27話 親愛の証
アッシュが撤退したことで、残りの人形兵隊部隊に集中することに。
既にアッシュとの戦闘中に数キロ進んだ事から一行は空を飛んで追いかけていた。
「いました!部隊の先頭です」
フェンの上に跨っていた召子が下を見つめながらレルゲンに伝える。
全員が魔剣を持っている人形部隊を目視すると、レルゲンが魔力糸を伸ばし先頭の兵隊に接続する。
その接続された兵隊から更に後ろの兵隊に糸がどんどんと伸びてゆき、一度に千体程の接続を可能にしていた。
「そんなに魔力糸を接続してどうするの?」
マリーが何でわざわざ?といった表情をするが、レルゲンが少し笑い
「こうするのさ!」
レルゲンの強固な命令が人形の足を止め、核があろう心臓部に目掛けて魔剣を突き刺した。
動力源を完全に潰された人形はバラバラと崩れ落ちてゆき、その光景を見たマリーは
「レルゲンって結構えげつないこと偶にやるわよね…フィルメルクの即死トラップを抜ける時とかもそうだったし」
「ダンジョンではああするしか無かっただろ。
今回は無駄に数が多いから効率的に行こうってだけさ」
「まぁ、いいか。この分なら私達は必要無さそうだからレルゲンに任せるわ」
それを聞いていたセレスティアがレルゲンに声をかけてくる。
「マリーはあのように言っていますが、貴方を信頼しているが故の雑さだと思いますよ?」
「分かってる。セレスも少し休んでいてくれていいぞ。後は俺が片付けておくから」
「いいえ。魔力の消費量を考えたら私も残りますよ」
「その時はウルカに借りればいいんじゃないか?」
「いけません。本来精霊との契約はちゃんと危険が伴うのです。
どんな契約内容を結んだかは分かりませんが、そこはしっかりして頂かないと。
いい機会です。ウルカ様とはどんな契約をされたのですか?」
「ウルカは元々俺の中にいたからな。今まで俺の力をずっと制限していたらしいから、その分のデメリット十八年分が完遂するまで無料期間だよ。
そもそもだけどウルカ自体、俺から何か貰う事に頓着ないみたいだから、今のところはリスクがないな」
ここでウルカがレルゲンの胸ポケットから出てきて補足する。
「ちなみにレル君って呼び方も本人が嫌がってたのを我慢させてるからデメリット扱いになっているわよ。簡単に言えばこじつけね。
純精霊との契約なんて人間がいくらこちら側にメリットを提示しても足りないくらいだから、何もらっても変わらないの。
だけど、私自身がレル君の力になりたい気持ちがあるから、寧ろ力を貸して上げる理由を探すのに苦労するのよね」
「それではウルカ様とレルゲンの立場が逆になってしまっているのでは?」
「そう!セレスちゃん賢い!これは私がレル君と契約するための誓約なの。
だからレル君の十八年分が無くなっても何か貰うつもりはないから安心して」
「そうですか、分かりました。
私が気になっていたことは杞憂のようでしたので、安心しました」
「と言うわけだからセレスを向こうで休んでていいってこと」
「嫌ですよ?妻が夫と一緒にいたいと思う気持ちに約束事は必要ありませんから」
「参ったな」
レルゲンが降参のポーズを取り、残りの人形が全て殲滅するまでの一時間はセレスと雑談しながら過ごしていると
あっという間に全ての人形を討伐してしまうのだった。
ヨルダルクを完全に無力化した事で、中央王国は書面上ではヨルダルクを属国扱いにする事で合意させ
今回潰した施設の研究を全て永久に凍結させる事を念頭に、ヨルダルクの最高意思決定機関を解体。
ディシアを新たな国の王として召し上げる事で完全な傀儡政権を設立することとなった。
また悪魔と通じていた者がやはり何名かいたようで、その研究員達は全ても抜けの空と化した研究室を作るのみで
恐らくは魔界に逃げ込んだと見受けられたが、一応の捜索は継続させることで、体裁を整えることとなった。
女王は完璧な成果を持ってきたレルゲン達に対して、何か褒美を取らせようとも思ったが
特に現状に満足していること、悪魔襲来に備えて更に強くならなければならないことを伝えると
「そうですね。これからの準備が私達の命運を分けるでしょう。引き続きこの国を、引いては世界をよろしくお願いします」
「御意に」
「では言い方を変えましょう。少しの間とはなりますが、あなた達には休暇を与えます。
鍛錬に励むも良し、しっかりと英気を養うのも構いません」
女王がニコッと笑い
「一週間という短い期間にはなりますが、しっかりと息抜きをしてきて下さい」
「ありがとうございます。女王陛下、しばらくの間存分に休暇を楽しませて頂きます」
(前々から欲しいと思っていた休暇がこうもあっさり手に入るとは)
依然として魔王復活の時は近いことに変わりはないが、一度レルゲン達にも纏まった休日が必要と考えていたのは女王も同じだったようだ。
「では明日から一週間、存分に楽しんで来てください」
「「はい!」」
女王の部屋を後にする面々の表情は明るく、何処に遊びに行くかで話が持ちきりだった。
きっとレルゲンも、否、間違いなくマリーとセレスと共にどこかに遊びに行く事になるだろう。
フィルメルクでの旅館はある種の息抜き時間でもあったが
ダンジョン攻略で寝泊まりする為の所という目的があったため、純粋な余暇を楽しむのとはまた少し違っていた。
レルゲンは廊下を歩きながら大きく伸びをして身体にかかっていた力を抜くと、自然と欠伸が出てくるのだった。




