54話
(sideノームル)
「そ、そんな………な、何が起きている!?」
上を見上げると、そこには想定外の光景が映っていた。
相次ぐ爆発と、その度にふらふらと墜落していくアークドラゴン。そして、何より恐ろしいのは何かとんでもない速さの光がぶつかるたびにそれが起きていることだ。
「な………まさかあれは上位魔法のプチメテオか!?」
こ、これでは制空権を完全に相手に取られたではないか!
「部隊を市内まで退避させろ!このままだと空からの攻撃で一方的にやられかねん!敵が制圧しにかかったところを奇襲するんだ!」
二ホン軍も都市内に入ってくるときは勝利を確信して油断しているはず!民間人にまぎれたり、屋内に隠れれば上手く相手に大ダメージを与えられるはずだ!
「待ってください!それだと市内の民間人も戦いに巻き込んでしまうんじゃないですか!?」
「結婚間近の息子が居るんだ、アイツまで死なせるわけには………」
こ、この期に及んで何を言っているのだ………
「黙れ!ここで我々が全滅すれば、市内は二ホン軍に好き放題されるのだぞ!」
弱いものは、強きものに蹂躙される。それが戦争の全てなのだ!こうなったら手段を選んでいる場合ではない!
「二ホンが空からの攻撃を都市の方にもするかもしれないじゃないですか!」
「したとしても小規模に決まっているだろう!奴らはここを今後の侵攻の拠点として使うはずだ。せいぜい一般人が殺害、略奪されたり、犯されたりというレベルだろう。一般人相手に好き勝手して緩み切ったところを叩く!これしかない!」
「そ、そんなの嫌だ!俺たちはここで二ホン軍を食い止めるんだ!」
「都市部に奴らを入れちゃダメだ!」
「ま、まだ海軍は残ってるんです!大丈夫!」
………確かに海軍が残っているが、防衛のための最低限レベルで小勢も良いところだ。先の二ホン侵攻艦隊は数で上回ることによって、質で勝る相手を倒そうとした。だが、質も数も負けていて二ホンの海軍に勝てるわけがない!
「海軍はあてにならん!もはや我々が都市部での不意打ちで追い返すしかないのだ!分からんか無能ども!」
「お、俺はここで二ホン軍を倒すんだ!」
「市場にだって建物はそこそこある!隠れられないわけじゃない!」
「家族を守るんだ!」
「き、貴様ら、命令に逆らうつもりか!」
く、くそっ!これでは都市部への再配置がうまくいかんではないか!
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ノームルの部隊がもめている間、海上自衛隊の第二、第三護衛隊群は着実にシャベドへ近づいていた。そして、その距離はついに砲撃が届く位置に迫っており………




