57話 おかえり
「さぁ、お前の魔力が尽きるまで、永遠に付きやってやるとしようか」
遠距離からの攻撃は魔力を無駄に消費すると考え、まずは近接戦でようやく出した召子の翼を解放、または破壊することを念頭に戦術を組み立てると決心。
セルフィラが動くよりも速く念動魔術で飛び立ち肉薄していく。
「聖なる光」
レルゲンに向けて無数に発射された光弾は、一発一発が赤く光るほど魔力が凝縮された豪雨のように降り注ぐ。
一瞬、黒龍の光線でまとめて迎撃しようかと腕に力を込めたが、それでは魔力の無駄に繋がりかねない。
クラリスとセルフィラがこの戦闘中何度か見せていた半透明なオレンジの光。心念の盾に必要なのは自身のイメージのみで魔力消費はない。
セルフィラの言葉の命令も、心念から来ているのは明らか。
戦闘を無意識に進める内に自身の心に防御壁を展開していた事を自覚しする。
(必要なのはいつだって出来ると思う心……!)
飛び上がりながら胸に手を置き、そして心に覆い被せている不可視の壁を外へ、右手へと集めていく。
「我が身を護れ!盾よ!」
セルフィラの光がレルゲンへと当たる寸前、叫ばれた言葉は右手から前方へと展開されていく。
薄いオレンジ色をした半透明の盾が前方に広がり、赤い光が衝突すると同時に盾が弾き飛ばした。
「貴方という方は!」
この土壇場で心念の盾を自分の物にしたレルゲンに、クラリスは思わず感動しながらも称賛の心で見つめていた。
「盾がどうした!そんな薄い膜のような盾では私の攻撃は防げんぞ!」
濃い黒煙を上げながら突き進む。
直進してくると感じ取ったセルフィラは、逃げ道を無くすために発射していた赤い光をレルゲンにのみ集中し、覚えたての心念の盾を破壊することに目的を変えた。
「これでお前の盾を粉々に打ち砕いてくれる」
パキ、パキ……!
集中された光が心念の盾にヒビを入れていく。
(奴の間合いまでもう少し…!)
パキパキ!パキ!!
パリィン!!
完全に心念の盾が破壊された時、大きくセルフィラの表情が笑みを見せる。
霧散した心念の盾は空中に溶けるように消え、赤い光がレルゲンを突き刺すように着弾する。
それでも右腕で全て光を受け切り、黒煙の中からセルフィラの頭上へと姿を現す。
手には既に念動魔術で光を圧縮された黒龍の剣。
「オオオオオオオオオオオオ!!!!!」
裂帛の気合いと共に大上段から力強く振り抜かれた一撃は、〈天の翼〉で正面から受けたセルフィラを線を縦に引くように飲み込んでいき、
剣に変形させていた〈天の翼〉を完全に粉々に破壊した。
それでも止まらない一撃はセルフィラの背中まで貫通し、
文字通り身体を二つに別ちながら尚背後にある海と氷の大地を割ながらどこまでも伸びていく。
「こんな、こんなもので私を殺せると思うな!」
漆黒の光に身体を二つにされながらも、断末魔に似た声を荒げながら消える。
シン……と静かになった後に響くのは波が戻る際の水の音のみ。
魔力反応はない。しかし、最後のセルフィラの言葉に引っ掛かりを感じたレルゲンは、もう何度めか忘れる程に周囲を警戒する。
魔力反応が戻る。
その先には召子の首元へ既に赤い槍のような物を携え、片翼のみになったセルフィラが人質を取っていた。
「貴方はどこまで……どこまで堕ちれば気が済むのですか!」
ミカエラが悲壮感漂う声で叫ぶ。
「はぁ……はぁ…いつまで武器を持っている。
魔術も使うのを禁ずる。すぐに捨てろ」
レルゲン達が武器をその場に落とし言うことを聞くと、セルフィラは肩で息をしながら笑う。
しかし、人質に取られている召子自身は、聖剣を捨てるどころか抱きしめていた。
「おかえり……!」
「何を言ってる。お前も早くその聖剣を…」
突如として聖剣に純白の翼が生え、衝撃と共にセルフィラを引き剥がす。




