまわさなくても、

  あのぐらい普通に出来るじゃない。

  ブ男なんか、ビンタ一発で根こそぎ剥ぎ取るだろあんた… )


「 はいはい、そんですっかりリンドに熱上げて事あるごとに呼び出して

  舐めつくしただろあんた。

  んで、気に行って手元に置く事にしたんだろ?上司に黙ってさ 」


 この変態女と思った…ジャニスと同じで高度な読心能力が二人ともあるが、

 それ以上にシールドも強いので気兼ねせず、

 話している言葉より心の中で、何十倍も汚くしていた。


「 あ…あんただって、

  リンドの頭の中に潜って好きなだけ暗黒を貪ったじゃないの。

  抱き心地がいいって、よく呼び出してたじゃんか…

  本当に抱きまくら代わりにしとったの見て肝が冷えたわ!」


 図星だった。ベスはヒラリーとは違ってリンドとただ波長が合うのだ、

 暗黒エネルギーも相当に美味しかったし、

 一人寝のさびしい夜にリンドを呼び出して抱き枕にすると

 よく眠れたのだ…ただ単にそれだけ。


「 暫く嬲り尽くしたら、なんか可愛くなってなリンドの奴。

  本当は懲罰で数十年ぐらい海に沈めてもいいんだが、

  いいはしないが結構な素質もあってもったいないしって思ったんだよな。


  リンドの奴は丁度、そろそろ発情年齢だったから、

  信二ももうすぐ死んじまうから、一緒にしてやれって思ったんだよなぁ。

  だから、あたしらが馬鹿な上司だまくらかして

  面倒見る事にしたんだし。 


  でもさ、ヒラリー、あの格好は無いんじゃない? 」


 ベスは、まだ赤い頬のまま信二と話しているリンドの服を指さす。


「  別にいいじゃん、あたしの趣味だもん。

  それに、あの服はああ見えてうちのご先祖から受け継ぐ至宝の魔導衣だしな。

  防御能力や封印を解けば攻撃能力も上がる優れものだぞ、

  大事な物だけど、もっと大事な物を守るために貸与してるんだからさ。


  実際、可愛いじゃないかあの格好。

  いずれ1線に戻っても、着ていた方がいいだろうなぁ…ま、あげるけど

  なんせ、この世界で5本の指に入るぐらいの服だからさ。

  そん時は… 」


「 ああ、私の重力置換ハンマーもくれてやるさ… 」


 そう言い終わると、可愛い娘でも見るようにリンドの歩く姿を目を細めながら二人は見ていた。






 お迎えの世界の両巨頭にそんな風に見られているとは、

 露ほども思わず、リンドと信二は久々の再会を楽しみながら、

 一緒に住む事になる村へとゆっくりと歩いて行った。



  

  



            

  

 

 

 


  

  

  


 

  


  

  


  

  

  


 




 

 

 

 

 

 

 


 

 


 

 

  

 


 


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