18話 お仲間発見
ぼく、トカゲン。
ある日ジェリーに捕まって、主の眷属になった。
眷属って本当なら強くて役に立つ魔物を選ぶのに、ぼくでよかったのかなあ。
ぼくは主からエネルギーをもらえるから寿命が延びたけど、主の利益になれるような働きができていないんだよ。
せめて、主の仕事を少しでも楽にしようと、屋敷中の天井をキレイにしまくった。
そしたらもうぼくの仕事はないんだって。ぼく主の役に立ちたいのに。
そういえば、主は誰かを探しているらしく、毎日お屋敷中を駆け回っている。
でも、主の会ったことのない人だから、カレンっていう名前しかわからない。主が会ったことがあれば、記憶を共有してぼくも探してあげられるのになあ。本当、役に立たないんだ、ぼく。
テトテトと壁を登り、天井裏に着いた。
この間、主とよく一緒にいる人が「天井裏から埃が落ちてくるのよ、困っちゃう」って言ってたから、ぼく天井裏の掃除をすることにしたんだよ。
きっと主も困ってるだろうから、ぼくがんばるんだ。
ちょっとは主の役に立つかもしれないし!
ぼくがしっぽを使って埃を集める。
『ジェリーは食べてあげる~』
やってきた先輩が埃を食べてくれると、そこら辺りが美しく輝いた。
さあさあ、まだまだ広いですからね。次の仕切りに移りますよ、先輩!
『あ〜なんかある~、お、べらうま』
べらうま?
わわ!食べちゃダメですよ、先輩!それ、ぼくの仲間です!
主~、主~。
あれ、繋がらないなあ。
主~、主~!
『どうした?トカゲン』
あ、主~!仲間がいるんですけど、回収してもいいですか~。
『仲間~?どれどれ。……いいんじゃない?』
主の許可が出ました。よかったです。
なんていっても、ぼくら、主の生命力で生きてくことになりますからね。
待っててくださいね、みんな。
えい、パク。パク、パクパク。パクパクパク……。
『た、食べちゃうの?』
食べてるんじゃないですよ。ぼくら、雄のお腹で生まれるんすもん。
でも、なんか多いっすね。他の雄もこんなにがんばってるんですね。
うっし、ぼくも雄ですから、やるつすよ。
みんなちゃんと孵化させてあげますからね、うえっぷ。
ふ~食った食った。
『ぜ、全部よく入ったねぇ。すごいたくさんあったように見えたけど』
主が動揺してますね。やっぱりこの数では負担だったでしょうか。
それにしても、なんの卵だったんでしょうね。
ぼく、孵化させたことないから、楽しみです、主。
『って、なんの卵かわからないで食べたの?仲間って言ってなかった?もう消化しちゃいなよ。おいしかったって』
……主、誘惑するのはやめてください。
その言葉、お腹がすいたときに思い出したらどうするんですか。
あっ、卵が合体しはじめたっす。
プチンプチンと合体するたび、なんかいっぱい吸収されるのがわかりますよ。
主の生命力、大丈夫でしょうか。
あ、でもクセになりそうです、プチン。
はあ、はあ、これは困りました。
こんなに快感に支配されている姿を主に見せるわけにはいけません。
主、ぼく、この子達を孵化させるまで、主に会いにいけないっす。
役立たずで親不孝者で本当に情けないですけど、許してください、プチンッ。
『ジェリー近くにいてあげる~』
いや、いない方がありがたいんですけど、先輩。
『じゃあ掃除もしてあげる〜』
ああ、キレイになっていきます。先輩はすごいです。
ぼくは主に迷惑だけかけて、やっぱりダメダメですね。
『あ、むちゃうま』
『あ、コレうま』
きっと先輩、また違うもの食べちゃってますね。
ぼくお腹いっぱい過ぎて動けないですけど。
仲間の卵でしょうか?助けてあげられなくてごめんなさい。
『た、た、た、助けてください!そこの方!』
『あの方を止めてください、そこの方!』
な、なんですか!?
重たい身体を起こして見ると、チュズミさんじゃないですか。
も、もしかして先輩が今食べてるのって……。
先輩!ちょっとこっちに!
『な〜に?』
お客さんですよ!
『お客〜?』
さ、みなさん、先輩にお願いしてみてください。ぼく、動けませんから。
チュズミさんに声をかけると、ぼくの身体に隠れるように後ろから懇願し始めた。
『お願いです。もうこれ以上私達を食べないでください』
『仕方ないな〜。覚悟は決まったか〜?』
覚悟、ですか?
『1番偉いヤツ〜』
『は、はい。わたくしめでございます!』
『ん』
チュズミさんたち、ひどいひどいと泣き出した。
ひどくないですよ!コレはあれです、アレ!
みなさん、よかったですね!ぼくと一緒です!
ほら、透明になっていくでしょう?
どうやらチュズミボスが、仲間になったようですよ!




