14話 少年ニューロ
「なんか思ってたイメージとだいぶ違ったな……」
「昔から変わりません。外見も中身も」
王立図書館を後にしてからセレスティアはもう何度目か分からないほどため息を溢し、レルゲンは戦闘中でもないのにここまで疲弊する姿を見るのは初めてだった。
若干ふらつくセレスティアを自室まで送り届けてから対策本部まで戻ると、そこには女王を含めて話し合いが既に行われていた。
「只今戻りました」
「騎士レルゲン。ハクロウ騎士団長から既に伺っておりますが、オブサリアの協力は取り付けられましたか?」
「はい。セレスがその代わり今日は床に伏せそうですが、何とか」
女王は少し安心した様子でレルゲンを労った。
後になって聞いてみるとオブサリアという人物は、何かと要求される内容が高く設定されるのが良くあるようで、
今回すぐに約束を取り付けられたのは異例だったようだ。
今回は後方支援のみの制限付きとはいえ魔界との軍事同盟の問題は解決し、回復ポーションの確保も取り付けた。
一ヵ月という戦争にしては短い期間の内にカリストル軍とそれに協力する国々を打倒し、結ばれた軍事同盟を切り崩すにはまだ足りない。
そもそもカリストルが中央王国を目の敵にしたのは急速な国力の成長だけではなく、どちらかと言えば個人的な戦力と、
魔界という人間界の周辺国に多数兵を派遣して火の海にしてしまった事に対する怨嗟が大きい。
これは勇者を早く魔界に赴かせるための策略だったとはいえ、
人間の敵とも言える悪魔率いる魔界と軍事同盟を結び、尚繋がりを強めるといった行動は火に油を注ぐ行為と等しいだろう。
「さて、女王様。これからどうするよ?」
「国内情勢が不安定になっている時と、魔界との同盟締結が一度に訪れた事による不安感が引き起こした現実です。
であればまずは国内情勢の安定化からまずは始めましょう。我が国が足を止めている時間はありません。
出来ることから少しずつでもやっていかなければ、すぐに手遅れになる」
「まずは王位継承戦を早めに終わらせて、カリストルとの戦いに備えなきゃならねぇってわけか」
ハクロウが白い団長服を強く手でなびかせて、今も尚作戦を共有して案出しを続けている団員達に声を張り上げて指示を出す。
「お前ら!そろそろ対策案を話し合っている時間は終いだ。予想よりももっと早く奴らは攻めてくる!
実行に移すぞ!」
「「はっ!」」
短い返事と共に纏められた紙の山々を整理し始め、有効だと思われる作戦が記された紙束のみがハクロウの所まで上がってくる。
その作戦はどれもレルゲンを起点にした作戦ばかりだったが、その中に一つだけ相手の虚をつけるような内容が記されていた。
「女王様、ボウズ。これ出来ると思うかい?」
「出来なくはないと思うが、一回切りの作戦だ。人力だけで作れば数ヶ月はかかるだろうが、念動魔術なら出来ると思う」
「これは……確かに出来れば相当の手札となるでしょうが、騎士レルゲンの疲労を考えると私では発案できる物ではありません」
「ボウズが出来ると言うならこの作戦を肝にして進めさせてもらいましょう。それにしてもこの作戦考えたのは誰だ?
随分と念動魔術に詳しくなければ浮かばない案だろ」
三人が唸るように作戦が記された紙を見つめていると、一人の丸眼鏡をかけた少年騎士がハクロウの下までやってくる。
「どうしたニューロ? また新しい作戦案か?」
「いいえ! その作戦をきっと採用してくださると思い、詳細をお伝えしに参りました!」
「お前がこの作戦を立てたのか!
なるほどなぁ…… 確かに珍しい魔術の情報を集めるのが趣味のお前さんなら納得だ。
ボウズ、紹介するぜ。
コイツは騎士団の中でも非力で単純戦力にはちと不足だが、頭が良い。
名はニューロ。今までは作戦を立てている時間すらなかったが今回はまだ時間がある。
存分に能力を発揮出る機会が巡ってきたな」
「ありがとうございます! レルゲン副団長もこうしてお話しするのは初めてになりますが、貴方の使う念動魔術は本当に面白いです。
今まで中々お話しする機会がありませんでしたが、どうぞよろしくお願いします!」
「こちらこそよろしく頼む。早速本題に入ってくれ」
ニューロが作戦概要を説明すると、レルゲンが実現可能か自身の技術と照らし合わせながら思案する。
可能だ。
時間こそ多少予定より押す可能性はあるが、この作戦が成功すれば相手の出鼻を完全に挫く事が可能だろう。
レルゲンはミカエラに魔力糸を伸ばし、思念のみで遠隔会話を試みる。
(ミカエラ、これから伝える作戦はとにかく人手が欲しい。心念による操作術で手伝って欲しい)
(構いませんが、皆にはなんと説明を?)
(念動魔術と心念の操作術は素人目には同じにしか映らない。念動魔術を使える人物として振る舞ってくれ)
(分かりました。作戦とは?)
レルゲンが作戦内容を伝えると、ミカエラは驚きと同時に少し気分が高揚していた。
(なるほど。その作戦は確かに人手が欲しい。
しかし私と貴方なら可能でしょう。
こんな作戦、やられる側は大層嫌でしょうね)
(それが狙いだからな。苦労をかけるが頼んだ)
(いいえ、貴方の魔術の本懐を見せつける良い機会です。私も全力でサポートします)
作戦が纏まりかけた時、影部隊の一人が女王の影から魔水晶を手に音もなく現れた。
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