21話 シッタカぶり
ぼくシッタカ。
この間まで自分のことをトカゲンだと思っていたんだけど、違ったみたい。
ジェリーママが教えてくれたんだ。ママは僕の仲間を知ってるんだって。白い翼を動かして、空を飛ぶぼくの仲間がどこかにいるって言ってた。
『けどぼく、パパとずっと一緒にいたい』
ぼくの仲間がどこかにいるなら、そこに連れて行かれちゃうってこと?そんなのいやだ。
『ぼくパパと同じトカゲンがいい』
だって、パパがぼくを助けてくれなかったら、ぼく生まれてすぐに殺されてたんだもん。
パパはぼくの頭をしっぽでなでなでしてくれた。
『ん~、けどシッタカはシッタカにしかなれないよ~』
ぷよぷよ動くママが、う~んと唸る。
『アレス~、シッタカにトカゲンっぽい名前つけよ~』
何それ!うれしい!ママ最高~!
期待を込めて主(パパが主って呼ぶんだよ)を見ると、主も机から顔を上げて僕を見た。
「あ~、トカゲンとシッタカでトカシでいいんじゃない?」
トカシ!いい名前!
主はそれだけ言うと、また紙とにらめっこし始めた。
『トカシはね~、ほんとは空中の魔素を集めて生まれてくるはずだったんだよ~』
うん、ぼく不思議な魔力に囲まれてたの覚えてるよ。
もっとゆっくり生まれるはずだったんだよね。
『シッタカはね~あんまり卵産まないけど、産むときはいっぱい産むの~』
「ジェリー、よく知ってるね」
『うん。卵から産まれるまでに5年くらいかかるって言ってたよ~』
そうなんだよ。ぼくら1つにまとまらないといけないぐらい、外の力が強かったんだ。
今思うと、主の力が強かったんだね。
「ジェリー、シッタカのお友達がいるの?」
『うん、いる~。ずっと昔なんだけど、タカシ元気かなあ』
「似た名前だな」
それにしても、身体は1つになったのに、魔石は1つにならなかったんだ。
ぼくの身体の中、限界まで魔力を貯めた魔石がいっぱいある。
本当なら、おっきく変身はそのたんびに魔力を誰かから調達しないといけないんだけど、魔石の数だけ自由におっきくなれるんだ、ぼく。
でも、急に大きくなったらぱぱがびっくりしちゃうかも入れないでしょ?
だから内緒にしてるんだ。
小さいぼくは、パパが背中に乗せて、いろんな所に連れて行ってくれるもん。
ぼくは甘えるようにパパの背中に乗る。パパがぼくを背中に乗せて、天井を散歩し始めた。
天井の角っこに、細っい隙間がある。
パパがなにかを感じたらしく、ぼくを降ろした。
ぼくは隙間に入れない。
『パパ』
寂しそうに声をかけると、パパがぼくと視界を共有モードにした。
暗い道だね。
明かりが見えてきたよ。誰かの部屋かな。
あ、人がいる。背の高い男の人だ。
あれ?ぼくたちの卵があるよ。
ッガーン!!
なんで、あの人達、僕らの卵を潰しているの!?
卵の中のぐったりしたぼくの仲間から、魔石を取り出してニヤニヤしている。
ぼくらもああなるところだったんだ、ぶるぶる。
あいつめ、顔は覚えたからな。今度見つけたらクチバシで突きまくってやるんだから!
それにしても、この部屋汚いなあ。
主の部屋はすっごく綺麗だけど、この部屋汚い。
他の人間の部屋もそうだ。荷物がごちゃっとしてるし、それにくさい部屋もある。
それに比べると、天井はキレイだよ。ピカピカしていて輝いている。埃なんて1つもない。
人間も天井に住めばいいのに。
あ、もしかして、パパが特別だからぼくら天井にしられるのかな。
だって、チュズミは上納品を持って毎日挨拶にくるし、ニャコやバウワンは散歩中に近づくだけで平伏して後ずさる。
ぼくはパパの背中の上で、いつも優越感に浸るんだ。
ニャコたちがいつも「私たちの魔力はおいしくないですよ」ってぼくに言ってくるけど、どうしてなのかよくわかんないんだよね。




