104 - 「疑いの眼」
(悪いことしたかな…… いや、門前払いしようとしたあいつらが悪いよな。うん、そうだ。そう思うことにしよう)
城門は、真紅の亜竜の咆哮がきっかけで簡単に開いた。
勿論、俺を締め出そうとした門番には「竜の背に乗って城壁を飛び越え、そっち側に行ってもいいんだぞ?」 と一言脅しはしたが……
(普通に考えれば、ガルに城門なんて意味ないことくらい分かりそうなもんだけど…… ああ、もしかしてこれが民度というやつなのか…… そういえば学校みたいな施設なかった気がするし。俺が国を持つ日がきたら、教育改革は必須だな。文化水準はやっぱり高めないと駄目だわ)
そんな妄想をしながら街中を歩くと、街の人が怯えたように道を開けた。
「大丈夫ですよー。このワイバ…… ドラゴンは俺の命令には絶対です。優しく接すれば危害は加えません」
マサトが警戒を解こうと言葉を投げかけても、街の人達の反応は変わらなかった。
(何か変だな…… まぁいいか)
マサトの隣を真紅の亜竜が歩き、その後ろを礼拝堂の癒し手の4人、熟練の薬学者の2人、最後に戦場の癒し手の1人が列を成して歩いている。
すると、目の前から兵士の集団が駆け寄ってくるのが見えた。
マサトが身構えると、そのマサトに呼応するかのように、真紅の亜竜も両翼を広げ、威嚇の体勢に入る。
真紅の亜竜の迫力に、前列の兵士がか細い悲鳴をあげて、たたらを踏んだ。
「ま、待ってください! 私達は味方です!」
「そ、そうです! 私達は、ボンボに従う私兵を捕えにきました!」
「あなたは街を救ってくれた恩人です! ボンボはあなたを疑っていましたが、俺達は違います!」
「ど、どうか信じてください!」
状況がすぐ飲み込めず、つい真紅の亜竜の方を見てしまう。
見られた真紅の亜竜も頭上に?マークが浮かんでいるようだった。首を傾げている風貌が少し可愛い。見た目は凶悪だけども。
「う、うん? ああ、そっか。ボンボがなんか絡んでるってことは…… 何と無くイメージできてきた。そっかそっか、悪い。いきなり集団で迫ってきたんで、ちょっと警戒した。ガル、もういいよ」
真紅の亜竜が両翼を畳み、ブフンッと口から火息を吐いた。
それを「もう驚かさないでよね!」と脳内アフレコすると、ギロリと視線で咎められる。
(まさかガルまで俺の心読めるのか? マジ? いや、そんな…… えっ? マジ?)
真紅の亜竜とマサトが、どうでもいい内容でアイコンタクトを飛ばし合う。
それを見た兵士達は、何故か一様にホッとした表情を浮かべると、各々が移動を再開した。
大半の兵士は、マサトの横を通り過ぎて城門まで向かったが、そのうちの数名が、護衛兼案内役として屋敷まで同行することになった。
道中、マサトが不在の時に何が起きたのか、一部始終を共有してもらう。
「……と、いうことがありました」
「自ら死地まで援軍に来た女王に対して、謝罪と賠償要求って…… どこの世界でも似たようなことをする奴らはいるんだなぁ…… 絶対君主制みたいなこの国で、そんな奴らがいるのは意外だけど」
すると、その言葉を礼拝堂の癒し手の一人である、薄卵色のゆるふわヘアーが特徴的なクララが、話に割って入ってきた。
「マサト様がお住いだった世界も、同じような方がいらっしゃったのですか?」
「うーん、まぁ、似たような人達は居たね。そういう人達が得するような世界だった気もする」
「それはさぞお辛かったことでしょう。私達でよければ、いつでもお側にお呼びください。マサト様をお慰めするのも私達の役得…… いえ、使命でもあります」
「……え? あ、うん…… ん?」
聞き間違い、あるいは解釈が間違ったのかと思い、動揺しながらも他の三人にも視線を向ける。
すると、カルメは色っぽい表情でこちらへウインクを飛ばし、キュリは満面の笑みでこちらを見てニカッと笑った。
そしてシエナは、頬をほんのり赤く染めながら、横目でチラッとこちらを盗み見ていた。
(ええ? 礼拝堂の癒し手って、そっちの癒しもありなの!? えっ!? 何!? 冗談!? 本当!? ど、どっちだ!? くっ…… だ、駄目だ。判断できん…… 解釈間違ったら酷い事になるし、これは聞かなかったことにしよう…… うん、そうしよう……)
女性陣からの意外なアプローチに、妄想がいらぬ方向へ脱線しかけたマサトは、忘れろ忘れろと煩悩を振り払うように頭を振った。
そのまま歩くこと数分。
屋敷へと向かう途中で、トレンと合流した。
何もなかったか?と心配されたので、特に何もなかったと答えておいた。
それよりも、日に日に深くなるトレンの目の隈の方が心配だ。
ただでさえ体調悪そうな顔付きなのに、今では病人の域に達している。
「そっちは何かあった? 顔色がやばいくらい悪いけど……」
「色々、あった。だが、その話は後にしよう。一度、竜語り全員で話し合いをした方が良さそうだ。時間はあるんだろ?」
「大丈夫。むしろ丁度いいかな。新しい仲間の紹介もしようと思ってたし」
「それなら良かった。今は女王陛下がこの街に居るからいいが…… 居なくなったら治安も悪化するだろう。その前に、竜語りとしてどう行動するのか、クラン方針を決めておきたい」
「そういうことか。了解」
俺の返事にトレンが頷く。その後、トレンは周囲を見渡すと、家の脇に隠れて怯えていたマーチェを引っ張り出した。
「マーチェ! いつまで隠れてんだ! 来い! ほら、いい加減慣れろ!」
すると、真紅の亜竜の前へ突き出した。
「ひぃやぁっ!?」
目尻に涙を浮かべて悲鳴をあげるマーチェ。
一度、昨日の夜に軽く挨拶は済ませてあるので、これで二度目の対面だ。
初対面のときは、号泣されながら拝み倒されたので、強く印象に残っている。
……うん、弄られ体質の明るい子だとは思う。
そんな二人を連れて屋敷まで向かうと、屋敷の入口でヴィクトルとソフィーが待っていた。
「来たか」
「ヴィクトルもいるってことは、街全体に関わることか」
「そうだ。女王陛下が屋敷の応接間でお待ちだ。早く行くぞ」
「はいよ…… って、だからそれ俺の屋敷なんだけど…… 屋敷の所有権を持ってるっていう感じが全くしないのは何故だ」
マサトが一人ブツブツと不満を零しながらも、フロンの待つ応接間へ皆で移動する。
勿論、トレンとマーチェも一緒だ。
まぁ自分達のクラン拠点なのだから当たり前だが。
応接間には、各部屋から椅子が持ち込まれ、円卓を囲うように等間隔で配置されていた。
正面中央の奥には、アローガンス王国の女王であるフロンが座っており、その後ろに近衛騎士団の団長オーリア、お目付役でもあり、フロンの侍女でもあるレティセが立っている。
そして、フロンの左手側には、立派な口髭を蓄えた筋骨隆々のおっさんが座っていた。
「遅かったわね」
開口一番、女王であるフロンが不満を露わにした。
(気の強そうな女王様だ。面倒なことはだけはどうかご勘弁……)
「申し訳ありません。外で竜語りのクランリーダー、マサトの到着を待っておりました」
ヴィクトルがそう返すと、フロンへ軽く頭を下げた。
ソフィーはそっぽを向いている。
(おいおい…… 女王相手にその態度いいのかよ。仮にもあんたこの世界の住人だろ。そして冒険者ギルドのサブマスターでしょうに…… 立場とか関係ないんかね? この世界は。もしくは、元々性格がぶっ飛んでるだけとか。まぁ透明になってストーカーしてくる人だしなぁ……)
マサトがソフィーを心の中で酷評していると、フロンは気にする様子もなく言葉を繋げた。
「いいわ。早く会議を始めましょう。立ってないで座ったら?」
「はい、失礼します」
ヴィクトルとソフィーが、フロンの右側の席へ座る。
(あれでいいのか。案外、この世界の女王って、それ程厳粛な感じじゃないのかな? それならいいけど)
すると、フロンが俺に視線を向けてきた。
だが、黙ったままで何も話そうとしない。
(これは…… 俺が先に名乗るのを待っている? でも、この世界の礼の作法なんぞ分からんぞ…… うーん、まぁそれっぽい感じでいいか……)
片膝を折る。
所謂、騎士が忠誠を誓うときのイメージ――左膝をたて、右膝を地面へつけたポーズだ。
一応、右手も胸に当てておく。
視線は失礼にならないよう軽く伏せ気味に。
「女王陛下、初めまして。竜語りのリーダー、マサトと言います。お待たせしてしまったようで、大変申し訳ありません」
マサトが頭を下げながらそう答えると、フロンは目を見開いて驚いた。
「い、いいのよ。謝罪はいらないわ。あなたが遅くなったことを咎めている訳じゃないもの」
フロンが少しあたふたしながら返答すると、レティセが「姫様」と小声で指摘したのが微かに聞こえた。
「こほん」と、分かりやすい咳払いで仕切り直そうとするフロン。
「私はフロン。フログガーデン大陸の北部、王国アローガンスを統治する女王よ。でも下手な口上はいらないわ。楽にして頂戴」
「はい、助かります。ですが、その前に……」
俺が立ち上がると、フロンは再び警戒したのか、力強い眼差しでこちらを見返した。
「何かしら」
「ローズヘイムには、治療を受けれずに苦しむ人々がまだ多く存在します。その人々のために、ベテランの癒し手を数人連れてきました。なので、先にこの者達へ、街の住人に対して治療を行う指示を出してもいいでしょうか?」
俺の言葉を受け、軽く息を飲むフロン。
(何だろ…… 時々あるこの微妙な間と反応は……)
マサトが少し怪訝な表情をすると、再び背後に立っていたレティセが「姫様」と発言し、それを受けたフロンが小さく息を吐いた。
「え、ええ。問題ないわ」
「では……」
俺は背後に立っていたトレンと、癒し手達に、それぞれ指示を与えた。
まず、戦場の癒し手と礼拝堂の癒し手の五人には、屋敷に残っている怪我人の治療に専念してもらう。
一人を徹底的に治療するのではなく、広く浅く治療をするようにと彼らには説明してある。
まずは、全員に治療が行き渡ることを優先する。まぁ彼らなら問題ないだろう。
そして、熟練の薬学者の二人には、屋敷の地下室を与えて、自由に回復薬の研究をさせる。
すぐに成果を上げられなくても、長期的に見たらかなりのアドバンテージになるはずだ。新薬の開発もどんどんさせようと思う。
屋敷の案内役はマーチェに頼んだ。
「は、は、はぃぃいい! い、命に代えてもか、必ず役目を果たしますぅうう!!」
「お、おぅ…… よ、よろしく」
(このマーチェの異常な反応…… どうにかならないのだろうか……)
チラッとトレンを見たが、トレンはトレンで額に手を当て、「駄目だこいつ」と呟いていた。
「トレンさん、彼らが必要とする物資は最大限工面して欲しい」
「ああ、分かった。マーチェ、資金箱は “三番” まで使っていい」
「あたいにお任せあれぇええ!!」
張り切り過ぎたマーチェが、癒し手達を連れて応接間から退出する。
それを見届けた俺とトレンは、同時に溜息をつくと、円卓の椅子にそれぞれ腰掛けた。
俺はフロンと正面の席に、トレンは俺の右手――口髭のおっさん側に。
すると、トレンがそのおっさんへ手を挙げ、軽い挨拶を交わした。
「どうも、商人組合長」
「坊主とは毎日顔を合わせてる気がするぞ? 毎回場所は違うがな!ドゥワッハッハ!」
商人組合長と呼ばれた男は、上体を反らしながら豪快に笑うと、その筋肉の盛り上がった太くて短い腕を伸ばし、バシバシとトレンの肩を叩いた。
「ぐっ…… 商人組合長、相変わらずの馬鹿力で、すね。い、いだっ! 痛いので止めてください!」
「ドゥワッハッハッハ! もうちっと鍛えたらどうだ? そんな軟弱な身体じゃ、鉄の一つも満足に打てんぞ?」
「いえ…… 何度も言ってますが、おれは商人なので鉄は打ちません」
(あのおっさん…… まさかドワーフ?)
マサトの視線に気が付いた商人組合長は、一度「ごぉほん!」と大きく咳払いすると、姿勢を正して自己紹介を始めた。
「マサト殿、ワシはドワンゴだ。ローズヘイムの商人ギルドで、商人組合長をしておる。宜しく頼む」
「ご丁寧にどうも、竜語りのクランリーダーやってます。マサトです」
「ドゥワッハッハ! 知っておる!」
マサトがトレンへと小声で尋ねた。
「ドワンゴさんって、もしかしてドワーフ?」
「そう。ドワーフだ。大酒飲みで、鍛冶に煩いむさ苦しい種族」
「ドゥワッハッハ! 軟弱な人族に言われたところで、痛くも痒くもないわい!」
(そういや、冒険者ギルドの冒険者組合長――ヴィクトルはエルフで、商人ギルドの商人組合長――ドワンゴはドワーフか。アローガンスって亜人に排他的じゃなかったの? 亜人にエルフやドワーフって入らないのか? よく分からんな……)
ドワンゴは場の空気を読まず、尚もマサトへ話し掛けた。
「話し合いをする前に、一つはっきりさせておきたいことがある」
「はい、何でしょう?」
「土蛙人が大量に死ぬことを見越して、数日前に触媒剤と精霊水を買い占めようとしたのは、マサト殿の考えか?」
ドワンゴが、探るような眼つきでマサトを見据える。
そしてドワンゴの発言に、ヴィクトルが「何?」と反応した。
すかさずトレンが反論する。
「違う。ボスはあの件には関与していない。あれはおれの独断で動いた。しかし、何故それを?」
「ドゥワッハッハ! 商業系ギルドのトップである商人組合長を舐めてもらっちゃ困る。坊主の動きなんぞ、物の動きに目を配っておれば一目瞭然。まっ、坊主のことだ、また何か儲け話だろうと思ってな。今回は便乗させてもらったがな。お陰でかなりの儲けになりそうだわい! ドゥワッハッハ!」
「まさか…… 想定の5割も買い占めできなかったのは、商人組合長のせいか!」
「ドゥワッハッハ!」
豪快に笑うドワンゴに、苦虫を噛み潰したような表情のトレン。
そこへヴィクトルが口を挟んだ。
「その話が本当なら、竜語りは、事前に土蛙人が攻めてくることを予知していたことになるが…… その報告を聞いた覚えはないぞ?」
ヴィクトルが鋭い眼つきで、マサトとトレンを睨む。
だが、ヴィクトルの問い掛けには、ドワンゴが先に答えた。
「ヴィクトルよ、それは誤解だ。買い占めが行われたのは、土蛙人がロサの村を襲撃した後だ。つまりは、こいつらは土蛙人が攻めてきた直後、土蛙人がローズヘイムとの戦争で大量に死ぬことに賭けて動いたに過ぎん。勿論、ローズヘイム側の勝利を前提にな」
「……大量とは、どのくらいだ?」
「そうだな。買い占めても尚儲けが出るとなると、最低でも2000は土蛙人の死体が必要だろう。だが、全ての土蛙人から魔結石が取れるとも限らんからな、確実に儲けるには倍の4000は欲しい」
「4000の土蛙人の死体……」
ヴィクトルの眼つきが更に厳しくなる。
だが、ドワンゴは気にせず続けた。
「そうだわい。そして今回の戦争で出た土蛙人の死体は、およそ1万5000程度。まぁ2〜3割は原型を留めていなかったがな。それでも即剥ぎ取りを開始したことが幸いして、大半の土蛙人からは魔結石が採取できた。そうだな? ヴィクトル」
「そうだ」
「ドゥワッハッハ! ここまで坊主の予想が的中するというのも、不思議な話だわい! なぁマサト殿」
ドワンゴとヴィクトルが、マサトへ鋭い視線をぶつけた。
その眼は、明らかに「お前が全て仕組んだことじゃないだろうな?」と疑った視線だった。
その二人の視線を受けたマサトはというと――
「へぇー、それを的中させたトレンさんって凄い優秀じゃないですか。凄いな。俺でも土蛙人の先の動きは読めなかったのに…… 」
疑われていることに気が付いていなかった。
「ドゥワッハッハ! とんだ策士だわい! 全く読めん!」
「…………」
ドワンゴは豪快に笑い飛ばしたが、ヴィクトルは依然として疑いの眼でマサトを見つめていた。
すると、痺れを切らしたフロンが話に割って入った。
「もう話は済んだかしら?」
「おお、これはすまん!」
「女王陛下、失礼いたしました。お許しを」
女王陛下のいる場で、女王陛下を置き去りにして話を進めたことを詫びる二人。
その二人が素直に頭を下げたことで、フロンは彼らをさして咎めることはしなかった。
「分かればいいわ」
胸を反らしながら、鷹揚に頷くフロン。
少しの間をあけて、議題を話し始める。
「既に気付いているかもしれないけど、集まってもらったのは、ローズヘイムにとって、とても重要なことを話し合うためよ」
皆の視線が、フロンへと集まる。
「ローズヘイムの領主、ティー・ローズ公爵は死に、その跡取りは大罪を犯して今は牢屋にいるわ」
その事実に、皆が頷いた。
「つまり、今のローズヘイムには領主がいないの。その跡取りもね。なので、私はここで臨時の領主を決めようと思います」
フロンのその言葉に、ヴィクトルとドワンゴ、それにトレンが目を見開いて驚いた。
「……いいのですか? この街には、まだ他にも貴族の方々がいたはずですが……」
「奴ら、自分達抜きで重要な決議を進められたと知れば、後から小煩く騒ぎ出すぞ?」
ヴィクトルとドワンゴが続けて意見を述べようとしたが、フロンは手でそれを制した。
「先の窮地に、貴族本来の役目を忘れ、自身の保身に走った貴族なんて…… 不要な存在よ。気にする必要はないわ」
女王陛下にそこまで言われてしまっては、そういう訳にはいかないと言えず、ヴィクトルとドワンゴは二人で困惑した。
フロンは気にした様子もなく、視線をマサトへと向けると、予め用意していた言葉を投げかけた。
「竜語りのマサト。あなたに此度の褒賞として、ローズヘイムの領地を貸し与えます。いきなり公爵位は無理だけど、男爵位までなら何とかするわ。だから、これからは男爵を名乗りなさい」
ヴィクトル、ドワンゴ、トレンが驚愕の表情でマサトを見る。
だが、その申し出の価値の有り難みを知らないマサトは、周囲の期待とは正反対の答えを口にした。
「……え? い、いや。別にいらない、です」
ヴィクトル、ドワンゴ、トレンがマサトの返答に更に驚くと、視線をすぐさまマサトと、反対側へ座るフロンへと向けた。
「な、な、な……」
そこには、想定外の出来事に、片目を激しく痙攣させながら青筋を浮かべたフロンと、瞳を全開に見開いた状態で固まるレティセ、それと、マサトを食い殺さんばかりの般若の形相で、鋭く睨み付けるオーリアの姿があった。





