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no,10 登校と巻き込まれて

作《すみません。寝ていておくれました》

No10


「あ~、だり~」

 時間は流れ、俺は欠伸をしながら学校に行く途中だ。

「にゃはは、今日は一段と朝から疲れているね」

 その隣で鈴が俺を見ながら笑っていた。

「誰のせいだと思っている?」

「う~んと、直斗?」

「それもそうだけど、ほとんどお前のせいだよっ!」

「え、あたし何かしたっけ?」

 鈴はほとんど自覚がないみたいだ。

「・・・もういい。それを説明するとよけい疲れる」

「ん?そうなの?」

「ああ」

「ならいっか」

 鈴は結構マイペースだった。

 俺は今、鈴と二人っきりでいた。

 なんで、寮にいたみんなと登校しないで鈴と二人っきりで登校しているのかというと、揚羽はじーさんに朝から呼び出しがあると言って先にいき、渚は学校に行く途中、街を探検していきたいと言って音葉を連れて先に行き、優燈と龍は日直だからって行き。まあ、優燈の首根っこを龍が無理やり連れて行ったんだけどな。そして、直斗は仕事があるからと言って先に行った。

 だから、必然的に鈴と一緒に行くことになった。

 でも、もともと鈴も揚羽と一緒に行けばよかったのでは?と思ったんだが、鈴が『あたし、大ちゃんに用事があるから、大ちゃんと一緒に行くから』と俺に言って、俺が食器を洗い終わるのを待っていてくれた。

「それで、俺に何の用だ?」

 俺は話を切り出した。

「え、用?なんかあったけ?」

 鈴は朝に言ったことを忘れているらしい。

「お前な~、姉さんがお前に『鈴。お前も一緒に行くか?』と誘った時に、俺に用事があるとかと言って断っただろうが」

「あ~、そういえば。そうだったね」

 鈴はどうやら思い出した。

「それで用事はなんだ?」

「う~んとね。大ちゃん、確かあたしとお姉様に何かしてくれるんだよね?」

「ん?俺、そんなこと言ったけ?」

「うん。言ったよ。詳細はNo、5の最後で確認してね」

「誰に言っているんだ?」

 とうとう、バカになったか?あ、違う。もともとバカか。

「ん~、気にしないで。それでしてくれるんだよね」

「んま、覚えていないけど。お前が覚えているということはそうゆうことなんだよな」

「やったー」

 鈴はとても喜んだ。

 俺もその笑顔を見て、思わず微笑んでしまう。

 こいつも、あの頃より笑うようになったな。

「ただし、一回だけだからな」

「わかっているって」

「それで、お前は俺に何をしてほしいんだ?」

「う~とね、今日の放課後、私に稽古をつけてほしいんだ」

「断る」

 俺はすぐに鈴のお願いを断った。

「なんでよっ!」

 当然のことながら、鈴はすぐに怒りだした。

「放課後は寮の仕事があるから無理。ただそれだけ」

「じゃあさ、寮のみんながいいよっていったら、やってもいいんでしょ」

「まあ、そうなるな」

「よし、学校に着いたら寮生全員に許可をもらおう」

「ん、がんばれ」

 たぶん、みんながOKすると思うがな。

「しかし、なんで俺と稽古をしたいんだ?稽古なら門下生もいいだろ」

 鈴と揚羽の家は聖純院と言って、武を極める者が集まる場所である。まあ、今は面倒くさいので聖純院のことについては、またあとで説明しよう。

「門下生は私に遠慮して本気で、やってくれないんだよね」

「おっちゃんは?」

「隼先生は、あれはあれで忙しくて稽古をつけてくれない」

「じぃさんは当然、つけてくれないとして、姉さんは?」

「お姉様はじぃちゃんがやるのを禁止してる。だから、大ちゃんが私の稽古の相手になってよ」

「だから、みんながOKしたらやってやるよ。それに俺も本気出すかどうかわからないだろ」

「大丈夫。大ちゃんはきちんとやってくれるから」

 どっから、くんだその自信は?

 俺は呆れるしかなかった。

「ん、なんだあれ?」

 俺と鈴が学校の近くにある公園にさしかかった所で、鈴が突然何かを見つけ走り出した。

「おい、どこ行くんだ!」

 俺が声を掛けたのにも関わらず、鈴は公園の中に走っていく。

 俺は腕時計を確認する。

 八時十五分。

 まだ少しだけ間に合う時間帯だ。

「たく、遅刻したら。お前のせいにするからな」

 俺は鈴の後を追うように公園の中に入っていた。

「あんた達、いい加減にしなさいよ」

「はあ、なんだこの女!」

「いきなり、入って来やがって。俺らはなお前の後ろにいる奴に用があるんだよ」

 そしたら、噴水の近くで鈴が後ろに同じ学校の制服をきた少女を庇いながら、他校の金髪と茶髪の二人組の生徒と睨みあっていた。

 また、あいつは自ら面倒臭いことに巻き込まれやがって。

 俺は巻き込まれるのは嫌なので、その様子を鈴たちから噴水で死角になっているところから見学することにした。

「うるさい!この子が何をしたかわからないけど、二人で脅すなんて卑怯じゃないっ!」

 鈴は怒りをおもてにだしていた。

「うるせー!そいつはこいつにぶつかったんだよ」

「しかも、そいつぶつかったのにも関わらず謝らないんだよ」

「そうなの?」

 鈴が後ろに庇っている少女に確認を取ると

「わ、私はきちんと謝りました」

 少女は震えながらもきちんと話してくれた。

「この子は謝ったって言ってるんだから、それでいいじゃない」

 そして、また二人組を睨みつける。

「誠意が足りないんだよ」

 金髪の少年が鈴を見下ろしながら言ってくる。

「じゃあ、どうしたらいいの?」

「そうだな。これを払ってくれたらいいぞ」

 茶髪の少年は右手の親指と人指し指で輪っかを作った。

「最低ね。あんた達」

 鈴の怒りは頂点に達したかもな?

「なんだったら、お前ら二人の体でもいいぞ」

「いいねー。むしろそっちの方がいい」

 二人組はニタニタ笑いながら、鈴と少女の体を見定めた。

 俺はそこで時間を確認した。

 八時二五分。

 もう、限界だな。

 俺はこれ以上待つと遅刻が確定するので見学を止め

「おい、鈴。そこまでだ」

 そして、鈴たちの前に姿を現した。

「あ、大ちゃん。来るの遅い。また、巻き込まれるのが嫌で隠れていたでしょ」

「う、うるさい。それより、早く行かないと遅刻するぞ」

 俺は図星をつかれたので、話を変えた。

「でもこの子を助けなきゃ」

「だったら、そいつも一緒に連れて行け」

「でもでも」

「でもでも、じゃない。後は俺がやっておくから早く行け。それとも何かその子も遅刻させてもいいのか?」

 俺は鈴に何も言わせなかった。

「んも~、大ちゃんの頑固者」

 鈴は納得がいかない顔をして、俺を睨みつけてくる。

「お互い様だろ」

 俺は苦笑いをした。

「わかったよ。遅刻しちゃいけないし先に行くよ」

「ああ、そうしろ」

 俺は鈴を邪魔者扱いするように手を払った。

「ほら、君も行くよ」

「え?あ、ちょっ、待、って、きゃああああああ」

 鈴は少女の手を掴み、無理やり引きずりながら俺の横を通り走って行った。ついでに、俺の荷物も持って行ってくれた。

「大ちゃん。ありがとう」

 鈴は俺の横を通り過ぎる瞬間、小声でお礼を言ってくる。

「どういたしまして」

 俺も礼を返す。

さて、遅刻は確定だし、諦めて俺は自分の仕事をしないとな。

「おい、ちょい待てよっ!」

 二人組は鈴たちを追いかけようとした。

「ちょい待つのはお前らだ」

 しかし、その二人の前に俺は立ちはだかる。

「おい、お前どけよ。あの二人が逃げちまうだろ」

「つ~か、お前さえ出てこなければあの二人を喰えたのに、どうしてくれるんだよ?」

 二人組は俺に敵意を向けながら睨みつけてきた。

「いやー、俺に文句を言われても困るよ。もともと、お前らが変にカツアゲみたいなことをやっていなければ、こうならなかったんだし。つ~か、むしろお前らがこんなことをやったおかげで、俺が遅刻をするはめになったじゃん」

 それを考えるとなんだか無償に腹が起ってきたな。うん。決めた。こいつらで日頃の鬱憤うっぷんを晴らそう。

「だったら、ちょっかいを出して来なければいいだろ」

「そうだ、そうだ」

 二人組は俺に向かって文句を言ってくる。

「・・・・・・・」

 しかし、俺は何も答えなかった。

「何?しかとこいつムカつく」

「おい、やっちまおうぜ」

「おう」

 二人組は俺が無視したことが気に喰わないのか、襲いかかってきた。

 たぶん、他にも理由はあると思うけどね。

「死ねえええええええっ!」

 まず始めに、金髪の男が俺から見て左側から俺の顔面を殴りにかかってきた。

「遅い」

 俺はそれを左手で受け止める。

「おりゃああああああ」

 今度は、茶髪が俺から見て右側から俺の脇腹に向かって蹴りを入れてくる。

「あらよっと」

「ぐふっ」

 俺は左手で受け止めた金髪の拳を掴んだまま体を回転させた為、金髪がそのまま引っ張られ、そのまま俺の代わりに蹴りを受け止めてくれた。

 そしてその後、金髪の拳を離して、そのまま脇腹に膝を入れ横に飛ばした。

 金髪はそのまま木に当たり動かなくなった。

「まずは一人」

「お前は鬼かっ!」

 茶髪は俺に向かって文句を言ってくる。

「鬼は酷いな。俺はれっきとした人間だよ」

 俺は笑いを堪えながら答えた。

「ところでさ、お仲間がやられちゃったけどまだやるの?逃げるなら今の内だけど?」

「当たり前だ。俺は仲間がやられたのに逃げる男じゃねー!」

「おー、俺はそういう人間は大好きだよ」

 まあ、逃がす気は元からないんだけどね。

「ところでさ、お前って冷たいの平気か?」

「はあ?なんでそんなこと聞くんだ?」

 茶髪は俺のことを警戒している。

「いやだってね。今からお前を噴水に投げ飛ばす予定だから」

「はあ、何言っている、ぎゃあああ、冷たい!」

 茶髪はいつの間にか噴水の中に投げ込まれていた。

琥牙流奥義こがりゅうおうぎ終影しゅうえい

 何故なら、俺が、茶髪が気がつかないほどの速さで近づき、そのまま噴水に投げ込んだからだ。

 しかし、久々にこれをやったからすげー疲れたな。

「いや~、冷たいのは当たり前じゃん。なんだってまだ春だよ。しかし、よく噴水に飛び込む勇気があるね。俺、ある意味ですごいと思うよ」

 俺は茶髪をバカにしながら目の前まで近づき、

「ふ、ふざ、け、け、る、る、なああ。ぐふっ!」

 噴水から出ようとした茶髪の顔面に拳を入れた。

「これで、二人目」

そして、そのまま茶髪は気絶したので、噴水で溺れては大変なので俺は茶髪の髪を引っ張りながら、茶髪を地面の上に上げた。

「さて、終わったし学校に行くかな」

 俺は体をほぐしながら服装を整えた。その瞬間が命取りだった。

「まだだっ!」

「え?」

 俺は声をした方を振り向くと、いきなりパンっという音と共に金髪が俺に体当たりしてきた。

 そして、俺の脇腹には固い物が当たっている感じがした。

「へへへ、俺を舐めるんじゃねーぞ」

 金髪は不敵な笑みを浮かべながら俺から離れた。

 そして、その手にはナイフが握られており、ナイフの先端には赤い物がベットリと・・・・・ベットリと・・・・・付いていなかった。むしろ、先端部分が綺麗に無くなっていた。

「な、なんじゃこりゃああああ!」

 金髪はそれを見て驚いていた。俺も同じで驚く。

 一体、どうなっているんだ?まあ、でもとりあえず。

「くたばれやっ!」

 俺はこの隙を好機とし、金髪の顔と腹に五、六発ずつ拳を入れ、ふっ飛ばし気絶させた。

「しかし、一体どうなっているんだ?」

 俺は周りを見回すと近くにナイフの先端部分とその近くに地面にめり込んでいる銃の弾も見つけた。

 まさかな?

 俺は嫌な予感がして学校の方を向き、二階の一番左側にある窓が開いている教室を見た。

 そしたら、そこにはスナイパーライフルを抱いた優燈が手を振って俺を見ていた。

「やっぱりな」

 俺も手を振り返してやる。

 しかし、この時の俺は心情穏やかではなかった。

 何故なら、一番、貸しを作ってはいけない奴に貸しを作ってしまったんだから。

 さて、この後、俺は大丈夫なのかな?

 俺は手を振り終え、今後の自分の身をあんじながら学校に向かった。



次回予告

作《次回は授業前の十分休みの話です》

大《どういった内容?》

作《それは秘密です》

大《それって次回予告の意味無くない?》

作《あ、でも、新キャラがでるかもね》

大《うお、まじか》

作《まじです。では次回を楽しみに》

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