37話 招待状➁
「ヤーロピアル大陸の南東に位置する国家で、同大陸ではアグレシーズ帝国に次ぐ国力を持っているそうです。帝国が一気に領土を拡張するまでは列強の一国として数えられることもあったそうですが、近年は帝国の二番手に準じており、影響力もかなり低下し続けているとのことです」
「成る程、ここで仲介役を買って出ることによって影響力を高めようという訳ですか。しかし、そんな経緯があるなら帝国との関係はあまり宜しくはないのでは?」
その説明を聞いて、岸川がそんな疑問を投げかける。
だが、その疑問への増田の回答は予想外なものであった。
「いえ、それが連合は帝国と不可侵条約を締結していたり、両国間での貿易も盛んだったりと中々に両者の関係は近いようです」
「ふむ。ならば帝国が乗ってこないという可能性は低いのですね。………しかし、そこまで帝国に近いと今度は会談が帝国優位に進みかねない可能性もあると思いますが………」
それを聞いて、今度は別の懸念を示す岸川。それに対しても、増田はその懸念を払しょくさせるような返答をする。
「それに関してなのですが、連合は帝国が近年行っている侵略戦争を大々的に非難しているそうです。また、帝国内での奴隷の扱いについても問題があるとして改善をするように勧めているそうで………」
「………それは、複雑な関係性なのですね。正直そんな風になっている事情が皆目見当もつきませんが、まあそれは良いでしょう。………クラートからの紹介でもあるのでしょう?その話、乗ってみてもよさそうですね」
話を聞いて、しばらく考え込んだ後にそう結論付ける岸川。
「それは良かったです。とりあえず、葉名外務大臣の方には既に話を通しているので後は総理がゴーサインを出すだけです。………やるということで宜しいですか?」
「構いませんが、君は相変わらず独断専行が激しいですね。まずはこちらに話してから葉名外務大臣の方へ伝えるべきでしょう。順序が逆ですよ、逆」
岸川からそんな苦言を呈されて、苦笑いしながら増田は謝り出す。
「す、すいません………悪い癖ですね、次からは気を付けます」
「いつもそう言っているのに直らないのは何故なんですかね。まあいいでしょう。後で閣議を開いてこの件については正式な決定を下します。それと、会談に帝国側がちゃんと乗ってくるかどうかも確認が必要でしょう。実際にやると決めるまでには色々ありますから、すぐには動けません………だから勝手に動かないように、良いですね?」
「は、はい………善処します」
岸川に釘を刺されて、もう一度苦笑する増田であった。
次回は二千字超えててビビる。




