51話 開示
セルフィラの纏う心念の変化に気づいたメアリーとクラリスが召子の後ろをカバーしに走る。
レルゲンはルミナス・ブロウの反動と莫大な魔力消費をカバーするべく、魔力糸をセレスティアに繋いで回復していた。
「あの一撃にどれだけ魔力を費やしたのですか?ほぼマインドダウン寸前じゃないですか」
「ああ、苦労をかける。だけど収穫はあった。
今までの戦い方じゃ奴を、セルフィラを倒すことは出来ない」
「ですが彼の言っている通り、心念はそんなにすぐに上達はしないと私も思う所が確かにあります。何か策があるのですか?」
心配そうにレルゲンの横顔を見つめるセレスティアに、アラエルを落ち着かせたミカエラが助言する。
「確かに心念は上達に長い年月がかかる。しかし、念動魔術と心念は近い。
レルゲン。貴方はその魔術をいつ覚えましたか?」
ふと考えると、物心がついてすぐに習った魔術で、一番初めに覚えた魔術が念動魔術。
その他の初期魔法は、念動魔術の後に覚えているのを思い出す。
「確か……四、五歳辺りですが、それと何か関係が?」
「はい。見たところ貴方はまだ若いですが、十年以上は心念の基礎鍛錬をしているようなもので、日頃からずっと遊んでいたのでしょう。
他の技に関してはまだ荒削りな部分が多い。ですが、念動魔術に関しては恐ろしく心念の流れがスムーズに見られます。
一時とはいえ、セルフィラの心念を突破したのは貴方がまだまだ心念の伸び代を持っている証明です。
決して分の悪い勝負ではありませんよ」
ミカエラの励ましを他所に、召子は聖剣をセルフィラに向けて何度も振るうが、間一髪の所でステップを駆使されて躱されていた。
「この……!」
「いい踏み込みだ。だが、その程度ですか?現代の勇者よ」
挑発され更に前屈みになりながら聖剣を携えて斬り込むが、これも余裕を保ちながら躱されてしまう。
どんどんと攻撃間隔が狭まり、前へ前へと突き進む召子を見た背後の二人はセルフィラの背後に回り込んで挟み撃ちの体制を敷く。
三方向からの同時攻撃を嫌ったセルフィラは、一度空中へ飛び上がって音もなく氷上へ再度着地した。
セルフィラは未だレルゲンが回復中なのを確認して、自分の特権について話始める。
「いい攻撃です。
しかし、私はこれから勇者の出しているその翼を貰い受けるため、今度はこちらから行かせて頂きます」
「勇者の翼を貰い受ける…?」
メアリーが訝しそうにセルフィラを見返したが、意に返さずに尚も続ける。
「私には翼を同胞に分け与え、そして好きな時に回収が出来るロスト・ウィング。
手で直接三回触れれば否応なく翼を奪うことが出来るタッチ・ザ・スティールという二つの特権があります。
〈スキル〉と言い換えてもいい。
では何故こんな手の内を晒すことをわざわざ言うかと言うと?
おっと…その顔は知っているようですね。クラリス君」
「〈スキル〉の開示による発動条件達成…」
「その通り。〈スキル〉は勇者の物ですが、似たような条件付きの特技で、これは勇者の翼を頂くための下ごしらえ。
これから私は貴女の翼に三回触れる。
魔王とクラリス君がどんなに防ごうとしても、私は貴女の翼を貰い受けます」
瞬間。セルフィラの姿が消え、そっと優しく召子の〈天の翼〉に一度だけ触れる。
「こんな風に」
「「……!!」」
メアリーとクラリスが見失う程の速さで移動し、咄嗟にセルフィラに向けて攻撃を仕掛ける。
翼に触れたセルフィラは恍惚とした表情で、〈天の翼〉を確かめるように撫でた。
「いい。これが私の物になるのかと思うと、興奮が止まりませんよ」
「だぁぁあああ!!」
「離れなさい!」
二人の攻撃を軽くいなし、セルフィラは再び距離を取る。
「後、二回」
「召子。その翼、引っ込められないのかい?」
「ごめん!敵がいなくなるまでこの翼は無くならないの!」
「そうか…」
メアリーは下唇を噛み、怪しく笑う天使を睨んだ。




