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【9.5万pv感謝】念動魔術の魔剣使い -大切な人を護り続けたら、いつの間にか世界を救う旅になりました-【第六部】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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第二章 8話 魔族の襲撃 改稿版

緩み切った空気になることを待っていたのだろう。

草陰から音もなく暗器が投げ込まれる。


こんな人混み中で強行してくるとは、

流石のレルゲンも一瞬出遅れる。


投擲物が来たとわかってから、自分とマリーに念動魔術をかける。


“矢避けの念動魔術”


自身に害があると認識した投擲物の軌道を

自動的に曲げる事ができる魔術で、

レルゲンが旧王朝出身でありながら今まで生きてこられたのも、

この魔術を早期に会得したことが大きいと言える。


最初に使ったのは暗殺ギルドの長との戦いで、

同じく投擲物の軌道を曲げるために使い、それを加護によるものだと誤認させた。


マリーがもっている“連続剣の加護”も同様に、

加護には弱点が存在する。連続剣の加護は自身の闘志が無くなると効果が消える。


“矢避けの加護”の弱点は攻撃されたと認識しなければ発動しない。

付与される加護の希少性では矢避けの加護は下位に位置し、

その弱点もある程度知られている。


つまり、レルゲンの緊張が緩み切った瞬間を狙って、

マリーから中々離れないレルゲン共々暗殺しに来たというわけだ。


矢避けの念動魔術によって暗器が逸れたと同時に集中を深くし、

周囲の魔力反応を探る。


人型・強い魔力。人間とは自然魔力の流れ、

大きさが異なっていた。


(この感覚、忘れもしない。魔族だな)


魔族は最低でも三段階目、多くが四・五段階目に分類される種族だ。


(いよいよマリーを狙う敵側もなりふり

構っていられなくなってきたか)


通常、魔物は消滅時に魔石を生成するが、

魔族は別で最初から魔石を体内に有している。


身体の一部となる事で魔力の運用効率が爆発的に向上し、

高い戦闘能力を有している事が多い。


ここまで入念に準備して、かつこちらはマリーも帯剣していない。

今自分が持っているのはお守りで持ってきた鉄の剣と黒龍の剣。


黒龍の剣なら相手することはできるが、

鉄の剣では螺旋剣にした所で倒せる魔族は一体のみだろう。

狙撃に近い遠方からの攻撃手段があるかもしれない。


ここまで後手に回ってしまうと分が悪い。


念動魔術で空を駆ける。


「逃げるぞマリー!」


「戦わないの?」


「こいつを使えば戦えるだろうが、

いきなりの実戦が魔族相手は分が悪い、

一旦体制を立て直す」


全速力で王宮を目指す。

魔族側も羽を展開して追いかけてくるがレルゲンの方が速い。


王宮まであと少しという所で、空中に待ち構える人影が一つ。

魔族が空中で飛びながらレルゲン達を向かい打とうとしている。


(こいつだけ他の魔族よりも魔力が段違いだな)


魔力量だけ見れば、五段階目のアシュラ・ハガマ以上だろう。


「マリー、一旦止まる。コイツは逃がしてくれなさそうだ」


「あと少しなのに……対空戦は経験あるの?」


「ない」


いよいよ追い詰められてきた。

幸い他の魔族がくるまで後十秒だろうか。


黒龍の剣を取り出し、魔力を込める。

紫色に変化した刀身はいつでも遠距離からの攻撃が可能になった合図だ。

距離は試し斬りした時の倍以上はあるだろう。


だが、レルゲンにはどこか確信があった。


紫に発光している剣を上段に構え、振り下ろす。

すると魔族が高笑いをしながらレルゲンを嘲笑する。


「そんな所で素振りなんて始めて何がしたいんだお前は?

気でも狂ったか!」


反論はしない。

黙ってレルゲンが魔族の左側を指差すと魔族が気づく。

腕が既に切り飛ばされている事に。


「なっ」


驚いてはいるが、思考の切り替えが早い。

すぐに意識を切られた腕に集中し、再生する。


「腕が生えた!?」


マリーが驚きの声を上げる。


「腕を切ったくらいで様子を見ているようでは、

この俺には勝てんぞ小僧!」


魔族がレルゲンを見失う。

左右を見渡すがレルゲンはいない。


「どうやら見捨てられたようだな!女ぁ!」


「そんなわけ無いじゃない」


「何言ってやが…」


魔族が言い切る前にレルゲンが頭上から縦に両断する。

両断した面から魔石が見え、強引に魔石を取り出す。


苦しそうにくぐもった声を魔族が上げるが、

無視して黒龍の剣で核になっている魔石を切り刻み再生機能を止めた。


魔石を粉々に破壊された魔族は再生ができず、

全身が砂のように散っていき、姿を消した。


追いかけて来た魔族達は、

指揮官がやられたためか散り散りに逃げようとしたが、

一人だけ念動魔術をかけて動きを空中で固定させる。


他の魔族には逃げられたが、一人だけ拘束できれば、

今はそれでいい。


「街の警備はどうなっている!

なぜこんなにも簡単に強力な魔族が侵入できる!」


一人の男性貴族が声を荒げる。

落ち着くよう女王が宥め、レルゲンに説明を求める。


「恐らく魔族は、姿の擬態のみならず、

魔力の隠匿ができると思われます」


「何だそれは!それはどういう原理だ!説明しろ」


「こちらも憶測の域は出ませんが、

攻撃をされてから私の魔力感知に反応が現れました。

そして、魔族は魔石を体内に有しています。

その魔石自体に何か魔術をかけて隠匿しているか、

魔石の効力を脱着していると考えられます」


「そんな術を持っているというのか……」


ここでセレスティアが進言する。


「脱着については私にも分かりませんが、

隠蔽魔術なら心得があります。

上級影魔術、ハイド・スペリア。

上級魔術の中では詠唱時間も短く、

効果対象の範囲や術式に充てる魔力量にもよりますが、

魔石程度の大きさなら長い時間の隠蔽が可能でしょう」


有力な説がセレスティアから出てきたが、

発動の阻害は難しいだろう。奴らは発動してから乗り込んでくる。


「では一体どうすれば…」


ここでレルゲンが発言の許可を求めるべく小さく手を挙げる。


「騎士レルゲン、発言を許可します」


「恐れながら、

仮に上級魔術を発動してから乗り込んでいると考えると、

既に王国内部に侵入している個体が他にもいると考えた方がよろしいかと」


「そんなことはわかっている」


「はい。ですので、

マリー殿下には強くなってもらわなくてはなりません。

そこに控えておりますベンジー騎士団長よりも」


謁見の間での一件でマリーがレルゲンに詰め寄る。


「あんなこと言って、

本当にベンジー騎士団長より強くなれると思っているの?」


「ああ、間違いなく君にはその素養がある。それも短期間で」


「信じられないわ」


「すぐにわかるさ」


「そうかしら……」


あまり自信がない様子がありありと伝わってくる。


「マリーには俺が知っている魔術の考え方を叩き込む。

幸い根底にある戦い方は俺とマリーは似ているしな。

高位魔術はセレス様が先生になってくれるように頼んでみるよ」


「それはいいけど、

私がセレス姉様に魔術を教わっている時に貴方はどうするのよ」


「捉えた魔族に話を聞いたり、

カノン王女に研究資料を見せてもらったりが主になるかな」


「カノンとも仲がよろしいようで何よりだわ」


「仲が良いわけではないよ。

それにしても、言い方になんか棘がないか?」


「ないわよ」


これ以上追求しても仕方ない。

今日は折角のお出かけだったことを忘れないように、

マリーに改めてお礼を言う。


「マリー」


「なによ」


「今日はありがとう。楽しかったよ」


「私も楽しかったわ、また明日から忙しくなるけど、

時間が出来たらまた行きましょう」


「そうだな。また美味しいお店に行こう」



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