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【電子書籍化決定】悪役令嬢はやられる前にやることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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やられる前にやるしかない~王太子~

 乙女ゲーム『恋のラビリンス』こと“恋ラビ”の一番人気の攻略対象と言えば、それはこの国の王太子エリック・ロシュ・ロマン。


 金髪碧眼の王道王子様の容姿に加え、文武両道、温厚篤実(おんこうとくじつ)。つまりは容姿も素晴らしく、頭も良くて、運動もでき、性格も温厚の完璧な王太子様だった。


 悪役令嬢カトリーナと違い、平民であろうと男爵令嬢であろうと、身分で差別するようなこともない。誰にも分け隔てなく挨拶をして、笑い掛けるから、既に学院でも大人気。


 ヒロインであるポメリアも王太子に懐いており、このまま彼を攻略する流れに入ると思われた。


(ケントをやるのに少し時間が掛け過ぎたわ。エリック王太子のことも、さくっとやってしまわないといけないわね)


 エリックは王太子であることから、その身を護衛する騎士がついているのだが、学園内まではさすがに引き連れていない。学園の敷地内は部外者が入れないようになっているし、許可のない武器の持ち込みは禁じられている。学院の教師から用務員に至るまで、身元調査はきっちり行われていた。


 ゆえに学院は安全地帯と考えられ、護衛をする近衛騎士は正門の守衛室でエリックが下校となるまで待機だった。


(つまりケント同様、エリックをやるなら、学院が一番)


 ということで巻き気味で動くことになったが、エリックを呼び出すことはいとも簡単に出来た。しかも今は使われておらず、物置のようになっている旧校舎のアトリウム。そんな場所に呼び出しても、エリックは何の疑問を挟むことなく、やって来てくれたのだ。


「ベヴァリッジ公爵令嬢……まさか君に呼び出されるとは、思いませんでしたよ」


 白シャツにピンク色のベストにグレーのジャケット、ズボンはグレーの生地にピンクのチェック柄という制服を完璧に着こなしたエリックは、驚いたという表情で微笑む。


「君だったら、わざわざ人気のない場所に呼び出し、告白なんて……する必要はないと思う。君の身分であれば、公爵系経由で王家に打診してくれれば、父上が……国王陛下がきちんと対処したと思うよ」


 そう言いながら、エリックは優雅な足取りでアトリウムの中へと入ってくる。


 今は使われていない旧校舎であるが、月に一度は清掃が行われていた。ゆえに広がる大理石の床は天窓の陽光を受け、淡く輝き、ゴミは落ちていない。中央には水を湛えた水盤が鎮座している。周囲には精緻な彫刻が施された柱が並び、壁を彩るのは秀麗なモザイク画だ。


「殿下。今回、告白のためにお呼びしたわけではないのです」

「……そうなのですか」

「はい」


 そこで私は柱のそばに置かれたソファに座るよう、促す。


 エリックは私が公爵令嬢であることから、すっかり油断していると思う。言われるままソファに腰を下ろした。


「我がベヴァリッジ公爵家と王家は遠縁の関係です。同い年ではありますが、同じ学院に通う殿下のこと、私は兄のように感じています」

「……!」

「兄……お慕いしている殿下のことは、つい目で追ってしまいます」


 そこで私は慈愛に満ちた笑みを浮かべる。


「殿下を見ていて、気づきました。殿下は容姿端麗、文武両道、温厚篤実で完璧な王太子であらせられます。それでも殿下は……十六歳。ここまで完璧であることは……本音の部分で疲れませんか?」


 私の言葉にエリックはハッとする。


 そう、そうなのだ。


 エリックは幼い頃より、完璧な王太子でいることを求められた。だが彼自身、己の身分がどんなものであるか分かる。彼自身も、完璧な王太子になること、それが当然であると思っていた。よって周囲の期待に応えようと、努力を惜しまない。その結果の今である。


 しかし常に一位をキープすることは、疲れるのだ。途中、息切れだってしそうになる。


 だが弱音を吐くなど、完璧な王太子がすることではない。


 人知れず疲弊しながら、それでも走ることがやめられない――それが現在のエリックの置かれている状況だった。


 ヒロインであるポメリアは、転移者であり、王太子相手でも物怖じしない。そしてエリックにこう告げるのだ。


「無理のし過ぎはよくありません。せめて私といる時は、肩の力を抜いてください。私といる時は、あくびだっておならだって歯ぎしりだって。何をしても構いません。完璧でいる必要はないんです。そういう安息地帯がないと、疲れてしまいます」


 まさにポメリアが言うセリフを私は目の前にいるエリックに告げた。その上で用意していたティーポットのハーブティーを、ティーカップに注ぐ。


「殿下、これはオリジナルブレンドのハーブティーです。鎮静効果のあるカモミールやレモンバーム、ラベンダーなどいくつものハーブをブレンドしてあります。今、このひと時。肩の力を抜くのに役立つと思いますが、いかがでしょうか? 毒味は……私自身が行います」


 そこで私は自身のティーカップのハーブティーを飲むふりをする。クスリ入りなので、本当にふりなのだが、エリックは……。


「ベヴァリッジ公爵令嬢! わたしの……誰にも明かしたことのない胸の内に気付いてくれた君を疑うつもりはありません。わたしにも飲ませてください、そのハーブティーを!」


 本来のエリックであれば、もっと警戒心があると思う。だが彼の弱さの暴露は、ゲーム内ではヒロインが放つ伝家の宝刀みたいなもの。これを口にした相手には、無条件で心を許す――そんな設定がゲームにあるのか。そんなふうに思えてしまうぐらい、エリックは私を全面的に信頼し、クスリ入りのハーブティーをごくごく飲んでくれる。しかも「お代わり」までして。


 背筋をピンと伸ばし、エリックはソファに座っているはずだった。


 だがハーブティーを立て続けに二杯飲むと、彼の碧眼はトロッと蕩けてきて、背もたれに身を預けている状態になっている。


(いい感じでクスリが効いているわね)


 私はしずしずとエリックの隣に腰掛ける。

 するとエリックはそのトロンとした瞳で私を見上げ……。そのまま私の腰に自身の腕を絡め、甘える子犬のように抱きついて来た。


(まったく、無防備ね。これから私にやられるというのに)


 こんなふうに甘えられると、こちらの気も緩みそうになる。

 だが、油断禁物。

 エリック王太子=断頭台なのだ。


 彼のサラサラのブロンドに指を忍ばせ、優しく撫でた。すっかりリラックスしているエリックは、私のお腹に鼻を摺り寄せるようにしている。


 だが次の瞬間。


「あっ……」


 乙女のような短い悲鳴を上げたのは、私ではなく、エリックだ。


「あっ、あっ、あっ……」


 エリックが無垢な少女のように声を漏らす。


 やられる前にやる。

 生き残るために。

 私はゆっくり手に力を込めた――。

お読みいただきありがとうございます!

粛々と進むわたしの計画……

次話はついに禁断の行動へ!?

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