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New Eternity Online -PSだけで往く新世界-  作者: Amane Rinne
古代の枷は楽園を衛り、抑えられた羽根は再び拓いた
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#62 囚世:乖離虚域 part6

わらわ、命名にとっても手間取ったでありんす


 

「………街ぃ?」

 

 転送によって移ろう景色。

 門番と入れ替わるように出現したのは、コンクリートの建築群。いや、建築群と呼んで良いものか、フィールドに存在しているのは、薄灰色のキューブ状の箱が積み重なって出来たものである。

 

 家とは言い難い形をしたそれ。その集合を街と判断したのは、整備された道の存在からであろう。

 その道の途中に立ち尽くした俺は、まず何をするか考えることにした。

 

『──────なるほど。把握しましたマスター』

 

「おうよ。それで次はどうしようかなって思ってさ」

 

 三人寄れば文殊の知恵、二人だけでも明王ぐらいには届く。議論は知性の特権、しかも片方は高性能な機械!ならば光明が見えること間違いなしというわけだ。

 そもそも武器としての機能が欠如している時点で、これくらいしか用途が無いというのは、言わないお約束である。

 

 

『失礼の波動を感知しました。直ちに撤回をしてくださいマスター』

 

「なんという直感の精度!さすがシュヴィだ」

 

『ふん、そうでしょう。もっと褒め称えてください』

 

 

 ちょろい。

 

 

「そんな素晴らしいシュヴィさんは、ここがどこだか教えてくれたり?」

 

『私は素晴らしいので!勿論教えて差し上げますとも。ここは恐らく、[───]を基点に定着した〘乖離虚域(パラデイグマ)〙かと思われます。ですが、データの損傷が激しいらしく、崩壊寸前………』

 

 うーん何処だよそれ迷子。

 

「崩壊寸前?じゃあ待ってれば出られるってこと?レジェンダリーって名前にしちゃあ楽そうだな」

 

『いえ、どうやら記憶による情報補填が行われているようで、崩壊は起こりえないようです』

 

 

 ふぅむ、ここで新しい単語をポンポン出されると困る。何が困るって、議論の体をなさなくなってしまうと一方的な高説になってしまう。いや、まだ世界観に関して無知なのだ、仕方がないことか。

 

「そもそも、〘乖離虚域(パラデイグマ)〙ってなんだ?」

 

 文字列から類推………は無理そうか。

 

『そうですね………簡単に、発動者が理想とする世界の認識の強度を非常に高め、それに関連する何かを基盤あるいは核として展開することで、架空の情報を現実の空間に塗り替える、と言えば分かりますか?』

 

 うん。

 

「何も分からないことが分かった」

 

『む、説明が難しいですね…………。上辺だけの解釈ですが、このフィールドを元にした、テーマを持った空間に入り込んだと考えてください。この〘乖離虚域(パラデイグマ)〙のテーマは「追憶(・・)」、過去の情報と認識によって形成され、その記憶によって空間は紡がれていきます』

 

 つまりは──────

 

「このフィールドは、【枯れた栄華の墓場群】の過去の姿に相当するってことか?」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 そのあと数分話を聞き、

 

 1、アリスさんの情報と空間の性質を加味すると、「空間の存在意義を果たした上での領域破壊」がクエストの達成条件なのではないか。

 

 2、その空間の存在意義とは、話にも出ていた『魔女』の幽閉であり、その撃滅が必要なのではないか。

 

 という2点が主な考察として浮上した。

 

 空間の性質というと一体なにがなんやらよく分からないが、どうやらこの空間には、内包する存在を囚う牢獄としての構造が備わっているとシュヴィは言う。

 その対象が、例の魔女というやつかもしれないという話だ。

 

 なので現在の行動方針としては、まずは魔女とやらを探しながらフィールド探索を行うこと、それと同時に他のパーティメンバーと合流を図ることあたりが妥当であろう。

 

「うし、探索するぞ」

 

『了解ですマスター』


 エリア攻略もクエスト条件に含まれていたような気もするし、ここで止まっていてもしょうがない。


「兵は神速を貴ぶ」というが、俺も神速を貴ぶのでつまり俺は兵士。合流した時に何の成果も得られなかったというのは癪なので、調査兵としてエリアを攻略してやろう。


 神の如き速さでな!


「よっしゃあシュヴィ、全速力で駆け抜けるぞ!!!」


『マスター、高所からのフィールド展望を優先すべきです。方向が逆ですよ』

 

「…………」


 そだね。

 そだね……。




 ◆


 〘エリア【綻びの残影】に入場しました〙


「え?──────あれ!?ちょ、(Gate)(Guardian)は!?!?」



 KanK:ん?

 Load負う車:は?

 magokoros:え、何処!?

 おじいちゃん智:フィールドから追い出されてて草



「なんでよ!?私だけ!?違うよね、ね!?」


 アワアワと右往左往しながら、浮遊する球体に痛烈な表情で訴えかけるツインテールの少女。その名をAliceという。

 

「もしかしてアイツ、私のことだけ『転送』したの!?なんでよ!」


 門番に『転送』の最初の標的として選ばれたため、他の5人も同じく飛ばされていると知らない彼女の今の心境は、「やっちゃった」、の1色であった。



 カミンチュ:てかそもそも何処なんです?

 

 

 動揺しながらも目に入ったコメント。その一言が、彼女の思考を引き戻した。

 

 一旦心を落ち着け、現状把握を己に促すアリス。辺りを見渡してみると、まず目に入ったのは巨大な門であった。


 4本の巨大な柱から出来ているそれ。その表面には彫像が掘られ、内側には何やら文字が刻まれている。非常に見覚えのあるそれは、彼女の更なる疑問を呼び起こす。


「『転送』されてない……?」


 それは、門番が守護していた門そのもの。さらに言えば、戦っていた場所と反対側に転送されているらしい。

 だがそれにしては──────


「なんか明るいし……なんなのよ全く」

 

 数刻前の、黒霧に覆われたフィールドとは一転、視認性は格段に上昇し空気は浄化されたような綺麗さだ。

 

 違うフィールドであることは確実。アナウンスが何よりの証拠だ。


「はぁ。取り敢えずみんなも転送されたと仮定して、合流しなきゃ──────しなきゃ……」

 

 合流が先決、先決ではあるのだが。視界に割り込んできたインパクトのあるそれが、言葉を詰まらせる。


 分かっていても、彼女の視線はフィールド奥へと引き寄せられてしまう。

 そこには、圧倒的な荘厳さと存在感を放つ神殿が厳然と構えていた。明らかに「ナニカが在る」と主張するそれ。興味が湧き出るのを感じる。


(先に合流を目指した方がいいかな?)


 少し足を止めて思考をし、数秒を経て合流は後回しにすると決める。



「よーし君たち!合流は後で、あの人たちなら勝手に何とかなるはずよね!とりあえず見るからに怪しいあれに凸るわ!!」

 

 はらまき:よっしゃ!

 静寂の吉野:wkwk

 Mik:ありがとうアリス様!めっちゃ気になってた〜!



 結局、1番ゲームが楽しいのはこういう時なのだ。

乖離虚域の設定欲しい?


欲しい?




[───]の中身当てられたらちょっとだけ教えてあげるよ。考察してみてね。



ちなみに乖離は廻裏(裏へと廻る)と掛かってます。考察には関係ないですが、命名のポイントなので。ポイントなので!ポイントなので!!!(非常に手間取ったのでせめてこれは言わせてという顔)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『聖母に捧げる大聖堂には、掃除や祈祷を行う「光の聖女」が存在する。囚われた空間内で永久を彷徨う彼女は、元々は彼の大切な妻。そんな彼女を護る為、騎士として大聖堂の守護者になった彼は───…
[一言] みなさんとても考えられててすごい… 俺にはシュヴィさんがかしこかわいい事しか分からなかった。
[一言] 「[───]を基点に定着した〘乖離虚域〙かと思われます。」 フィールドのテーマが追憶ってことは記憶を思い出してるあるいは記録を再生してるナニカが基点、[───]なのでは? この場合は門番は…
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