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【9.5万pv感謝】念動魔術の魔剣使い -大切な人を護り続けたら、いつの間にか世界を救う旅になりました-【第六部】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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第二章 5話 毒殺 改稿版

朝食がマリーの部屋に運ばれて来るタイミングで、

バルコニー側の窓ガラスからノックする。


「レルゲンだ。マリー、入ってもいいか?」


「こんな朝早くから何かしら?どうぞ、入って」


事情を掻い摘んで説明する。


「それで?これから毎食、私の料理を貴方が毒味するって?」


「ああ」


「あのねぇ、もしもの事があったらどうするのよ」


「それは大丈夫。出される料理全てに

「毒分離」の念動魔術をかける」


「念動魔術ってそんなことも出来たのね」


「意外とあっさり信じるな」


「あら、私に嘘ついているの?」


「まさか」


「そ、ならいいのよ。その毒分離の念動魔術、やって頂戴」


「分かった」


意識を集中し、昨晩の砂分離の感覚を呼び起こす。


レルゲンがイメージしたのは「マリーに害のある物」の分離。


空いている皿を予め用意し、

分離できてしまった時の為に保存できるようにしたが、

果たしてどうだろうか。


すると、やはりと言うべきか、

空いていた皿に白い粒が少量積もっていた。


これを見た時に自然魔力が大きく揺らいだのが一人。

急いでその場を後にしようとする使用人を念動魔術で捉え、

身動きを封じる。


(間に合ってよかった)


「さて、事情を説明してもらおうか」


身動きを封じられ、流石に観念したのかポツリポツリと話始める。


「私は、フィット様に命じられこの料理を運んできました。

嘘ではございません。どうか、どうかお慈悲を」


魔力糸をマリーに繋げ、思念で会話する。糸電話の要領だ。


(どうなの?)


(分からないが、自然魔力の揺らぎは問題ない。

セレス様みたく魔術に秀でているなら別だが)


(そう、ならいいのよ。それよりも「セレス様」ってどう言うことよ。

あなたたち、いつの間にそんなに仲良くなっていたの?)


(昨日)


ここでレルゲンが魔力糸をマリーから離し、

会話を遮断する。これ以上はマリーの機嫌を損ねる一方だ。


「後でちゃんと説明してもらうからね」


「御意に。そういえば、元・毒入りの料理、

流石に下げるよな、すまんが新しい料理を頼む。

悪いが作っている工程は全て確認させてもらう」


「いえ、そのまま食べるわ」


「は?いやいや、これ、本当に毒だぞ。

何の毒かは分からないけど」


「自信ないの?」


さっきの仕返しと言わんばかりの口調で、

自分の命を賭けに使ってくる。


「ある、が先にコレは俺が食べる」


「あっ、ちょっと!」


魚を焼いた切り身を念動魔術で浮遊させ、

口の中に飛び込ませる。ジュワッと溢れるてくる脂は甘く、

鼻先に良い香りが抜けていく。


(なんだこれ美味い)


勿体無いので少し味わってから飲み干す。

その様子をマリーが心配そうな顔で覗き込んでくる。


「大丈夫なの?」


「ああ、問題ない。これはしっかり「毒抜き」されている」


ふぅっと大きく息を吐くマリー。


そんなに心配するなら食べるなんて言うなと思ったが、

口にするとまた怒らせてしまうだろう。


「影さん、いるかい?」


「はい、ここに」


影と呼ばれた黒装束の人物がヌルッと現れる。

隠魔法の一種だろうか、

カーテンの影から音もなく影と呼ばれる人物が歩いて近づいてくる。


こうなる事態が予想できた以上、

予めダクストベリク女王にはマリーの身辺警護について

情報を開示してもらっていた。


「まず初めに女王に報告を。

後にこの皿を持って薬学研究所に鑑定依頼を頼みたい」


「畏まりました」


今度はレルゲンの影まで歩き、後もなく消える。


(ここからが勝負だな)


「マリー、フィットに話を聞く必要がある、

奴の居場所は分かるか?」


「王宮の近くに屋敷があるけど、

今何処にいるかまでは分からないわ」


「分かった」


朝食を準備した使用人達の方へ振り返り、

再度同じ質問を投げかける。


「フィットの屋敷の場所を知っている奴はいるか?」


ここで、念動魔術で動きを封じていた使用人の魔術を解除する。

するとやはりと言うべきか先程まで動きを封じていた

使用人が場所を知っているようだった。


「ご案内致します。どうぞこちらへ」


「それだと遅い、情報がフィットに伝わる前に抑える。

ちょっと失礼!」


「えっ、きゃあああ!!!」


使用人の身体に再度念動魔術をかけ、窓ガラスの外へ。

空中から探索すれば最速でフィットの屋敷まで到着する。


(いきなりやられると怖いわよね、分かるわ)


マリーがうんうんと頷いていたが、

空へと飛び出した二人にはもう知る由もなかった。


王国上空、レルゲンと使用人の女は空を飛んでいた。


「どの方角だ?」


使用人が辺りを見まわし、現在の位置を把握する。

暫く下を見つめていると「あっ」と気づいたように声を漏らす。


「あの辺りか?」


「はい、方角的にはあちらになります」


「少し急ぐ。舌を噛まないように口を閉じてくれ」


「分かりました」


言葉にならない絶叫が、王国の朝にこだまする。

速度を上げて、指示のあった方角へ飛んでいると、

王宮ほどではないが大きな宮殿が飛び込んでくる。

使用人に確認する為に一度止まる。


「あれか?」


「はい。あちらが、フィット様のお住まいになります」


「分かった。道案内ご苦労様。危険だから一度君を降ろす。

君の位置が分かるように魔力糸を一本つける。構わないか?」


「はい。自分がやった事を考えれば当然にございます」


レルゲンが使用人を地上に降ろし、

位置が特定出来るように魔力糸をつける。

意図的に切られなければ、

どこまでもレルゲンの魔力で伸びて行くので、回収が楽だ。


「見つからないように隠れていてくれ、なるべくすぐに戻る」


フィットが住んでいる宮殿は思っていたより広い。

コレほどまでの広さは魔力感知では情報が足りない恐れがある。


瞬時に魔力感知を諦め、

屋敷全体に魔力糸を展開する案を思いつく。


魔力糸には実体がない。

そのため、物体を透過する事もまた出来る、筈だ。


無意識に使用人に魔力糸をつけて追跡出来ると思い込んでからは、

この発想も思いつく事ができた。


屋敷の入り口に立ち、魔力糸を蜘蛛の巣状に展開。

屋敷の外壁やガラスを透過していき、直線的に伸ばされる。

今朝方やったマリーとの念話時のイメージで、魔力と音を感知。


屋敷中の声が一斉に聞こえて鼓膜が破れそうになるが、

一箇所に魔力と音が集まっていることに気づく。


他に感知したところを一旦遮断し、

集まっているところのみに集中する。


屋敷の内部では、やはり狙い通り焦った声色で報告を待っている人物がいた。


「一旦何をグズグズしている!報告はまだか!」


「申し訳ございません」


その他の使用人もいたが、

間違いなくコイツがフィットだと確信する。


ふぅ、と一息吐き、会った瞬間に攻撃を仕掛けないよう思考を切り替える。

急いで突入しようとしたが、興味深い話をフィットが漏らす。


「これだけ失敗しているのだ、

今度また失敗したら“あのお方”からどんな制裁を課されるのか!

想像した事があるか!」


使用人が黙ってフィットの叱責を受ける。

ここでレルゲンが高速で移動し、屋敷の内部に侵入、

フィットのいる部屋まで最短で向かう。


コンコンと扉をノックすると、

待ち侘びたようにフィットの声色が明るくなる。


「やったのか!」


「あぁ、やったよ、お前の用意した料理の毒抜きを」


「お前は新しい第三王女の!」


「そうだ、なぜ俺がここまで来たかもうわかるな」


一目散に隠し扉の方へ向かうが動き始めた瞬間に

レルゲンの念動魔術によって止まらされる。


「お前は主を殺そうとした奴だ。

今すぐに殺してやっても良いが、奇妙な事を言っていたな。

マリーを殺せないと、“誰が困る”んだ?」


「そんな事言えるわけがないだろう!

くそ!何で口以外動かないんだ!」


「そうか、言えないか」


念動魔術でフィットの左手の小指を捻じ曲げる。

ボキッ!という音が派手に響き、

苦悶の表情と共にフィットの額から脂汗が吹き出るのが見て取れる。


レルゲンがフィットの耳元まで近づき、小さく囁く。


「大丈夫だフィット、お前の指は後九本ある。

ゆっくりいこうじゃないか」


「この悪魔め!もし言ったら確実に私は殺される!

言えないのだ……頼む、もうこれ以上は!」


ボキッ!二本目として左手の薬指がありえない方向に捻られ、

再び悲鳴が部屋を包む。


「言っておくが、

コイツを助けるつもりなら問答無用で拘束させてもらう。

大人しくしてろ」


悲鳴を上げ続けるフィットの髪の毛を掴み、甘い言葉を囁く。


「もし今話すと言うなら、お前の身の安全は保障しよう。

話さないなら次は中指だ」


レルゲンが使用人の方へ向き、回復薬は常備しているか問う。


「飲料タイプがございます」


「主人思いのいい部下を持ったな。

後、三十八回は君に尋ねる事が出来るよ」


ここでフィットの心が完全に折れた。

話し始めるのを聞いて、レルゲンは驚愕と共に少しの笑みを見せる。


言いつけ通り、女の使用人は宮殿近くの影に身を潜めていた。

フィットはそのまま念動魔術で

ダクストベリク女王に突き出すべく空中に浮かせている。

女の使用人にも念動魔術をかけ、

一度マリーの自室まで二人を連れて戻る。


バルコニーの窓を軽く叩くと、

そこには元・毒入り料理を食べ終えたマリーが迎え入れた。


「結構早かったじゃない。で、二人共連れてきたのね」


「ああ、俺はフィットから直接聞いたが、

女王に事情を本人から説明させる」


「よく正直に話したわね」


マリーがフィットに詰め寄るが、魔力糸を瞬時にフィットへ繋ぎ


(話せばもう一本だ)


と念話で一方的に告げると、

ただ下を見つめるだけだった。


「マリーも来るだろ?」


「ええ、いくわ」


三度、謁見の間にマリーと使用人、フィットを連れて女王に説明する。

女王の付き添いなのかセレスティアもいる。


謁見の間に入った時に手を振って挨拶されたので、

立ち止まり頭を下げて挨拶を返す。


「事情は理解しました。すぐにでも処断を行いたいところですが、

“背後にいる黒幕”も気になります。

フィット伯爵は勾留し、使用人の貴女には無期限の暇を与えます。

それで構いませんか?マリー」


マリーが無言で頷く。


良かったらブクマや評価をお願いします。

皆さんでこの作品を盛り上げて下さい!

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