4話 魔術訓練開始
そんな加護はいらないとパーティの中でも一番の加護所有者であるマリーは思ったが、口にしないだけ助かった。
教会を後にするレルゲン達は、司祭長の言葉は無視できなかった。
何かしらの魔術的な欠陥が術式に現れていた証拠でもあるため、今日は大人しくすぐに街を出て野営の準備に取り掛かる。
野営の為に簡易的な雨除けを立てると、レルゲンが準備を進めながらウルカに一つ尋ねる。
「ウルカ、勇者の寿命のことだが」
「うん。聞かれると思った。正確には〈勇者〉が聖剣を手にした時点で身体の老化が止まるの。
魔王を倒すまでは歳を取らない、限定的な全盛期の加護みたいなものね。
でも、私もあの司祭長の言葉は少し面白かったわ。
魔王の死の宣告によって有限の寿命となる解釈は、確かに魔界にとって有益だもの」
ウルカが召子の元へと飛んできて、頭の上に乗ると、励ますように軽く頭を叩く。
「でも安心して召子。魔王をちゃんと倒せば寿命は元に戻るから」
「それって時間をかけてもたもたしてたら一気に老けちゃうってことだよね?なんか複雑な気分」
「ううん、魔王を倒してから寿命の減少が始まるから、倒すまでは歳を取らないと考えていいよ」
「そうなんだね、でも自分勝手な勇者が召喚されていたら大変だっただろうな…」
「事実、聖剣を手に入れるまではそういった勇者がいたってディシアが前に言ってたよな。
そういえば、勇者は複数いたって話をしていたけど、聖剣って何本もあるのか?」
「一本だけしか私達は授けていないわ。でも一緒に行動していたメンバーにも聖剣とまでは行かないけど、勇者の証として武器は授けたの。
強さ的にはそうね、マリーとセレスティアが持っているのと同じくらいの強さだと思う」
「そうか、なら今後も安心して使えるな」
街に行ってから一泊する為の宿を探すのがいつもの流れだったが、ここは魔界。
必ず通貨の価値や種類が異なっていることを考えなければならない。
それが難しければ、何かしらの物々交換で泊まれる可能性があったが
エルフの姿に擬態しているのに魔界で使われる通貨は持っていないとなると、怪しさの余り通報されかねないのだ。
雨除けを立て終わり、今日はもう休むことにしたレルゲン達。
既にフェンとアビィが仲良さそうに身を寄せ合って寝ている姿を見て、召子は優しく微笑みながら撫でて一緒に眠ってしまう。
外の気温はさほど暑くはないが、生暖かい風が吹いているため薄着で眠るのが丁度いいだろう。
しかし、それでもまだ魔界に来て二日目。
全員がいつでも動ける格好で身を寄せ合いながら眠りにつき
レルゲンは魔力糸を周囲に張り巡らせながら岩場地帯で目を閉じた。
次の日、セレスティアは朝食を取りながらウルカに魔術について尋ねていた。
「ウルカ様、少しよろしいでしょうか?」
「何?」
「私の魔術が見破られてしまったのは何故でしょうか?」
「昨日の事を気にしているの?」
「はい、教会の司祭長に見破られてから考えてみましたが自分では原因が分からず、ウルカ様なら何か知っているかと思いまして」
「早速頼って来たね!セレスティアは魔術は自己流でしょ?」
「初めて魔法を教わった時は先生がついていましたが、魔術になってからはほぼ自己流で励んでいました」
「そっか、図書館もあるとレル君から聞いていたけど、勇者の記述がないなら知らないのもしょうがないか。
いいよ!教えてあげる。
セレスティアに私の話が分かるかな?」
「是非お願いします!自分の物にして見せます」
「じゃあ今日はセレスティアの日にしましょう!レル君もそれでいい?」
レルゲンが頷くと、セレスティアの表情が明るくなり、新しい技術を覚えられるのが待ち遠しいようだ。
「セレスティアは魔術の基礎、つまり魔力量と精密操作は出来ているから
足りないのは魔術の複合。最低でも三つは合わせられるようになってもらうわ」
ナイトが四つ以上の魔術を複合して使っていたことを思い出すと
三つという数字はセレスティアの潜在能力を加味すれば現実的な話になってくるだろう。
ウルカが尚も続ける。
「セレスティアの魔術が見破られたのは簡単な話よ。擬態魔術をかけて終わり___
一つの魔術だけで完結してしまっているから看破されたと言っていいわ。
あの時の司祭長の目を欺くには、魔術をかけた残滓、つまり魔術をかけた相手に纏わせている魔力を消す事が必要になるの。
セレスティアは隠蔽魔術が使えるわよね。擬態魔術に隠蔽魔術を被せるように使えれば、恐らく見つからなかったと思う。
どう?出来そう?」
「理論は理解しました。やってみます」
そうしてセレスティアの魔術修行が開始された。




