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New Eternity Online -PSだけで往く新世界-  作者: Amane Rinne
古代の枷は楽園を衛り、抑えられた羽根は再び拓いた
58/79

#55 縋り憑く深淵

つづきー

 

 ─────────ヴゥゥン

 

 ジャンプ、『スプリントダッシュ』、パリィ、パリィ。体を捻って避け、腕で地面を押して避け、マトリックスもびっくりな体勢で避ける。

 

 恐らく五分くらい耐久すると、通常形態あるいは新形態に以降する筈だ。

 光の輪がすり減るスピードはそれなりに早い。

 

「おらっ!!」

 

 2本の光剣の連撃を捌き、隙を見て消し飛ばす。攻撃の手は止まず、更に飛来する3本の剣。

 

 この数分で分かったことだが、騎士が集中して動かす剣の本数が少なくなれば少なくなるほど、強度と練度が上がるらしい。

 

 ─────────ギィン!!

 

 

 2本の時よりも単調な動き、さっきよりも楽に消し飛ばす。

 

 どうやら光剣フォームは大して厄介では無いらしい。

 

 ずっとこのままなら楽なのだが…………如何せんダメージが入っていない。それじゃあ意味が無い。

 

 さて次の剣は──────来ない?

 

「ハァァァ!!」

 

 聞こえてくる声。若干高めで幼さを感じるその声は……ヘラ!?

 もう眠気が取れたのか。ちと心配ではあるが、やつの戦闘力は俺に匹敵する。多分。

 

 俺が騎士の光の剣を捌いていた間に、騎士本体に攻撃しようとしていたらしい。だから光の剣はヘラに集中し始めたようだ。

 

 最初の一撃は綺麗に入ったらしく、斬撃痕が残る首元から黒いモヤが出ている。

 

 ふむ、この形態になったら2人でやるべきなのか。今光の剣はヘラに集中しているから、俺が本体を狙う!

 

「ボーナスタイムじゃあ!!!」

 

 光の剣に狙われていない方が本体を狙い、ヘイトが切り替わったらアタッカー交代。

 本来、前衛アタッカーが二人居ないと出来ない立ち回りだが、幸い俺たちの編成は悪い。

 

 このまま削りきろう。

 

 そう思った瞬間、動きが変わった。

 

「【震脚】」

 

 轟音。

 

 今まで微動だにしなかった騎士が、地面を踏み鳴らしたのだ。割れる大地、吹き飛ぶ俺とヘラ。

 

 空中の俺を狙い撃ちしようと、光の剣が飛んできたのを辛うじて防ぐが、体勢を整えられずに落下ダメージを甘んじて受けた。

 

 ヘラは──────さすが、無事だ。

 

 大丈夫だと判断し、注意を騎士の方へ。

 6本の光の剣が3つづつ合わさり、2本の大剣になった。

 そして騎士は己の大剣も構え動き出す。

 

 ここからが第3ラウンドらしい。

 

 

 

 

 ヘラが先ず走り出す。俺は後ろから追従するように動いていく。形態が変わったとは言え、ここからも先程と同じような立ち回りでいいだろう。ヘイトを持つメイン盾とアタッカー要員。

 

 しかし先程と違うのが、光の大剣を抑えるのが大変だということと、アタッカー要員は動く騎士を相手にしなければならないということ。

 

 光の大剣がヘラを襲う。

 

 俺が騎士か。

 

「行くぞッ!!」

 

 己を鼓舞する掛け声。

 それに応えるように、騎士も俺に向かって走り出す。

 

「………【降斬】」「『フラッシュリフレクト』!!!」

 

 最初のアクションは、上からの振り下ろし。斧で横面を叩きパリィ。

 

「【掌握】」

 

 剣から離した片手から繰り出される掴みモーション。

 

「『サイドスライド』」

 

 スキルの強制力により無理やり避ける。

 

「『アクセルストライク』」

 

 横に回った俺。脇腹を狙い長斧を叩きつける。

 

「【旋脚】」 

 

 が、パリィされた勢いを利用した回転蹴りが斧に直撃。拮抗して弾かれる。

 

 

「がァッ、!!」

 

 弾かれた斧から手を離し、騎士と同じく回転の勢いを利用。戻そうとしている足に向かって、無手の肘打ち。

 

 武器こそは失ったものの、未だ伸びきった足に直撃し、その衝撃で足の装甲部が破損される。

 

 技量ステータスの真髄とは何か。

 それは偏に、エネルギー保存(・・・・・・・)である。

 エネルギーが他の物質へと移り変わる場合、少なからず生じるエネルギーロス。それを極限まで減らすことが出来るのが、技量ステータスなのだ。

 合気道の達人は、相手の力を受け流し無力化する。それを上回る、受け流しからの利用。それを可能とするのが技量ステータスであり、だからこそ技量(・・)なのである。

 

 

 

「【震脚】」

 

 装甲部が破壊されたとはいえ、足はまだ存在する。少し仰け反ったものの、追撃を抑えようと発動された震脚。

 

 地面に振動を与えることで、地面を介して敵に衝撃を与える技。多少振動が逃げても、足止めくらいにはなるだろう。

 

 が、俺は同じ轍は踏まない男!

 

「ヘラ、跳べ!!!」

 

「了解!」

 

 事前知識が無くとも、モーションを見ればいい。

 地面に触れていなければいいと分かるのは容易だ。

 

「『スプリントダッシュ』!」

 

 そして、地面に足がついた瞬間にスキルを発動する。

 

 接近。

 

 騎士は未だ体勢が崩れ、大剣を持つ手はダランと垂れたまま。

 辛うじて抵抗しようと、空いた手から突きを放とうとする。

 

 が、もちろん許すわけが無い。

 

「貫けェ、『飛牙』!!!」

 

 流離人がもつ唯一の体術系スキル。それは、固く握り締めた拳による攻撃でも、先程のような掌底打でもない。

 親指をまげ、残り4本の指をピチリと合わせる。その鋭利な形は、刃物を彷彿とさせた。突く事にのみ特化した技、いわゆる貫手(・・)である。

 

 

 一点集中だからこそ出る高火力。もちろん、急所を狙うのが最高効率。

 

 高速接近によりゼロ距離まで近づけば、狙い目になる部位は自ずと決まる。

 

 貫手が鳩尾のプレートアーマーを穿き、急所に入った。

 

 

 騎士の手は間に合うことはなく。

 拳の形を保ったまま、静止した。

 

 手を胸から引き抜き、一応警戒して距離を取る。

 何故だろうか、嫌な予感がした。理由を言うとすれば、色だろう。

 

「お兄ちゃん、剣が消えた。終わったの?」

 

 背後から近づいてくるヘラ。多少の傷を負いながらも、しっかりと持ち堪えられたようだ。

 

「終わってない………と思う。」

 

 両腕は真下へ伸び、俯いた騎士。首から出る黒い煙は止まらず、腹と足はアーマーが破損して黒い肉体が見えている。そして貫かれた胸は、更に黒い。

 

 既視感。

 

 そして、答え合わせが始まる。

 

『レアエネミー【追憶の騎士】に特殊状態〘深化〙が発現しました』

 

『レアエネミー【追憶の騎士】が【縋り憑く深淵(ネヴァーファインド)】への形態変化を開始』

 

『成功しました』

 

『あなたは深化MOBと敵対しています』

 

『ワールドシナリオAS【異端】が進行します』



「─────構えろ、第4ラウンドだ。」

縋り憑く深淵君のイメージは深淵歩き君です。

深淵懐いですね、ようやく再登場しました

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― 新着の感想 ―
[一言] Uは深化の磁石か何かかな?
[良い点] これで斧ってまじか…
[良い点] アルトリウスー! カッコ良過ぎる 神化よりも深化の方が幅が広いイメージがある
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