48話 気の長い
爆発後、彼らの身体がバラバラに飛び散り霧状になって結界内に充満したらしい。
それが、プチプチと集まり合体し始めている音がする。
霧の中、ゆらりと奥で気配が動くと金色が小さく2つ光った。
同時に強烈な圧が放たれる。
「ぐっ」
一瞬気が落ちるかと思った。
たったの一撃をくい止めるのに、お姉ちゃんの剣も私の剣もミシリと音を立てたまま、ウンともスンとも動かなくなってしまった。
背中にヒヤリと汗が伝う。
神級装備で、ダメージは無いはずなのに。
さすがケイミーが危険視するだけはある。
攻撃の圧が半端ない。
一撃でこれなら、さっきのお姉ちゃんの攻撃も必要な気がしてきた。
「お姉ちゃん、さっきみたいな攻撃はもうしないの?」
私がいても気にしなくていいよ。
この戦闘服を着ている間は私たちは無敵らしいから、どんどんやってくれて構わない、と思っていたのだが。
「さっきの爆発のこと?もう無理だよ。さっき手元にあるの全部使っちゃった」
てへって。
お姉ちゃんが思った以上に無計画だった。
お姉ちゃんを好きに動かせて、私が合わせる形で計画を立てないとダメみたいだ。お姉ちゃんは考えてない。行き当たりばったりだ。
「あと私に残ってる攻撃は、このなんでも消せる剣で彼を捉えるだけだよ。でも当たんないんだよ」
だろうね。
お姉ちゃんの攻撃は大振り過ぎるのだ。
まあ、大きな衝撃波が起きているから、無駄な攻撃ではないけども。
「お姉ちゃん、力任せに振るのをやめて、よく見て突くように振った方がよくない?」
「え、でもなるべく魔力をたくさん纏わせて一気に行けって師匠が言ってた。馬鹿と魔力は使いようだって」
お姉ちゃんに剣を教えた人は誰だ。
と、また圧が膨れた瞬間に、クワイベルの目が光って光線が走った。2人とも素早く飛んで場所を離れたけど、背後で爆撃音が鳴り響く。
「目からビームとか人間やめてるね」
ビームがわかんないけど、人間やめてるってのはわかる。
あれは人じゃない。
私はお姉ちゃんに貰った剣に魔力を通した。
お姉ちゃんが大振りする軌道から、彼がずれる瞬間足元を叩く。少しずつ、少しずつ。
少しだから、大して気にもならないでしょう?
でも確実に。
足も背中も直ぐには彼に不都合を感じさせるものではないけれど。
クワイベルは削られた自身の肉体を復活するのに、他の人だった身体の一部がいるんだろう。
お姉ちゃんに細かく粉砕されたそれが、クワイベルに集まっている。
だから、私はそれを削ぐことに主眼を置くことにした。
お姉ちゃんと違って、原子までしか分解しないのではなく、完全な無にするために動く。
お姉ちゃんの大振りの攻撃に、集まったそれがまた飛び散り、彼はまたそれを集めるのに集中する。
それに気を取られている間に、私は少しずつ彼を削り、それらを無に帰す。
少し離れた場所で。
気の遠くなるような、でも気取られずに動けるのが私の長所だ。それはいずれ、弊害となって彼を襲うだろう。
ほら、ね。
その数が2千を超えたあたりで、ようやくイラついたようなクワイベルが私をとらえた。私の剣を彼の剣がガチッと抑え込む。
『そいつを片付ければ終わるかと思えば、お前の方が邪魔だったな』
にやりと彼の目が私を直視すると、筋肉が委縮した。
無意識に力の差を感じているみたいで、ばあばを思い出す。
いや、ばあばの方が怖かった。
けれども。
さあ、これで、君を復活させるモノは無くなっっちゃったね。
これ以後は、受けたダメージがそのまま彼をを蝕んでいくはずだ。
私は深く息を吐きカチャリと剣を構えると、クワイベルと対峙した。




