#33 バンカー大迷宮攻略レイドpart5 複眼いくら丼とかいう普通にグロい概念。
こっから楽しくなります。
そいや10万文字超えた。
「いい景色だぁね。」
空を泳ぐ魚やイソギンチャクのような何か、珊瑚礁だったり深海魚だったりが同居するなんとも不思議な景色を見ながらそう零す。
行動方針は決まった。
でもトレジャーハントと言っても、適当にほっつき歩いてたら見つかるほど甘くは無いだろう。
それにせっかく別行動するのだから、ほかのプレイヤーがいるとやりにくい案件の手がかりも欲しい。「外の鍵」もそうだし、1層にいた変な蛇のこともそうだ。
その為にも……このフロアの地理を知ろう。
そう考えた俺は、付近にあった高標高オブジェクトに乗り、辺りを見渡していた。
2層に入ってそうすること約10分、色々と観察して階層に対しての理解が割と深まった。
まず大前提としてやはりここは海のようだ。空を泳ぐ魚と言ったが、これは海を泳ぐ魚であっておかしいのは俺らしい。その根拠としてだが、普通に歩いていると時々「行動制限」があった。おそらく海流か何かで一時的に身動きが取りにくくなったと考えれば辻褄が合う。
生態についてはほぼほぼ不明だが、なんというか……寄せ集め的な感覚がある。この空間、同じ海の中に深海の生態系もあれば熱帯魚がいることもあるし、冷たい海に住む生き物もいる。
魚博物館を同じ水槽でやっているのだろうか?と思うくらいに多様な……多様すぎる種。
まぁこれはゲームだから仕方ないのだろう。現実的に考えれば超絶おかしいけどな。
そして地理についてだが、このフロアは地理的に大きく2つに分けられる。1つは浅瀬、もう1つは深海だ。そんなに広くは無い───少なくとも両サイドの水平線には収まる広さなのによくそんなに分布出来るな……。
右上は浅瀬でおそらく淡水魚が生息しているパート。右下は冷海で左上は熱帯。そして左下が深海と言った具合だ。
まぁマップに関してはそれくらいで良いだろう。本題は宝探しだ。宝探しと言われれば定番の定番。海の中のお宝と言えば───
「───やっぱ難破船だよねぇ……」
俺から見て……というより第1層からの通路側から見て右下、冷たい海の生物が生息するそこに遠くからでもデカイと分かる規模の沈没船があるのが見える。
まぁ、行くっきゃねぇわな。
そう決めた俺は、乗っていたところから飛び降り右上へ駆け出していく。
◇
うーん、もしかして思ったより狭い?このフロア。
1層出口近くのオブジェクトから走り出したは良いのだが、思ったより早く着いてしまい、そのような感想が出てくる。
ある意味真実であるその感想を胸に抱えながら上を見上げるのだが、見えるのは船の壁だけ。
豪華客船位のサイズの沈没船がズンと地面に刺さっているのを見ながら佇んでいるのだが、そんな俺にはひとつ大きな問題が立ちはだかっていた。
「デカすぎて入れねぇ」
ということである。
普通沈没船なら船底にどデカい穴でもあいていると思ったのだが、何故かこの船は穴が空いてない。そしたら上から入るしかないのだが、いかんせん高すぎて『跳躍』でも入れないのだ。
なにか使えるものは無いかと当たりを見渡すも───そこにあるのは地面の砂に海藻やデカイモンスターしか…………
あ?
デカイモンスター……あれ、シャコか?薄いガラスなら割り、指を殴れば爪を割り骨を折るとかいう最強生物……?
遠くから見ても視認できる大きさのそれは、おそらくトラック程の大きさがあるだろう。それならば、沈没船の底をかち割って入れるんじゃね。
………………………………………………。
うん!トレインをしよう!!
行き詰まった場合の最適解は、大抵『パワーによるゴリ押し』であるのだが、自分のパワーが足りない時はどうするか。
ほかから借りてこればいいよね、という話だ。
おおよその距離はだいぶ遠いが、コツコツ移動させれば何とかなるだろう、と近づいて行く。
シャコを使って穴を開けたら再び遠くに離して、スキルを使って離脱すれば漁り放題だな。
そんな皮算用を脳内でしながらも歩いていく。
正直、この時俺は海を舐めていた。
だが直ぐに俺は、大いなる海を甘く見てはいけないと思い知らされることになった。
─────────ぐるり
お、この距離でも見つかるんだな……程度の感想。そして数秒後、その感想は驚愕へ変わる。
「うぇっ!?お前速っ!、キモぉ!」
俺を視認し、こちらを向くと想像以上のスピードで空中を低空飛行で向かってくる。
エビとダンゴムシを足して2で割ったようなフォルムをしているのに何処からそのスピードが出るの!??と疑問が浮かぶも直ぐにそんな余裕はなくなる。
200mほどあった距離を数秒で詰め──────……接敵!
こちらに向かってきて距離を詰めた勢いをそのまま流用した、突進のような攻撃を右に跳んでよける。
「1回撒くか。…………ッ!?そんな動き出来んのオマエ!?」
右によけ、そのまま1度進行方向を逆に行くことで瞬時に距離を離し、1度撒いてしまおうと画策するのだが──────
シャコはそれを許さなかった。
あまりの勢いを制御しきれずにそのまま直進してしまうだろうと思ったが、そのフォルムからは想像が出来ないような動きでUターンし追尾する。
その大きさからは予想できない、あまりに綺麗な小回りが出てきて思わず驚愕の声が漏れてしまった。
甲殻類の固そうな見た目のせいで小回りが出来ないと勘違いした彼だが、実はシャコは高い遊泳能力をもつ甲殻類ピカイチの速度を持っているのだ。
その秘密は構造にある。
「あぁそうだ忘れてた!シャコには遊泳脚あるのか!」
遊泳脚───蟹の1部などによく見られる、泳ぐための平べったい足である。シャコや蟹は、水をより効率的に蹴ることが出来るオールのようなそれを使って直進及び回転などを行う。
まさかそこまで精巧に造られてるのか、と若干NEOの完成度に呆れるが、そんな暇は無い。
ちっ
少しターンで手間取ったものの、圧倒的スピードを持って再び接近してくるシャコに思わず舌打ちしてしまう。
息を着く間もないな、と思いながらも策を模索していく。
海の中で海の生物が、陸の生き物:俺よりも速いのはある意味自明だ。
このままではジリ貧。距離が段々とつまり、追いつかれるまであと数秒。
このままでは仕方無いので、1度アクションを挟んで状況を動かすしかない。そう考えた俺が一目散に向かうのは、そばにあった縦長の岩。
「しゃァオラッッ!!!」
『跳躍』発動。
走りながら後ろに転ぶように地面を蹴り、バク転のような形で宙に浮く。足を岩側に向けて斜め前に飛びながら、その途中で石を思いっきり蹴り──────
──────シュパァン!!!!
「…………は?」
岩を蹴りシャコと真逆の方向に跳んで離脱するも、途中で下からの力が加えられて更に大幅に飛ぶ。そんな予想外の衝撃にジャンプの軌道計算が狂い、足から着地出来ずに落下ダメージを受ける。
五体投地的な動きで再び走りながらも後ろを見ると、下側が吹き飛んで消えた岩が落ちていくのを背景に再びこちらへ向き直るシャコと目が合う。
「いろいろキモすぎだよクソがッ!!」
コンマ数秒の差で避けることが出来たものの、あまりの速度と威力に悪態をつく。
シャコと言えばなにか。
そう聞かれれば10人のうち9人はその驚異的なパンチ力を挙げるだろう。
そしてたった今その代名詞たるパンチが炸裂したわけだが。
想像以上にヤバすぎた、というのが正直なところ。
視認は困難、予備動作ほぼ無、岩が消し飛ぶ威力に衝撃波を生むほどのスピード。
一言で言えば無理ゲーである。
威力はまだいい、避けれれば問題では無いのだし。だが速度、てめぇは駄目だ。海中だから空気中よりまだマシとはいえ、人1人を吹き飛ばすほどの衝撃波が生まれるほどのスピードとか、相当頑張らないと避けれない。
そして俺はそれを避けて沈没船に穴を開けなければならないのだ。
根本的な目標を見失ってはならない。
つまりどう転んでも1回は避けねばならない。まァキツイわ。
ちょくちょく後ろを確認しながらも全力疾走を続ける。『跳躍』を上手く使って走っているので、割と距離は保てたままだ。
その距離が取れたお陰で、再びここに戻ってくる。
「よォシャコ、おかえり!急だけどボクシングしようぜ。俺はボクサー、お前はサンドバッグな。その複眼でいくら丼作ってやるよ。」
難破船を背に、追いついてきたシャコに向けてそう言い放った。
…………複眼いくら丼は普通にグロいわ。おえっ
最悪です。主人公がキモイ料理思いついたせいで気分が悪くなりました。そんなものはゲテモノ専にでも任せておけと何度も……。
『環境制魚:殺滅』
実はあのサメですが、リアルな生き物ではありません。ガワは生きていますが、脳と目はパチモンです。とある基準に基づいて、改造された目により脅威度を判断していて、それを上回る生物だったりプレイヤーだったりを駆逐します。笑い上戸姉貴が食われたのはそれに引っかかったからで、ユウが食われなかったのは脅威度判別が出来なかったから。
元々は……というか今もですが、このサメは「環境と生態系を保全する」というモットーにのみ基づいて動いています。外来種であったり不純物であったり、あるいは強くなりすぎた従来種を取り除く役目をしています。だからこその「環境制魚(御)」です。




