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29話 お姉ちゃん

眩しい光が徐々におさまり、身体のだるさをおしてなんとか上半身を起こしてみる。


「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん。ラメル様参上だよ! 私を呼び出したのは、どこのどいつだ~い?」


光の中心にピョンっと美女が現れた。

「って、アレスティーナ?!」

美女がすっごい勢いでぶつかってきた。両手で顔をぎゅ~っとされる。

水鏡越シニ見テイタ妹ニ触レル日ガ来ルナンテ、ムホッ

ってさらにぐりぐり撫でまわされる。


「だ、だれ?」

見覚えはないが、なぜか変な親近感がある。


立ち上がって挨拶をしようとして失敗。足から崩れ落ちた。

ううっ、思い通りに身体が動かないよ。

「ちょっアレス、大丈夫?」

私を慌てて支えてくれた美女が、私を床に座らせるといきなり消えた。


「私の大事な妹をこんな風にしてくれたのは、あんたなの?!」

ドスをきかせた美女が、ラージを壁にゴンゴンしている。

っていうか、ものすごい情報をスルーしてたよ、私。


「違うから! ラージは関係ないから! お、お姉ちゃん?」

とたん、美女が硬直して止まった。

放り出されたラージが放物線を描いて壁に激突したけど、死んでないよね?


んでもって、高速で走って来たお姉ちゃんが、私をシェイクしながらスリスリしてくる。

ソウデス、私ガオ姉チャンデスヨ、ムホッ

ってな。


シェイクされ過ぎて、ちょっと気持ち悪くなってきた。うっぷ。

もともと力が入らなかった身体がさらにぐったりしてきました、お姉ちゃん。

「あの、そろそろアレスを開放してくれないと、死にそうですが」

私の様子に気がついたラージが、自分の状態を放ってお姉ちゃんに恐る恐る声をかける。


「のおおおおお!」

お姉ちゃんは私の様子を見ると、慌てて空間をわしゃわしゃ探りだした。

「ところで、ラージのその血だらけの顔は一体……」

まあ、背中も血だらけで満身創痍感半端ないのだけど。

「ぎょええええ! マジ? 私、やっちゃった? ごめんよ~!」


両手で顔を潰して飛び上がったお姉ちゃんが、ラージに近づくと上下にゆすりながら謝り始めた。

いやむしろ、そっとしておいてあげた方がいいのでは。

っていうか、お姉ちゃん激しいな。


「あった、あった」

お姉ちゃんがハート形の飴を取り出すと、私とラージの口に入れる。私の持っているのと同じ、回復飴だ。

魔力が回復してきたのがわかる。

ラージの血も止まったみたい。


それにしても、身体の自由がきかないのはなんでだろう。回復飴を舐めてるのに。

「お主、制限が解除されてまだ魔力が身体に馴染んでおらん。無理に動かぬ方がよいぞ。制御できずに暴れ回られると迷惑だからな!」

手を腰に当てたゴンが私の頭の上でふんぞり返った。


「制限の解除とか、わけわかんない」

今日は脳みそいっぱいいっぱいだよ。

私は言葉に従いゴロンと寝そべって、ゴンを見上げた。


「ところで、どうやってお姉さんはこちらに来たのですか」

ゴロゴロしている私に代わって、元気になったらしいラージが質問する。

うん、私も気になる。当然の疑問だよね。


「どうって、魔法陣を起動したのはアレスたちじゃないの?」

「魔法陣、ですか?」

この光っている床のことかな? 何かの記号が書かれているもんね。


「ほらここに『この魔法陣は転移用です。魔力が足りないと死んじゃうから気を付けてね』って書いてあるじゃない」

お姉ちゃんが当たり前のことのように言う。


「お姉ちゃんはこの文字読めるの?」

ドウシタンタ国の文字なんだろうか。

「あ、そうだった。これ日本語だった」

日本語? 初めて聞く言語だな。


「え~と、私とアレスのおばあちゃんが作った魔法陣なんだよ。おばあちゃん、この星の創造神の1柱だからね!」

って全く意味が分からない。神って、神様、だよね?

おばあちゃんが神様なの?


「それにしても、私が呼び出されたってことはアレスの魔力が足りなくて、たまたま向こうの魔方陣に私がいたから、私の魔力で残りを補給したってことかなあ?」

石碑を覗きこんだお姉ちゃんが、ペタっと手を当てる。

「ぐお、すっごい魔力吸われた。っていうか、魔力が足りないのはお前が原因か!」


お姉ちゃん、ブーツから細い剣を取り出すと、あの透明なウネウネにプスッと刺した。ブンブンと剣を振るとシュワシュワと消えていく。

お姉ちゃん、剣の使い方が危なっかしいな。

でも、床に這いつくばっていたウネウネが全部いなくなった。


「アレスにもついてるじゃん!えい!えい!」

一瞬バッサリ切られる未来を予想して、心臓が縮み上がる。

一言何か教えてくれないかな!


でも、あの気持ち悪かったウネウネが消えた。

ラージに絡みついているのも全部消えて、この部屋に1匹もいなくなった。

「あ、やっぱりあった」

私の足元をごそごそとして、お姉ちゃんが指で捕まえたのは、金色の種みたいな何か。


「これがあるとさっきのがいっぱい湧いてくるんだよ。アレ、私の娘の仇だから絶対許さないんだ、ふん!」

って、お姉ちゃん子どもいるんだ。

でも仇ってことは死んじゃったのかな。

なんて聞けない、聞けないよ!


「っていうか、こっちに無理矢理引っ張ってこられちゃったんだもん。私、悪くないよね!これで鬼畜賢者と鬼神からしばらく解放されるぜ、ひゃっほ~」

なんかわかんないけど、本音が漏れてる、漏れてるよ!


「なんていうか、アレスとお姉さんって見た目以外に共通部分ないな」

あ、うん。それは私もそう思う。




やっと元の場所に戻れました。


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