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767話 先生と生徒!

 表彰式が始まる。

 司会は大会進行に引き続き、クロが行う。

 アルとネロから優勝者である、前村長のゴードンにトブレが製作したトロフィーが贈られる。

 照れているのか何度も何度も頭を下げる。そして次に商品を選ぶのだが……。

 お得意の決められないと、いう話になる。

 自分の為でなく、村として一番良いと思う品が分からないのだろう。

 今回の商品は、それほど豪華な物は無い。比較的、手に入りやすい物が多かった……と思うのは、あくまでもゴンド村では入手しやすいだけで、他の都市に行けば高値が付くものばかりだ。

 アルとネロに任せたのだが、感覚が違うので理解出来ないのかも知れない。

 前回のビンゴ大会でアルが用意した『スノーボア』や、ネロが用意した『ワイルドターキー』。それに俺が持っていた『コカトリスの卵』。

 今回もアルとネロは、同じものを用意していた。

 本人たちは「食材だ!」と、持ってきたが魔物たち用の食材なのだろうか?

 俺は王都などでの料理を思い出すが、魔物の肉を加工して料理を提供するところは無かった。

 しかし、コカトリスの卵や、ロックバードの卵などは貴重な食材として扱われている。

 魔物の肉は食さないのに、卵を食すのは問題無いのだろうか?

 魔素の影響が少ないということか?

 それとも、長年の掛けて食べられる魔物食材が分かるのだろうか?

 こんな時、【全知全能】があれば簡単に解決するのだが……。


「シロ。知っていればでいいんだが……」

「はい、なんでしょうか?」


 俺は隣にいるシロに聞いてみた。


「それは、人族の偏見いえ、偏食です」

「どういう事だ?」

「魔素が毒なのは間違いありません。魔族の成長と共に魔素が強くなると考えられているので、卵であれば魔素の影響が無いというのが、この世界の常識です」

「そうなのか……」

「魔獣全てが強い魔素を持っているわけではありませんし、部位を切り分けたりすることで食べられる物もあります。昔は人族も魔物を食べていた時代もありましたよ。その代わり、魔素の影響で魔人化したり、死亡したりすることも多かったですね」

「……」

「私としても納得出来ないのは、陸や空に生息する魔物は食べずに、海や川など水に生息する魔物は食すことが多いということです」


 言われてみれば確かに、シロの言うとおりだ。

 エクシズに来たばかりの時に必死でコンプリートしようとしたレインボートラウトや、オーフェン帝国で討伐したクラーケンは、食材として認識されている。

 

 為になるよシロ先生! と思いながら話の続きを聞く。


「危険な魔物よりも、狩猟しやすい獣を選択するのは必然かと思います。それに魔物討伐は皮や爪などを使用することが目的の場合が多いです。討伐の仕方が悪いと、肉自体に魔素の影響があり、人族にとって害になることもあります」

「それって、適切な処理をすれば魔物の肉も食べられるって事だよな?」

「はい、そうです。ワイルドターキーは美味しいですよ」


 魔物図鑑を作成した時に気付いていれば、追加情報として載せられた。

 俺は少しだけ後悔する。


「地域によっては、今も魔物を食べる習慣が残っています」

「そうなのか」

「そういった地域は魔物が獣を食べてしまう為、どうしても魔物の肉を食べるしかないという所が多いのも事実です」

「なるほど……」


 討伐した魔物を証明するには、基本『核』を持ち帰れば良い。

 まれに皮や牙などが必要な場合は、持ち帰って来ることがクエスト達成の条件の時もある。

 本当に常識が無いのだと、痛感した。


「それに御主人様は、魔素と魔力の違いも御存じありませんよね?」

「……はい」

「簡単に言えば魔素は目に見えますが、魔力は目に見えません。感じると言った方が正しいですね。付け加えるなら、魔素は害がありますが魔力は無害ですね」


 俺は先生の話を聞く生徒のように、頷きながらシロの話を聞いた。


「今更ですが、分からないことがあれば遠慮せずに私か、クロさんに聞いて下さいね」

「ありがとう。今後は、そうする」


 従者の方が賢く、常識もある。

 弟子の方が強い師匠。

 俺って……ふと、自分の存在が悲しくなった。

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