14話 得意な仕事は部屋掃除
ここにやってきて、10日くらい経った。
大きなお屋敷なだけあって、部屋数がすごいのよね。
みんなそれぞれ1日のノルマを指定され、ノルマをこなせばたっぷりのお給料をもらえる。
しかも、それがその日払いでさらにテンション上がる。
けれど、ノルマをこなせなかった場合にはペナルティがあるらしく、過酷な契約はしないようにしてるってキカネが言ってた。
私のノルマは1日100部屋。もちろん適当にやったらやり直しを食らうから、むっさ丁寧に磨き上げるよ……ジェリーがな。
いや、いろいろ試行錯誤した結果、ジェリーがやるのが一番早くてきれいになることが判明したのだ。
もちろん私も、水と風を使って手伝うけど。
1部屋50カーネで100部屋分。1日で5000カーネもらえるの。早く終わればその日の仕事はもうない。
早く終わらせれば、このお屋敷内を捜索できる時間が作れるってわけ。
他の子は1日30部屋契約の子が多いらしいけどね。
さて、今日もやりますか。
〈机、椅子、棚、この部屋の全ての物達よ、浮き上がれ!〉
よ~し、今のうちに一気に床掃除。
水で汚れを一気に流して風で乾かす。片隅に溜まった汚れをジェリーがパクン。
床にあったシミを見つけては、ジェリーがパクン。
ジェリーがんばれ!
ん、綺麗になったな。
ベッドや棚を降ろすと、今度は新しいシーツやタオルを置いていく。
風で広げて空気で折り込む。皺1つない美しいベッドメイキング~。
上を見ると壁や天井をトカゲンが高速で這いずり回っている。手の届かない天井のシミも汚れも埃も全て消え去った。
うっし、この部屋終了っと。
1部屋2分程度で掃除して、全部屋が終わるのに4時間かかる。結構な重労働よ。
よし、次に移動!
ガラッ!
「ああ、ここにいたんですね」
急に音もなく部屋が開いてびっくりしたよ~。
机とか浮いてる時じゃなくてよかったあ。
「どうしたんですか。マーダさん」
ジェリーはベッドの下に隠れたっぽい。
「アレスさんは1日に1人で100部屋を掃除してしまいますから、どこにいるのか探すのが大変でしたよ」
ふふふ、おかげでお金がたくさんもらえるもんね。取っ払い最高~!
思い出し笑いをしていたら、マーダさんが真顔になった。
「アレスさん、無理をしているのではないですか」
そう?そんなことないけど。
「こんなにやつれてしまって……。アレスさんがそこまでお金を稼ぐのを必死になるのは、何か借金など大変なことがあるのでは?」
ジリジリ寄って来るマーダさんコワイ。
「私いたって元気なので、心配しないでください」
明るくハキハキと元気をアピールする。
「そんなはずがありません!あんなにあったお胸がなくなっているではありませんか!」
ん?
あ、ジェリー入ってなかったね。
「あのお胸を取り戻すために、少し仕事の量を減らし……ぐはっ!」
なんか思わず右手が出ちゃって、マーダさんが飛んで行ったんだけど、私悪くないよね?
お仕事、やめさせられないよね?
『アレス~、次のお部屋行かないと、ご飯食べられなくなる~』
は!そうだった。マーダさんに邪魔された。
まだ後50部屋残ってるもん。急がないと!
「あと、20部屋終わったら一旦休憩しようね」
『わーい』
ジェリーとトカゲンの動き回るスピードが増した。
ふふふ……何やら懐かしいことを思い出させてくれますねえ。
興味を持ってしまいますよ、アレスさん。




