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【電子書籍化決定】悪役令嬢はやられる前にやることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【第二⭐︎ラウンド】

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Dead or Alive(死ぬか生きるか)!?(12)

 失恋と同時に新しい恋を始める。


 そんなことは無理だ。


 カトリーナへの未練はたっぷりだったし、もう恋なんてしたくないという心境だった。それなのに縁談相手と会うなんて。


 正直、ツーリア侯爵令嬢は何も悪くない。


 だが最初から会うことが億劫であるし、これは分かりやすい政略結婚になると僕は思っていた。


「カッセル!」


 父親の声に僕は体がビクッと震える。


「眉間に皺を寄せるな。緊張しているのか」


 ツーリア侯爵令嬢を迎えるため、エントランスホールに両親と共にいた。


「緊張……はい、そうですね」


 緊張ではなく、普通に不快感が顔に出ていただけだったが、そんなことを父親が知ったら雷が落ちる。ゆえに緊張ということで誤魔化す。


「ツーリア侯爵夫妻並びにご令嬢がお乗りなった馬車は正門を通過しました」


 使用人の報告に両親がソファから立ち上がり、僕も重い腰を上げる。


 父親はグレーのセットアップで、母親はブロンズ色のデイドレス。僕はアンティークグリーンのスーツ姿でエンドラスまで出ることになった。


 すぐに馬車が目の前で止まり、ツーリア侯爵たちが降りるための準備が進められる。


 まず馬車から降りてきたのはツーリア侯爵夫人。僕の母親と同い年ぐらいのはずだが……。シルバーブロンドで色白の夫人は、ぽってりとした唇、そのそばにはほくろで、何ともセクシー。しかも若々しい。


 続いて下りてきたのが……。


「!」


 まだツーリア侯爵令嬢はデビュタントを迎えていない。ゆえに彼女の噂はほとんどないが……社交界デビューを果たしたら、間違いなく噂になるに違いない。


 そう、ツーリア侯爵令嬢は、カトリーナとはまた違うタイプの美少女だった。


 カトリーナは大輪のバラの花だが、ツーリア侯爵令嬢は凛とした一輪のユリの花のようだ。彼女の母親と同じシルバーブロンドであることからも、まさにユリのように見えた。瞳は美しい碧眼で、肌も雪のような白さで、ほっそりとしている。年齢より大人びて、可憐に見えた。


 思わず見惚れていると、「ブライト公爵、今日はお招きいただき、ありがとうございます」という野太い声が聞こえ、恰幅のいい髭の紳士が馬車から降りてきた。その姿はまさに造船業で成功したと言うに相応しい、海の男の風貌だ。


(というかこれはまさに美女と野獣……。ツーリア侯爵令嬢は完全に母親似だな)


「カッセル!」


 父親の押し殺した声に僕はツーリア侯爵に挨拶を行う。


「なんと、なんと。カッセル、君はなかなかの美男子じゃないか! スターシャと並んだらまさに美男美女だな? わしと母さんの美女と野獣とは大違いだ!」


 そこで「がははは」と笑うツーリア侯爵は何とも豪快で大らか。表裏がなさそうで人付き合いもよさそうだ。ついでに大酒飲みに見える。


 こうして挨拶が終わると、応接室へ移動し、そこでしばらく家族ぐるみでの会話となった。


 その際はツーリア侯爵はよく笑い、よく話し、その様子は見て聞いて気持ちいいもの。彼が事業で成功したのはその人柄のおかげもあるだろうと思えた。そして彼が話す間、ツーリア侯爵夫人と令嬢は、相槌を打ち、微笑し、まさに侯爵を立てているように思える。


(いい感じでバランスがとれた家族だな)


 しみじみ思っていると、両親とツーリア侯爵は隣室へ移動。僕はツーリア侯爵令嬢と二人きりで話すことになったのだ。


「お父様がおしゃべりで、驚きましたでしょう?」


 ツーリア侯爵令嬢は肩をすくめて僕を見る。


「楽しいトークでしたよ。商売をされているのですから、あれぐらい弁が立たないとやっていけないかと。しかもとても楽しい話でした」

「本当ですか? 造船に向いている木材のことを女性に例えたトークでしたのに!」

「そういう洒落のきいた話は、アルコールがある場であれば、なおのこと盛り上がったと思います。……まあ、僕たちにはまだ早く、刺激が少し強い話だったかもしれませんが」


 僕の言葉を聞いたツーリア侯爵令嬢は、しみじみとこんなふうに言う。


「私たちは元々王都ではなく、港町に近い場所で暮らしていたんです。王都へ越して来たのは一年前で……。そのせいでお父様は、潮臭い田舎者とか、海風を浴びると鼻毛が伸びるのかとか、言われたい放題でしたのよ」

「それは随分な言われようだ。でもそんなこと、気にする必要はないさ。どうせ負け犬の遠吠えみたいなもんだ。僕はツーリア侯爵の話はもっと聞きたいと思った」

「ありがとうございます。ブライト公爵令息が優しい方で良かったです」


 そこからお互いのことを打ち解けた状態で話すことになる。


 ツーリア侯爵令嬢は僕より一つ年下のはずだが、そうと思えない落ち着きぶりで、父親譲りでトークもとても面白かった。しかも彼女は僕に負けないぐらいの本の虫で、通常は令息が読むような本も読破していたのだ。


 つまりは話が合い、気づけば二時間が過ぎていた。


「ツーリア侯爵令嬢」

「はい」

「今度、よかったら一緒に本屋へ行きませんか?」

「! それはいいですわね! ぜひ行きたいです!」


 失恋と同時に新しい恋を始める――それは無理かもしれない。


 だが。


 失恋と同時に新しい恋が始まる――それは案外ありなのかもしれないと思うことになった。

お読みいただきありがとうございます!

当て馬令息カッセルにも幸せの兆し


帰宅したら続きを公開します~!


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