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追放貴族の【土地鑑定】スキルで辺境開拓 ~役立たずと勘当された僕のスキルは、実は大地を創造する【神の視点】でした~  作者: かるたっくす
第4部

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第73話:眠れる少女


 ――ギィ……。


 白く輝く中枢制御室への扉が、数千年の時を超えてゆっくりとその重い口を開いた。

 扉の向こうから光が漏れてくる。

 それは地下農園の人工太陽のような力強い光ではない。もっと静かで澄み切った青白い光だった。


 僕たちはゴクリと息をのみ、顔を見合わせた。

 頷き合うと決意を固めて、その光の中へと足を踏み入れた。


 そこは完璧な円形の広大な部屋だった。


 その光景は僕たちの想像をまたしても遥かに超えていた。


「……これは……」


 壁という壁、天井という天井がすべて、黒曜石のように滑らかな黒いパネルで埋め尽くされていたのだ。

 そのパネルの一つ一つには僕たちの知らない複雑な紋様や文字のようなものが無数に刻み込まれている。

 しかしそのすべてが今は沈黙していた。

 まるで主を失い眠りについた巨大な機械の体内にいるかのようだった。


 その広大な部屋のちょうど中央。

 僕たちの視線は自然とその一点に吸い寄せられた。


 そこにそれは鎮座していた。


 高さが五メートルはあろうかという巨大な水晶の柱。

 その内部は空洞になっており、淡い青白い光を明滅させていた。

 それは祭壇のようでもあり、棺のようでもあった。


「……あの、中に……」


 ミリアがかすれた声を漏らした。

 その水晶の柱――カプセルの中に一人の少女が眠っていたのだ。


 僕たちはまるで神聖なものにでも触れるかのように、ゆっくりとそのカプセルへと近づいていった。


 カプセルの中で眠っていたのは息をのむほどに美しい少女だった。


 月光を溶かして紡いだかのような艶やかな銀色の髪。

 陶器のように滑らかで血の気のない白い肌。

 閉じられた瞼の下にはどれほど美しい瞳が隠されているのだろうか。


 彼女は胸の前でそっと手を組み、まるで何かを祈るかのように静かに眠りについていた。

 その姿はあまりにも完璧で神々しく、この世の者とは思えなかった。


「……人間……ではありませんね」


 リアムが恍惚とした、そして畏怖の念が入り混じった声で呟いた。


「エルフの最も古い伝承に記されています。古代文明がその技術の粋を集めて創り出したという最高傑作。『ガイノイド』……。神に最も近い存在。それは人間と寸分違わぬ姿をしていながら、人間を遥かに超越した知性と能力を持っていた、と……」


 ガイノイド。それが目の前で眠るこの少女の正体だというのか。


 僕がその神秘的な光景に見入っていた、その時だった。

 僕のスキルが強く反応したのだ。


 【土地の記憶】が僕に告げている。

 この遺跡全体を流れる膨大な魔力。その流れの中心。

 すべての源流が今、僕の目の前にあるこのカプセルなのだ、と。


 この遺跡はこの少女を中心に機能している。

 彼女こそがこの遺跡の心臓部なのだ。


 僕はまる何かに導かれるように、ゆっくりとそのカプセルへと手を伸ばしていた。


「リオさん……!?」


 ミリアの制止の声が聞こえる。

 けれど僕の身体は止まらなかった。


 僕の指先がカプセルの手前にある黒い制御盤にそっと触れた、その瞬間だった。


 ――パアアアアアアッ!


 部屋全体が目も開けていられないほどの強烈な光に包まれた。


「うわっ!?」

「きゃあ!」


 今まで沈黙を守っていた壁一面の黒いパネルが一斉に光を放ち始めたのだ。

 無数の紋様が凄まじい勢いで明滅を繰り返す。

 まるで眠っていた巨人が長い、長い眠りから目を覚ましたかのようだった。


 光の中心にあるカプセルが音もなく、静かにその上部をスライドさせていく。


 プシュー……という圧縮された空気が抜けるような微かな音と共に、カプセルが完全に開かれた。


 ゆっくりと、本当にゆっくりと、中の少女がその顔を上げた。


 閉じられていた瞼がふるりと震え、静かに開かれていく。


 現れた瞳は血のように赤い色をしていた。

 それは吸い込まれそうなほど美しく、そしてどんな感情も映し出してはいないガラス玉のような無機質な瞳だった。


 その無機質な瞳がまっすぐに僕を捉えた。

 やがて彼女の桜色の唇がかすかに動いた。


「――侵入者を、確認」


 鈴の鳴るような美しい声。

 しかしその声には一切の感情がこもってはいなかった。


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