23話 合流
まるっと1日、部屋にとどまってみた。
ご飯こないし、退屈だし。ここにずっといるのは無理だ、私。
それに外に人の気配はあるけど入って来る様子はない。
そもそもトカゲンの集めた情報が確かなら、1部屋くらい誰もいなくなっても気がつかないんじゃない?
たくさんいるもん。
外に音が漏れないように天井までよじ登ると、板を外して上に上がる。
通常の仕事をしなくてもよくて、部屋には誰も来ない。捜索し放題だと思わない?
奥にこれだけの人がいるなら、カレンちゃんもいるかもしれない。
けど、この拉致られた状況の分が給金に反映しないなら、私怒る。
勝手に閉じ込めておいて、支払なしとか許せない。もうすでに昨日の分貰ってないし。
『アレスだ~』
釈然としない感じで天井を移動していると、ジェリーがチュズミ達に運ばれてやってきた。
この間乗っていた御輿が神輿みたいに豪華になって、もうお前何様だよ。
「トカゲンと合流したいんだけど、外に出られるところ知らない?」
しっかし、天井裏がめっちゃキレイだ。下の部屋より掃除が行き届いている。
『南側に通気穴がありますね』
考え込んだジェリーより早く、チュズミが反応する。
ジェリーは絶対何も考えてないよね。
うん、頭さえ通ればいけそうだ。
通気口を外して外に出ると屋根につかまってぶら下がる。壁に足を引っかけると、一気に駆け下りた。
降りる時に見えていた建物の脇に転がり込もうとしたところで、拘束されて引きずり込まれる。
うそ、人がいた!?
気配を感じなかった。
一瞬肝が冷えたが、その場で止めを刺されたわけではない。拘束を外すために相手に体重をかけ油断を誘う。
そのまま一気に技をたたきこもうと踏み出して、ひっくり返された。
ばあばみたいなやり手だ。どうする?
「アレス、俺だよ、俺」
長袖覆面の庭師が、私の上に乗ったまま口元の布を取り外した。
なあんだ。
「ラージ」
「1月以上も連絡が取れないとは思ってなかったよ」
遅かったね。
「ごめん。遅れた。入り込むのに苦労したんだ」
「うん」
真剣に私の顔を覗き込む様子をみれば、ラージが大変だったのは理解できた。
「無事で安心した」
額を合わせて、ラージが目を閉じる。
少し、やせたんじゃないかな。
「無理したんじゃない?」
「そうでもないよ」
目を開けると、ラージが安心させるように笑った。
「私も外に出て連絡を取ろうと思ったんだけど、どこに行っても外に出られなかったんだよね」
走れば走るほど、方向がわからなくなって、どこに行っても屋敷がついてくるんだ。
「そうか、俺はその逆だ。いつでも出られるのに入るのは毎回苦労する。これを持っていないと入るのは無理だった」
ラージの首にかかっている何かが必要らしい。
「やっぱり何かあるね」
私はラージの髪をかきあげて、彼の目を覗き込んだ。
心配し過ぎだし。
「俺はアレスが無事ならそれでいいと思っていたんだが、アレスの話を聞いて確信した。大元を解決しないと、アレスがここから出られないってな」
「どういうこと?」
「どう見ても魔力持ちの人数が多過ぎる。意図的に国中の魔力持ちが、ここに集められているとしか考えられない」
ふ〜ん。
それにしても、ゆっくり話したい。ここは誰かが通るかもしれないし。元の部屋にいったん戻る?
キカナと住んでいたあの部屋は、もう他の人が入っただろうか。
「っていうかラージ重い」
「うっスマン!」
「わっ、バカ。声でかい」
なんか人の気配がザワッとしたよ。
ラージも立ち上がり、再び口元の布を元に戻しながら、警戒の姿勢をとった。
「ひとまずついてきて」
もうダメもとで行くしかない。




