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死神 Danse de la faucille  作者: ジャニス・ミカ・ビートフェルト
第八幕  乱気流 ~Le Prince du monde~
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山野 泉の場合 ~赤い目~

 リンドと名乗ったその女の瞳孔の無い赤い瞳は怖かったが美人ではあった。

 まつ毛もまゆ毛も赤いし唇は更に赤いが白い肌に生えていたし形もよかったし、

 身長も160半ばぐらいと丁度いい背の高さで、

 しっかりと鍛えてある引き締まった体つきだった。


「 死にたい訳ないだろ…まだ15だぞ…大学だって行きたいし、

  普通に働いて社会人になって好きな女と結婚だってしたいさ 」

  

  怖がったところでこの布団から起き上がって走って逃げる事も出来ないんだから、

 諦めて我慢して会話を続ける。


「 で…でも、望んでも叶わないし…何一つ叶わないで死ぬんだとは思う 」


 声は上ずってるし、唇は戦慄いてはいるけどそれは事実だ。

 彼女は自分の事を死神とも言った…なら、これは必然だろうし

 怖がったところでどうしようもない。


「 ふ~ん、死ぬ死ぬ言っても、まだ5年は生きられるけどねええ。

  ま、ここで腐りながら死を待てばって事ならさ。」


 と笑いやがった。


「 チッ!何がおかしいんだよ…真っ赤な目で瞳孔も無いくせして 」


「  目は関係無いだろ?こういう目なんだよ私の場合はさ。


  それはそうと、君このまま腐りながら死んでいくのは辛いだろう?

  私のいうことを聞いて受け入れてくれれば今後、数年で亡くなるのは変わりないけど、

  誰か一緒に連れて行くことが出来るって言ったらどうする?


  死んだらお終いってこの世界では言われているようだけど、

  そんな事は無いちゃんと別の世界があるんだよ。

  別に、変な宗教ってわけじゃないんだ、これは事実だ。

  

  私は、死んでいく人間を別の世界から迎えに来ている者だからさ、

  私が連れていく限り別の世界で、新たな人生が歩めるって寸法だ 」


 その言葉に関心を持ってしまった。

 泉と一緒に、死後の世界で仲良く暮らせるんじゃないかと思ったんだ…


「 あんた、それやってなんのメリットがあるんだ? 」

 

  もし、このまま身動きが取れず、どこへも行けないとか、

 生きていてもしょうがないような状態になるし悪魔の言葉だって乗ってやる。

 でも、ただで動くのは地震だけだ。

 

「 あ?なに、ボランティアさ。

  君が若い身空で腐りながらただ死んでいくのが見ていられなくてさ 」


 物凄く胡散臭い返答だったが、信じることにしてやった。





 


 

「 この感じは呪いを構築した高位の人間の能力者が一人…

  と人とは違う別の存在が一体ってとこですわね 

  気配からするとそこそこ使える能力持ち、面倒にならないといいですけど 」


 ゆっくりと降下しながらジャニスさんは眉をひそめた。


「 他の人がいるのは理解しますけど、別の存在? 」


「 ええ、わたくしと同じで人では非ざるものの存在を感じます。

  この感じ…

  ”グリム・リーパー”って言われる種族の匂いがしますわ…


  しかも、能力持ちで力の波動も上位クラス…気をつけないといけませんわ 」


「 グリム・リーパー?なんですかそれ 」

 

 ジャニスさんみたいなのが他にいるのもびっくりだけど

 別の種族って何よ?


「 ええ、私たちとは系統は違いますが私たちと同じで別次元の種族ですわ。

  能力的にも近いし共通点も多い人たちなんで私たちとも交流があります。

  友達みたいな人も私はいますわね。


  でも、この波動は感じた事の無い人ですし警戒が必要でしょう 

  それにさっき言った通り禍々しい雰囲気もありますからね 」


 そう言うと、ジャニスさんは私を抱いたままゆっくりと敷地の隅に降りたった。

 そして優しく私を下ろしてくれた。

 でも警戒っているのかしら?時間さえ操るこの人に敵う人なんかいるわけないと思うけど。


 ジャニスさんは難しい顔をして私を置いてその長すぎるコンパスのまま先を急ぐので、

 少し小走りになってついていく。

 私が主役の筈なのに、”グリムリーパー”って人が気になるんだろうね…


「 おい!あんたら何やってるんだ! 」


 怒声が静かな庭に響き渡り、私はその声に心臓が飛び上がる思いがする。

 玉砂利の上を走って何人かの警備員風の男たちが近づいてきた。

 手には警棒や刺股さすまたを持っているように見える。

 女2人に大げさなとは思ったが、

 2m近い巨体を暗がりで見れば危険人物には映るかもしれない。

 

 

警備員の視点


 なんだあれ…あの馬鹿でかい人影は…

 嫌だなあ…折角、危険の少なそうで楽ちんな警備だと思ったのに。

 ここはさ、金持ちって言うだけだしさ普通の家じゃん。

 なんの用だろう…頼むから泥棒とか、強盗とかやめてほしいなぁ。


 お、先輩が木刀もって先頭に立ってるじゃんか、

 ここは、警棒持ってるだけの俺の出番じゃなくて、

 先輩と、ビビッて足の震えてる刺股もった爺ちゃんの出番じゃんか。


 う~んと、よく見ると女みたいじゃあないか。

 小さい方は、高校生ぐらいの…

 あれ、坊ちゃんの部屋にデカデカと貼ってあるポスターの子じゃあねえ?

 何しに来たんだろう…。


 デカい方は…なんてデカさなんだ。

 俺も仕事でバスケやバレーの試合に出かけるけどさ、

 背丈はおんなじぐらいだけど、胸と尻がデカすぎるわ。

 でもな~、その大きな鎌みたいな長い獲物は駄目だよな~

 あの大蛇の様な腕で振り回されたら、首の2つや3つ軽く飛んでいくんじゃないか?


 お、先輩が両手で巨体な方を止めて、尋問しだしたわ。

 ちょ…あのデカい美人さんがこっち見て微笑んだやんかぁ、

 鎌も後ろあるいていた女の子に預けたみたいだから危険なさそうじゃんか。

 あれ、爺ちゃんたちを手招きしてるじゃないか、

 おっと、ここは先に行かせてもらうわ。

 あんな凄い体で、色っぽそうなおねえちゃんなんて、そうそう見れんからなぁ。

 

 そう思いながら、俺は巨体の女の方に走っていく。

 チッ爺ちゃんたちの方が近いわ…

 でも、なんだろうちょっと空気が暖かくなったようね気がするなぁ…

 ま、そんな事はいいや。

 巨体のねえちゃん、楽しそうに笑ってるじゃんか。

 なんか、いいことあるんかな。





「 ねえ、おじさんたち、どうしちゃったんですか? 」


 私は誰もいない空間に向かって鼻の下が伸びきったような馬鹿な顔で話しかけている

 奇妙なおじさんたちを指さして、ジャニスさんを見る。


「 ああ、ちょっとした幻覚ですわ。

  ま、男の方って基本、Hな事好きですからそんな心配もいりませんけどね。

  さっきの化け物と違って倒しても仕方ありませんからね。 」


 チラって一瞥しただけで、もうおじさんの方は見ずに、

 腰を折って( そうしないと、目が合わないから )

 私の顔をマジマジと見だした。


「 泉ちゃんは、自分の事を可愛いって思った事ありませんか?

  私の目から見ても、結構いけてる方に見えますわよ 」


  いきなり、全くいきなりジャニスさんがそんな事を言い出した。

 顔が近い…吐息すらかかるほどで私は混乱してしまった。


 何?こ…告白?


「 えっと、残念ですが、そういう趣味は無いんですけども… 」


 すると、目の前の巨体に似合ったやや大きいジャニスさんの顔が

 急にトマトの様に赤くなった。


「 嫌ですね~私だって、その趣味はありませんわよ。

  ただ単に、そう言う自覚ってあるんですか?って聞きたかっただけですわよ。

  ああ、びっくりしたわ…で…でも… 」


 そこで、一瞬息を止めて、再び私の目をしっかりと見つめて、

 ちょっと、考え込んでから話を再開しだした。


「 その気はないって言ってもあなたのその小動物みたいな可愛さは反則です。

  女の私だって、一瞬グラってきそうになりました。

  気をつけてください、

  貴方のせいではないですが、今回の呪いは…どうやら、貴方のせいの様な気がします。」


 ? 何言ってるのこの人。

 

「 緋村 信二って人を知っていますか?

  そこで、鼻の下を伸ばし切っている若い警備員が、

  貴方を見て、ここの坊ちゃんの部屋にあなたのポスターが、

  貼ってあったらしいなあって考えていたんです。


  少し気になって、ちょっと深く彼の精神に潜ったんですけど、

  その坊ちゃんの部屋で明確なイメージも確認してるんで

  間違いなくあなたの写真が貼ってあったようですわ。


  その坊ちゃんっていう人が緋村 信二って言ってですねぇ… 」


「 緋村君? 」


「 ええ、今は離れで病気で寝込んでいるこの家の息子さんですわ 

  波動はその坊ちゃんの部屋から感じます。


  呪いをかけているのは、多分その方って事で間違いないでしょうね。 

  貴方の写真とグリムリーパー…

  呪いの理由は分かりませんが、あなたに対する執着心は凄そうですから 」


 緋村君? 

 私には、その名前は懐かしいし、甘酸っぱい思い出の名前だった。


「 え?だって、緋村君ってど…昔中学の同級で友達で、

  あ、でも高校入って留学して、もう日本にはいないって… 」


 思いもしない名前を突き付けられて、体中に火が付いたように驚いた。

 しどろもどろで答えた自分が恥ずかしい。

 きっと、ジャニスさんから見れば真っ赤な顔で俯いているように見える筈だ。


「 そうですか…やっぱりですわね。

  他のみなさんは割と事前調査資料とも整合していたし、

  あの穴から抜け出した時にも軽くみなさんの記憶をサルベージ出来たのですけども、

  貴方だけは霧がかかったように不鮮明でしたわ。

  不思議に思っていましたけれども、今は理由がわかります。


  グリムリーパーがすべての現象の源でしょうね。


  今だから言いますが、

  貴方は、川上さんたちと同様に、私の事務所の方に届けがあって、

  特別保護対象と死後の魂の確保のために特別回収対象にもなっています。

  このことは、

  貴方や川上さんについては利用価値が高いって言うことでもあります。

  詳細は言えませんが、特にあなたの方は…価値が高い。


  多分ですねぇ、今回の騒動は貴方をずっと慕っていた信二君を利用して、

  貴方を自分の陣営の世界に引き込みたい人々が

  呪いを使って殺害し魂を回収するのが目的で起きたことですわ。


  いいですか、貴方は今は絶対に亡くなってはならない存在です。

  私も覚悟を決めて、貴方を守って未来を残しますから、

  同情とか、憐れみとか、愛情とか思ってはいけません。

  そこを付け込まれますからね… 」


 私は、ジャニスさんの言葉に閉口した。

 そして、ぐるぐると頭の中が凄い勢いで回転しているように感じた。


 中学の時にず~と好きだった信二君が私をずっと慕っていたって?

 折角、同じ高校に入ったのに留学して、私の前からいなくなった信二君が…

  そして、今、私を呪って殺そうとしているですって?



 頭がおかしくなりそうになった。


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