小さい方はシルが見かける前に逃がしてあげよう。
寮で1人落ち込んでいると、授業が終わったのかシルが帰ってきた。
「どうしたの?」
ボクを見て、すぐ声をかけてくれる辺りシルはとても優しい。
今日あったことを話すと、一言。
「そう、大変だったわね」
そう言って抱きしめてくれた。
ぐすん。
今日はわけもわからないまま襲われて、わけもわからないうちに助けられたので、頭の整理がおいついていなかったのだろう。
シルにそう言われたら少し泣いてしまった。
最近ボク泣きすぎじゃん。そんな涙もろくなんてなかったのに。
「こう言ってしまうのもなんですけど、よかったわね」
「え?」
「屋内でなかったのなら、もしかしたら今ここにレティはいなかったかもしれないわ。身なりは良く見えるでしょうから、誘拐されてもすぐに殺されたりはしないでしょうけど、貴女が平民だってわかってしまったら多分……」
もしかしたら帰ってこられなかったかもしれないのか。
「それに、恐怖を知識で知っているのと、体験しているのとでは天と地ほどの差があるのよ。比較的安全な場所で、怖さを体験できたのはいいことよ」
そう言いながらシルの顔が青ざめていく。何かの記憶がフラッシュバックしているのだろうか。
「シルもそんな体験したことあるの?」
「うっ、聞いちゃうの……? 私の家は子供のうちに恐怖を教えるために、わざわざそういう死地に子供を送り出すのよ……。信じられる?私まだ6歳の時だったのよ。おかげでトラウマよ。とにかく私に蜘蛛を見せるのはお勧めしないわ。自分でもわけがわからないくらい発狂するから」
シルが発狂してるとこなんて想像もつかないんだけど……。
「ま、後に聞いたところによれば?本当に危なくなったら控えの者が助けてくれる手筈だったらしいのだけど。ほんと最悪よね」
シルは大型蜘蛛種のモンスターの巣にでも放り投げられたのだろうか? 自分よりも大きい何かを想像しているのか、上を見上げたまま青ざめている。
さすがに、顔が真っ青すぎてこれ以上は聞けなかった。
シルが話したくもないであろう共感体験談を語ってくれたりしたことで、落ち着いたボクは今日の出来事が悪いことだけじゃなかったんだと思えるようになった。
冒険者ギルドに入っていきなりからまれて、イケメン紳士様に助けてもらえるなんて。
……ん?
冒険者ギルドで絡まれて?
異性に助けられて?
パーティを組む?
あれ? これ、もしかしてグリエンタールのフラグ? 確か男キャラのイベントで、ギルドで絡まれてる女の子を助けて仲良くなるイベントあったな……。
あ、フラグじゃん……
ああああ! もう!! 叫びたい!!!!
確かにかなりべたな展開……
ってことは、アルト様は攻略対象ってこと?
まぁグリエンタールというゲームの特性上、“ボクの攻略対象”なのか“ボクが攻略対象”なのかはわからないけど。あと多分、フラ先生も攻略対象だ。どっちがどうなっても、禁断系なことには変わりないんだけどね……。さすがにそれは……ちょっと避けたい……かな。
確かに、今考えれば展開はべただったかもしれないけど、疑問に残ることもある。
それは、“グリエンタールのイベントに寄せられて絡まれた”のか、“絡まれたことをグリエンタールが都合よくイベント化してくれた”のか。ということ。
前者であればいい。自分のスキルのイベントなのだから、アルト様やフラ先生が助けに入ってくれるまでが組み込まれていただろうし。
でも後者であるならば自分のスキルに感謝しかない。だってボクの身に危険が及んだことで、周りの環境を都合よく書き換えてくれたのだから。
ただし、もし書き換える環境すらないのであれば、いくらどんなべた展開だろうがどうにもならないのだろう。危険なことは今後もしないに限る。
まぁ最初からボクはそのスタンスのつもりだったんだけどね。今後はもっと気をつけよう……。
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