No,9 朝の日常
作《え~と、いよいよ学園編が始まります。これからも読んでくれたら嬉しいです。それと、今回の話は朝の日常だから、学園とは関係ないかも》
ピピピ、ピピピ、ピピピ。
朝、いつもの時間帯に目覚ましが鳴り、俺は目を覚ました。
もう、朝か。起きないとな。
俺はゆっくりと目を開けると、目の前に優燈の顔があった。
「なんで、こいつがここにいんの?」
俺は疑問に思いつつ、昨日の出来事を思い出してみた。
あ、そっか、昨日は優燈と一緒に寝たんだっけ。すっかり忘れていた。
俺は優燈の寝顔を眺めてみた。
優燈は目覚ましがなっているのにも、関わらずまだ寝息をたてて眠っていた。
「こいつ、静かにしているとかわいいのにな」
俺は呟いておいて、いきなり恥ずかしくなった。
「さ、さて、早く起きて。いろいろやらないとな」
俺はわざと気を紛らわせようと布団から起き上がろうとした。
しかし、その時あることに気がついた。
昨日、俺は優燈を抱いて寝てしまった。その為、必然的に腕は優燈の下にくる。よって、この腕を取るには優燈を起こさないといけない。しかも、極めつけに優燈も俺を抱きしめている為、動くことが困難な状況に至る。
さて、どうしよう?
俺はそんなことをかんがえつつも、優燈を起こすことにした。
自由な方の手を使ってとりあえず優燈を揺すってみた。
「優燈。朝だ。起きろ」
「ん~」
優燈は起きるどころか、さらに腕に力を入れて抱きしめてきた。
「たく。これじゃあ、時間がなくなるよ。優燈、起きろって」
俺は揺するのを止め、優燈の頬をつっついてみる。
頬は柔らかくプニプニしていた。
やばい、すげ~柔らかい。
俺は五分ぐらい夢中になってしまった。
「はっ、いけない早く起きないと」
そうしないと朝ご飯が遅くなる。
琥牙寮では朝と夜のご飯は管理人の俺が作ることになっている。
だから、必然的に俺が寝坊などしてしまった場合、寮に住んでいる者たちは朝食抜きになってしまう。
それは絶対に寮の管理人として避けなければいけない。
「優燈。お願いだから。起きてくれよ」
俺は必死になりながら優燈を揺らした。
「ん~、大河~、だめ~」
優燈は一向に起きる気配がなく、寝言を言っていた。
つか、どんな夢を見ているんだよ。こいつは?
「しょうがない。最後の手段を使うか」
これはあまり使いたくないんだけどな。
俺は優燈の耳元に口元を近づけで囁いた。
「優燈。今、起きたら俺からキスを」
「してくれるのっ!」
優燈はすごい勢いで目を覚ました。
「しね~よ」
「あっ」
俺は一瞬だけ力が抜けた優燈の腕から脱出した。
優燈は俺が抜け出したことによりなんだか寂しそうな顔をした。
「たく、やっぱりタヌキ寝入りをしていたか」
俺は呆れつつカーテンを開けた。
窓からは太陽の日差しが入って来て、今日も良い天気になりそうだ。
「だって、もう少し大河を感じていたかったんだもん」
優燈は起き上がりながら俺を見てくる。
「お前の言い分はわかったから、早くここから出て行け」
俺はパジャマ代わりのTシャツを脱ぎながら優燈に言った。
「大河。私のことを嫌いになっちゃったの?それとも怒った?」
「どっちでもね~よ。着替えるから出てけっていう意味だ」
そもそも、こんぐらいで怒っていたら今頃、お前はここにいねーよ。
「そう、よかった」
優燈は何故か安心していた。
こいつは何をそんなに安心しているんだろ?
「だから、早く部屋を出ろ」
俺はタンスから別のTシャツを取りだした。
「なんだったら手伝う?いや、むしろ手伝わせて」
優燈は俺に近づいてきた。
「丁重にお断りする」
俺は優燈の顔を押さえて、部屋から追い出した。
「もう、照れなくてもいいのに」
「照れてね~よっ!」
「それじゃあ、私の着替えを手伝ってくれる?」
優燈はパジャマのボタンを一つ開けた。
「いいから、早く部屋に戻れっ!」
俺は勢いよく部屋の扉を閉めた。
なんで、あいつは俺にこんなにも積極的にアプローチをかけてくるんだ?
「たく。なんで、朝からこんなに疲れないといけないんだよ?」
俺はとっとと部屋で制服に着替え、リビングに向かった。
部屋を出る時、優燈はもうそこにはいなかった。俺に言われたとおりに部屋に戻ったのだろう。
リビングではまだ誰もいなくて、俺はとっとと朝食を作り始めた。
しばらくして、あと少しで朝食が完成する頃に龍がリビングにやってきた。
「おはよう、大河。相変わらず早いな」
「おう、おはよう」
俺は味噌汁に味噌を溶きながら挨拶を返した。
「・・・・いつものことだけどさ。お前、また昨日の内に片付けしたろ」
龍はリビングを見回しながら聞いてくる。
「食器はな。ゴミなどはまとめて一つにしているから後は捨てるだけだ」
「じゃあ、俺はそれを捨ててくるよ」
「ああ、よろしく頼む」
龍はゴミ袋を持って外に行った。
「おはよう。大河」
「おはようございます。琥牙先輩」
次に現れたのは、渚と音葉だった。
「はい。おはよう」
俺も挨拶を返した。
「琥牙先輩。何か手伝うことはありますか?」
音葉は俺に近づいてきた。
「それじゃあ、魚を盛り付ける食器を出してくれないか?それと、ご飯をよそってくれ」
「はい。わかりました」
音葉は俺に指示をされ、早速、動き出した。
「大河。リビングの片づけが終わっているようだが、お前が一人でやったのか?」
渚は辺りを見回しながら聞いてきた。
「正確には俺と龍でやった」
たぶん、嘘は言っていない筈。俺が片づけて龍がゴミ捨てをしているんだから。
「そうなのか。すまんな手伝うことができなくて」
「いや、気にすんな」
どうせ、昨日のうちにやってしまったんだから。
「そんなことより、そろそろ朝食にするから席についててくれ」
「ああ、わかった」
渚はテーブルについた。
「琥牙先輩。ご飯の準備盛り付け終わりました。他にやることはありませんか?」
音葉はお盆を持ってくる。
「それじゃあ、魚を運んでくれ」
「はい。わかりました」
音葉は皿に盛りつけた魚を運び出す。
「なあ、大河。私も何か手伝うことはないか?」
渚は音葉の手伝う姿をみながら聞いてきた。
「それじゃあ、味噌汁を運んでくれ」
俺は味噌汁をお茶碗に注いでいた。
「ああ、任された」
渚は手伝うのがそんなに嬉しいのか、お盆を持って張り切っていた。
「熱いから気を付けろよ」
「ああ、わかっている」
渚はお盆に全員分の味噌汁を乗せ運んだ。
「さて、これで準備は終わったな」
俺は朝食の準備を終え、エプロンを外した。
「戻ったぞ」
そしたら、タイミング良く龍が帰ってきた。
「邪魔するぞ」
「おっはよーっ!」
何故か聖純姉妹を連れて。
「なんでいるの?」
俺は少々、呆れながら聞いてみた。
「いや、何、昨日の歓迎会の片づけをしにきただけさ。でも、大河のことだから昨日の内に片づけていると思うから、ぶっちゃけ言って朝食を喰いにきた」
さすが姉さん。俺のことをよくわかっていらっしゃる。
「つか、それだったら。わざわざ朝食を喰いに来なくてもいいじゃん」
「いや、だって大ちゃんのご飯って家のよりおいしいだもん」
鈴はそう答えていつの間にか席に着いていた。
「それにな、お前のことだからどうせ私達の分も作っているのだろ」
どうやら、俺が考えていたことは揚羽にすべてお見通し見たいだ。
「はー、食べていいから。早く席に着いて」
「そうこなくちゃ」
揚羽も嬉しそうに席に着いた。
「龍。後、来ていないのは誰?」
俺は揚羽と鈴の分のご飯とみそ汁、魚を用意した。
「え~と、優燈と直斗だな。あと、剛と透は大河が片づけるから来ないとメールが来た」
「いないのが優燈と」
「私ならここにいるよ」
「え?」
俺が間の抜けた声を出すと、と同時に背中から柔らかい感触がした。俺が顔だけを後ろに向けるとそこには優燈が俺に抱きついていた。
「何しているの?」
どうせ、いつものことだろうけど。
「大好きな大河を充電中」
優燈はさらに腕に力を入れ、自分の体を俺の背中に押し付けてきた。
「・・・・・みんな、先に食べていいよ」
俺はもう慣れてしまっているので、優燈のことは無視してみんなの方を向いた。
「何をやっているんだあれは?」
渚は味噌汁を手に持ちながら見てくる。
「ああ、あれか。あれはマーキングみたいなものだ」
龍はご飯を口に含みながら親切に答えた。
「マーキングって、あの動物などがやるやつか?」
「ああ、そうだ。優燈はああやって大河に自分以外の女性が近づかないようにしているんだ」
揚羽は面白がって説明をする。
「私も最初の頃は驚きましたけど、もう、慣れました。たぶん、渚さんもすぐに慣れますよ」
音葉は魚をほぐしながら苦笑いをする。
いや、慣れなくていいから。
「がつがつがつがつがつがつがつ」
鈴はひたすら朝食を食べていた。
お前も食べてないでないで何か言えよ。つか、小柄のくせによくそんなに食えるよな。
「ふぁ~、あー、寝み~」
そんなところに、肌が少し黒く、目は細く、髪を適当に短く切りそろえた少年がリビングに入ってきた。
「大河~。いちゃついていないで、飯~」
そして、眠そうにしながら俺に朝食の要求をしてきた。
「直斗。飯はわかったから、その前に顔を洗って来い。それと、優燈いい加減離せ。早く朝食を食べないと学校に遅刻する」
「は~い」
細目の少年は足元をふらつかせながら洗面所に向い。
「私が食べさせてあげようか?」
優燈はすんなりと俺のゆうことを聞いてくれなかった。
さて、どうしようかな?
俺はとりあえず、優燈を引きずりながら細目の少年の朝食を用意した。
「おい、優燈。そろそろ大河が困ってきているから離してやれ」
龍が俺の困っている様子を見て、助け舟を出してくれた。
「大河、困っている?」
優燈は俺を見上げてきた。
「困っていないが、俺もそろそろ自分で朝食を食べたい」
俺は優燈に気を使いながら言葉を選んだ。
「それじゃあ、食べよっか」
優燈は俺から離れ、自分の席に座った。
あ~、なんでこんなに朝から疲れるかな?
そう思いながら、俺は自分の席に座って食べ始めた。
「大河~、俺の飯どこだ~?」
そうしていると、細目の少年がリビングに戻ってきて、自分の飯を要求して席に着いた。
「え、用意したはずだけど?」
俺は味噌汁を飲みながら答えた。
「でもないぞ~?」
「おかしいな。きちんと用意したはずだけど」
「あ、ごめん」
そこで、鈴が口に物を含みながら喋ってきた。
「鈴。喋る前に口に入っている物を飲み込め」
行儀が悪いから俺はとりあえず注意した。
「あ、うん」
鈴は口に一気に飲み干す。
「それで、何がごめんなんだ?」
まあ、だいたい予想はつくけどな。
「私が直斗の食べちゃった」
「なんだと?」
直斗はショックを受けた。
「ニャハハハ、ごめん」
鈴はもう苦笑いをするしかなかった。
「ごめんで済むならお代官様はいらないんだよっ!」
何それ?普通は警察じゃないのか?
「よくも、よくも俺の飯を喰ってくれたなっ!」
「だからごめんって言っているでしょ」
「うるさい。ぜってー、許さね。覚悟しろ」
細目の少年はテーブルを飛び越え、鈴に襲いかかった。
「うるさいっ!」
俺は行儀が悪いが茶碗を持ちながら、とりあえず細目の少年の脇腹に蹴りを入れて、とりあえず被害が少ない所に吹き飛ばした。
「でも、俺の飯が~」
細目は俺の蹴りをくらいながらもピンピンしていた。
「ご飯とみそ汁はまだたくさんあるから、自分でよそえ」
「おかずは?」
「焼き魚が一つ残っているからそれでも喰え」
「うお~、大河に感謝~」
細目は騒がしくしながら台所に向かう。
「は~、本当に朝から騒がしいな」
今頃だけど、あの細目の名は亥灯直斗と言って、説明がめんどくさいので簡潔にいうと、寮に住んでいる最後の寮生で、同学年の馬鹿である。
「大ちゃん。おかわり。もちろん得盛りで」
「あ、私のも頼む」
聖純姉妹は俺の事情とはお構いなしに空になった茶碗を突き出してきた。
はあ~、なんで俺、朝からこんなに疲れないといけないんだろう?つか、少しは遠慮しろよ。
俺は二人に渡された茶碗にご飯を盛りながらそんなことを考えていた。
次回予告
作《次回、登校風景になります》
大《やっとで学園らしくなってきたな》
作《ここまでくるのが長かった》
大《お疲れ様》
作《ありがとう。お礼に》
大《何?俺に楽してくれるの?》
作《まさか、鈴とのイベントを入れてあげるよ》
大《はい?どういうこと?》
作《それでは次回は鈴の話にするのでよろしくお願いします》
大《おい。だから説明しろって。お~い》




