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ようこそ、最前線の地獄(職場)へ。 私、リナ8歳です ~軍師は囁き、世界は躍りだす~  作者: 輝夜
第十一章:『一年という名の礎』

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北の風聞 IV:『狼煙の行方』 276.7

 

 昼下がりの穏やかな陽光を切り裂き、複数の馬蹄の音が乾いた大地を叩いた。

 野営地に再びクルガンの使者が現れた。今度は屈強な騎馬隊を伴い、その態度は前回とは比較にならないほど傲岸不遜だった。


「今後1か月の内に再び帝国へ侵攻せよ。従わねば、部族ごと根絶やしにする」


 使者が吐き捨てた言葉が、族長のゲルの中に氷のように響き渡る。

 ゲルの中は重い沈黙に包まれた。クルガンに従えば帝国の刃が、逆らえばクルガンの牙が待っている。進むも退くも地獄。長老たちの顔に、深い絶望の色が浮かんだ。


 その夜、再び長老たちが集うゲルの中は、揺れる焚火の炎だけが頼りだった。

 バラクは、集まった者たちを前に、初めて全てを打ち明けた。軍師との密約、交易の約束、そしてクルガンを打倒し、北方諸族に真の平和を取り戻すという壮大な計画を。

 長老たちは驚愕し、激論が交わされる。「帝国の力を借りるなど、先祖への裏切りだ!」「しかし、このままでは我らは滅びる!」ゲルの中は怒号と嘆きで揺れた。


 その喧騒の中、バラクは静かに、しかし力強く語った。

「我らが守るべきは過去の誇りか、それとも今を生きる民の命か。俺は、後者を選ぶ」


 夜明け前、バラクの決断は、一夜にして部族の総意となっていた。長老たちも腹をくくり、一枚岩となって族長を支えることを誓う。野営地の空気が、絶望から覚悟へと変わっていた。

 バラクはクルガンへの遅延工作を継続しつつ、水面下で動き出す。彼はまず、信頼できる側近のアランを呼び、極秘の任務を与えた。


「アラン、お前は腕利きの者を数名連れ、東の『赤土の民』と西の『黒森の民』の元へ向かえ」

 バラクは二つの革袋をアランに手渡す。一つには『星影草』、もう一つには帝国から得たばかりの良質な塩と鉄塊が入っていた。

「これを彼らの族長に渡せ。ただし、決して帝国からもたらされたものとは明かすな。『これは我ら“風読む民”が、南の新たな交易路で見出したものだ』とだけ告げるのだ」


 アランは、その意図を悟り息を呑んだ。


「そして、見返りを求めよ。彼らが最も得意とする馬と、冬を越すための毛皮をな。これは施しではない。対等な『取引』だ」


 それは、天翼の軍師がバラクに持ちかけたのと同じ手法。バラクは軍師の知略を自らの武器として、今まさに使おうとしていた。これにより彼は、知らず知らずのうちに他の二部族を帝国の経済圏に組み込み、自らがその連合の中心となる布石を打ったのだ。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 いよいよ待ったなしの対帝国への吶喊恫喝!!<`ヘ´> リナの打った布石がバラクの手を経て対グルガン同盟に進展するのか? 腹を括った長老たちに敬意を!! 次回も楽しみにしています…
 輝夜さん、こんにちは。 「ようこそ、最前線の地獄(職場)へ。 私、リナ8歳です 北の風聞 IV:『狼煙の行方』 276.7」拝読致しました。  クルガンの使者登場。おまえら、いつまでサボってるんだ…
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