揚羽ルート4 冗談を言うのは命がけ
「えー、それでは第N回アームストロング大会の決勝を行います」
司会者が大きな声で宣言した。
「それでは対戦者の入場です。青コーナーより毎度お馴染み只今3連覇の佐々木拓!今回も優勝できるのか!」
「あたりめーだろうが!」
司会者がそういうと、佐々木拓と言われた筋肉ダルマみたいのが大声で叫びながら。
「おー、拓さん今回もやる気十分です。そして、この拓さんの相手をするのが。なんとこの大会初参加だ。それでは入場してもらいましょう。赤コーナーより謎の眼帯少年。琥牙大河だー!」
「どうもおー」
俺はやる気なさそうに現れながら、なんで俺がこんなことをやっているんだろうと考えていた。
「大河!優勝しなかったら説教だからな!」
説教というよりは体罰じゃないの?
観客席では揚羽が大声で叫びながら応援している。
さて、自分の身も危ないことだし、がんばらないとな。
あの後、俺と揚羽は会場に来て、ダンスやマジックなどを見て、楽しんでいた。
そしたら、次にこのアームストロング大会が行われると司会者が話していた。
「そして、今回の優勝賞品はこちら!」
司会者がステージに向かっていういと、そこから子供の大きさぐらいのクマのヌイグルミと米俵が十個くらい積まれてあった。
「今話題のクマのヌイグルミと家計に大助かりの米十キロです」
会場はざわめきだした。
「かわいいな」
揚羽の方から小さな声が聞こえてきた。
「姉さんなんか言った?」
まあ、つても聞こえていたけどね。しかし、珍しいな姉さんが人形を欲しがるなんて。
「な、なんでもない」
揚羽は顔を赤くしながら焦っていた。
なんか、この反応、初めてみるな。
「それでは、出場したい方は抽選を行いますのでステージ脇にきてください」
司会者が指示すると、彼氏やお父さんみたいな人達がぞろぞろとステージ脇に移動した。
俺は米がとても魅力的だったが、ここまで来てあまり目立ちたくなかったの止めといた。
「大河」
「ん?」
「参加して来い」
「え、なんで?」
「いいから早く行って来い!」
「は、はい!」
揚羽がすごい剣幕で睨んで来たので、俺は思わず返事をしてステージ脇に向かった。
それからというもの、俺は次々と対戦者を倒していき、その結果、決勝にコマを進めていた。
「え~、それでは準備がよろしいでしょうか?」
「いつでもいいぞ」
筋肉だるまは俺を睨みつけながら言ってきた。
「どうぞ」
俺はそんな態度を無視しながら普通に言った。
うわー、こいつの手すんげーベトベトして気持ち悪いな。
「お二人ともやる気十分です。それでは、レディーゴー!!」
バンっ!
司会者が合図を出した瞬間、大きい音がした。
「え?」
「はい?」
観客は当たり前、司会者と筋肉だるまも何が起こったか解らなかった。
「すみません。勝負がつきましたよ」
俺はそう言って、筋肉だるまの手の甲を机にぶつけていた。
「え、あ、はい。勝者、琥牙大河選手!」
「ふざけんなー!」
司会者が俺の手を上げながら言った瞬間、筋肉だるまが俺に向かって文句を言ってきた。
「どうせ、インチキでもしたんだろ。そうじゃ、なきゃ俺が負けるはずがない!」
どうやら筋肉だるまは今の試合結果が納得がいかないらしい。
「あ、やっぱり。今の納得できない?」
「あたり前だろ。もう一度、俺と勝負だ」
「嫌だよ。お前の手ベトベトして気持ち悪いんだもん」
俺は筋肉だるまの挑戦を拒否した。
「てめー!」
筋肉だるまは顔を赤くしながら俺に殴りかかってきた。
「あらよっと!」
俺はその拳をいなして、相手の懐に入り鳩尾に思いっきり肘を入れた。
「ぐほ」
筋肉だるまはそれで気絶をし、倒れてしまった。
「すいません。司会者さん。会場で暴れてしまって」
「い、いえ、大丈夫です。少しのアクシデントがありましたが大丈夫です。これで優勝はあなたに決定です!」
「「「「「パチパチパチ」」」」」
司会者がそういうと観客席から拍手が巻き起こった。
「それでは賞品の贈呈です」
俺はそう言って、クマのぬいぐるみを受け取った。
「米は後ほど、こちらで輸送しますから、あとで住所を教えてくださいね」
「はい。わかりました」
「それでは、これで第N回アームストロング大会を終了します。もう一度、チャンピオンに拍手をお願いします」
「「「「「パチパチパチ」」」」」
またもや、拍手が巻き起こった。
さて、目当ての物が手に入ったから姉さんに殺されずにすむな。
俺は身の安全を感じてホッとした。
「ふふふ」
揚羽は俺が賞品で貰った人形を抱きなからニヤけていた。
「姉さん。顔がニヤけているよ」
まあ、別にいいけどさ。
俺と揚羽は今、最後の締めくくりで観覧車に乗っていた」
「ああ、悪い悪い」
悪いと言っておきながらニヤけているのは変わらなかった。
「でも、珍しいね。姉さんが人形を欲しがるなんてね」
俺が人形をどうしようかと考えていたら、『いらないなら私にくれ』と言ってきたので渡した。
「お前、いつも私をどんな目でみているんだ?」
「そりゃあ、強くて、たくましいなあって、痛いっ」
揚羽に思いっきり殴られました。
「一言言っとくが、これでも私は女なんだぞ。人形の一つや二つ欲しがって当たり前だ」
「暴力的だけどね。いたっ」
また、殴られました。
「お前は私にケンカでも売っているのか?」
「売っていたら、まず、ここにはいないよ」
ケンカを売るなら逃げれる範囲にいるからね。
「たく、せっかくいい気分だったのに悪くなった。おい、どうしてくれるんだ?」
揚羽はそう言って、俺の脛を軽めに蹴って来た。
これ、微妙に痛いから止めてほしいんだよね。
「おし、私の機嫌を損ねた罰として、お前の好きな奴を言え」
それって、どんな罰ゲームだよ?しかも内容が修学旅行の夜に話しあうみたいな内容だし。
「どうした言えないのか?」
揚羽はまたニヤついて聞いてきた。
さて、どうしよ。これと言って好きな人って聞かれても思い当たるのがないぞ。そもそも考えたこともなかった。俺の近くにいる異性から考えると、優燈と鈴は妹みたいなもんだし、渚は友達だし、音葉は後輩なんだよな。じゃあ、姉さんは?・・・・・つか、なんで、俺がこんなことを考えないといけないんだ?おかしいよな。よし、たまには、姉さんをからかって困った顔でも見てみるかな?
俺は少しばかりS心に火がついた。
「姉さんかな」
「え?」
「だから、俺の好きな人は姉さん」
「じょ、冗談だろ」
揚羽は何かを焦っているようだ。
「冗談だったらこんなことをしないよ」
俺は揚羽の肩を掴んだ。
「俺は姉さんが好きなんだ」
「そ、そんな、急に言われても困るんだけどな」
揚羽は顔を赤くしてそわそわしていた。
おー、姉さんが赤くなっている。姉さんってもしかして押しに弱いのかな?
「姉さんはどうなの?姉さんは俺の事は好き?」
俺は真剣な顔をして言った。
「わ、私は」
揚羽はゆっくりと口を開こうとした。
「お客さん、一周しましたよ」
その時、観覧車のドアが開き、係員が顔を覗かせてきた。
「姉さん、冗談だよ」
俺は笑いながらそう言って、すぐに観覧車から飛び出し走り出した。
「・・・・・たああああいいいいいがああああ!!!!!!許さああああああん!」
後ろから俺の名を叫びながら、揚羽が追っかけてくる。
その手にはしっかりと人形が握られていた。
・・・・・ヤバイ、やり過ぎた。
俺はこれから自分の身の危険を感じながら遊園地を走り回るのであった。
その日の夜。
「たく、大河め。弟のくせに生意気だ」
私はタオルで髪を拭きながらベッドに座った。
「せっかく楽しい思い出になりそうだったのに、最後の最後で私をからかいやがって、あー、ムカつく」
私はそう言って、ベッドに横になり、枕に顔を埋めた。
「でも、冗談だったけど好きって言ってもらえて嬉しかったな」
って、私は何を考えているんだ?私は産まれてはいけなかった人間なんだから、嬉しいって思っちゃ駄目なのに。何故、心が満たされてしまうんだろう?
私は枕の近くに置いておいたクマのヌイグルミを手に取り抱きしめた。
大河ががんばって取ってくれた物。
私はそれがとても嬉しかった。・・・・・今日ぐらいは嬉しがってもいいことにしよう。
「・・・・・そういえば、大河にこれのお礼を言うの忘れていたな」
今度、会ったらお礼を言わないとな。
私はそう思いながらヌイグルミ抱いたまま眠りに付いた。
今日はきちんと眠れそうだな。
次回予告
作《大河、遊園地に行った筈なのに、なんでそんなにボロボロなの?》
大《ある人に冗談を言ったら、こうなりました》
作《ああ、あの人か。お前も命知らずだな》
大《うるさい。それで次の話はどうなるんだ?》
作《次は、鈴達と組み手をやってもらいます》
大《姉さんとは?》
作《ん~、大河がボロボロだし次回は止めとくかな》
大《ありがとう。本当にありがとう》
作《普通そこまで感動するか?》
大《だって、姉さんときたら、我が儘だし、自分が満足するまでやり続けるし、自己中なんだよ》
作《大河、後ろ》
大《え?》
揚羽《ほほ、我が弟がそんなことを思っていたなんて、姉さん知らなかったな》
大《!》
揚羽《まあ、なんだ、これからのお前の使い方に付いて、ちょっと向こうでお姉さまと話そうか》
大《あ、いや、引っ張らないで》
揚羽《まあ、そう言わずに早く私に付いてこい》
作《・・・・・連れて行かれちゃった。まあ、いいや。それでは今回はここまで、次回もよろしくお願いします》
大《止めてええええええ!!!!!》
作《・・・・・口は災いのもとなんだな》




