10.ロリババア先生はやっぱり鋭くて、私は順調にざまあフラグ獲得に邁進しててもう泣きそう。
「うげっ!
ロリバッ……っ」
「あん? 今なんて言おうとしたのじゃ?」
「あ、いえ! なんでもございません、エミーワイス先生っ!!」
やべーやべー。危うくロリババアって言うとこだった。ほぼ言ってたけど、まあこの世界にそんな言葉ないだろうから大丈夫やろ。
「まあいいじゃろ。
ともかくの。少しばかり周りを見てみることじゃな」
「ほえ?」
ロリババア先生に言われて、ルビーから目を離して周りに目を向けてみた。
「……あ」
白、白、白、ホワイト。めちゃくちゃ白い目がたーっくさん。ホワイトって二百種類あんねん。
そうだった。今は絶賛入学式の真っ最中で、しかもルミナリアの演説真っ最中なんだった。
当のルミナリアたんは眉間に皺を寄せてこっちを見とる。怪訝な顔してても美しい……じゃない!
めっちゃ目立っとる! 私!!
「理解したかの?
仲良しのお友達が出来たのは良いことじゃが、時と場所を考えるんじゃな」
「……申し訳ありません」
もはや謝ることしか出来ぬ。
「うむ」
両手を組んで頷くゴスロリババア。
なんか、イメージ通りのお人やね。
「……あ」
「……ん?」
ルビーさん?
あーたも早く謝った方がええで?
こういう時はね、謝ったもん勝ちだから。意地張ってても損するだけだから。
「……あ……ああっ……」
「ルビー様?」
なんだかルビーの様子がおかしい。
酷く怯えた様子でロリババア先生の方を見てる?
「ああ。ルビー・シュタルク。
威圧しすぎたかの。
ほれ。これで大丈夫じゃろ?」
「え?」
「あっ……」
「ルビー様っ!?」
ルビーが突然、ふっと力が抜けて倒れそうになったので慌てて抱き止める。うん、甘くて素敵な香り。
「だ、大丈夫ですか?」
「え、ええ……大丈夫、ですわ。申し訳、ありません、わね……」
すごい汗、あんど顔色悪い。
「いや、やりすぎたかの」
「……先生のせいですか?」
ルビーをこんなにしたのは……。
「はっはっはっ。そんなに怖い顔をするな。
なあに。少し強めに魔力を当てただけじゃよ」
「……」
強めって。あんたの化け物みたいな魔力を直接向けられたら学院の生徒なんて廃人まっしぐらやろ。
いくら加減したからって、それを生徒に向けるなんて……。
「……」
「……ふむ。グレース・アイオライト。言ったはずじゃ。時と場所をわきまえよ、との」
「!」
あ、やべ。
危うくこんな所で本気で魔力を解放してやり返す所だった。
今の私じゃ返り討ちにされるだろうけど、そんなの構わずやっちまうとこだったよ。友達のピンチには黙ってられないのは前世からの悪い癖だね。
私が魔力を発する前にロリババア先生が察して止めてくれたから助かった。
「……申し訳、ありませんでした」
「……ふむ。まあいいじゃろ。
しかしあれだの。お主は噂に……」
「!」
あ、これやべー予感っ。
「噂と違って、魔法も魔力もたいしたことなくて期待外れ、ですよねっ!?」
「……む?」
言われる前に先手を打つ!
「実際、私は下位貴族の中では魔法が使える方なのかもしれませんが、高位貴族の皆様には遠く及びません。
なので、学院では皆様にご迷惑をお掛けしないよう精一杯精進し、少しでもお役に立てるように努力していきたいと考えておりますっ!!」
「……ふむ」
頼むよう。あんだけ空気読め言ってたんだから、あんたも空気読んでくれよう。
ほら。今の発言で周りの生徒たちも「殊勝な心掛けだな」とか言ってくれてんじゃーん。期待外れだけど悪い奴じゃないキャラでいきたいんよー。
「……」
「……」
お願いしますー。ロリババア先生、いえ、エミーワイス先生!
『……よく分からぬが、お主は自分の実力を隠したいということじゃな?』
ぬにゃ!?
な、な、なんか、頭にダイレクトでロリババア先生の声が響いてきたのだがっ!?
これは、思念伝達の魔法? そんなのあるの? なんの属性?
『どうなのじゃ?』
えーと、どうすりゃいいんだろ。
おんなじように自分の言葉を先生に伝えようと思えばいいのかな?
『そ、そーです!
なので、口裏を合わせていただけると助かりますー』
『ふむ……』
あ、出来たっぽい!
なにこれ! めっちゃ便利! 欲しい!
『……グレース・アイオライト。ひとつだけ聞きたい』
『な、なんでしょう?』
てか、この人はなんで私の実力が分かったんだろ。魔力だって、実際には出力してないから本当の実力なんて分からないはずなのに。
ん? てか、この人はその前から私の実力が噂に違わぬものだって言おうとしてたのか。
『……お主の目的はなんじゃ?』
『!』
酷く冷たい言葉を投げ掛けられたような気がした。返答次第では私の命なんて一瞬で刈り取られてしまいそうなぐらいに。
『私の、目的は……』
返答を間違えれば、私はこの人に敵認定される。
今の私じゃこの人に勝てない。
ここは……。
『のんびり平和に、何事もなく学院生活を送ることでございます』
『……は?』
偽らない、だ。
『私には父から命じられていることがございます』
『……』
たぶん、この人は私の家のことを知ってる。
王位簒奪。軍事国家化。帝国への宣戦布告。
それらを狙う一派だと。
そしてこの人はそれを警戒してる。
だから私の狙いを、真意を探りたいんだ。
『しかし、私にはそれを実行するつもりがありません』
『……ほう』
嘘をつくな。誤魔化すな。この人にはすぐにバレる。
かといって本当の真実も言ったらダメだ。物語云々のことやグランバートのことは。
嘘はつかずに隠したいことは言わずにやり通せ。
『父には適当に進捗を報告しつつ、私はこの学院で腕を磨きながらひっそりと生きていきたいのです。
父にそれがバレた時に、一人で生きていけるように。
ですので、私の目的はこの学院でのんびり平和に、かつひっそりと生きていくことでございます』
『……つまり、父親の一派の策謀に従うつもりはない、と?』
『はいっ』
最後の返事にはこっそりと光の魔法の【言霊】をのせる。
言葉に真実味を持たせる魔法。うまいこと思念にものせることが出来た。むしろ、外に発してないからこの会場の結界の中でも使えたのかも?
『……まあいいじゃろ』
『あ、ありがとうございます!!』
よっしゃ! 通った!!
「……ふむ。噂とは違い、実力はお主が言う通りのもののようじゃの。
これから勉学に励めば少しは期待を持てるじゃろ。
せいぜい頑張るのじゃな。
ああ。あと、今は静かにの」
「はいっ! 申し訳ありませんでしたっ!!」
「あ、申し訳、ありませんでした……」
「うむ。分かれば宜しい。ではの」
ロリババア先生が後ろ手に手を振りながら去っていく。
ルビーもだいぶ回復したみたいで、最後にはちゃんと謝ることが出来た。このままじゃ他の人からの印象悪かったもんね。
てか、あれだね。
あのロリババア先生は私にもルビーにやってたのと同じ威圧? をかけてたんだね、きっと。
なんかそんな雰囲気は感じてたけど、また反応しちゃダメなやつだと思って知らん顔してたわ。
でも、ルビーの反応が本来の一般生徒としての正しい反応だったんだ。
なのに、私は平然とした顔で「さーせん」とか謝ってきて、普通に会話までしてきやがった。本当はルビーみたいに恐怖状態になるほどの威圧だったのに。
そりゃ、ロリババア先生のアンテナに引っ掛かるよね。
「……」
なかなか難しいね。
他の生徒たちは気付いてないだろうって知らん顔してるだけじゃダメなんだ。反応も一緒にしなきゃ。
単独で行動してる時とか、他の生徒の反応が見られない時にそういう場面に出くわしたらアウトだね。
これはまずはこの学院の生徒の平均的な反応を調べることから始めないといけないのかもね。え、ダルっ。
『ああ、そうそう』
『わにゃっ!?』
ビクッたー。ロリババア先生てば、もう席についてんのに思念伝達してきおった。危うく声に出すとこだったやん。完全に嫌がらせやろ。効果範囲どんぐらいやねん。
『口裏を合わせた代わりに、放課後ワシの研究室まで来るように』
『……え、やだ……』
『拒否権はないぞ?』
『……ういむしゅー』
『……なんじゃそれは?』
『……はい喜んでー』
『……棒読みじゃが、まあいいじゃろ』
ですよねー。
タダでのってくれるわけないですもんねー。
くそう。
物語のメインキャラではないとしても、かなり面倒そうな人に目をつけられてしまった気がする今日この頃いかがお過ごし?
「……なんだか、疲れましたわ」
「……わたくしもですわ」
その後は滞りなく式典は終了し、私たちは各クラスに分かれて担任の先生のもとで詳しいカリキュラムの説明を受けることになった。
私とルビーは息も絶え絶えで教室へと、とぼとぼとぼぼ……。
いや、なんかもうマージで疲れたよ。
初っぱなから筋肉ダルマとルミナリアと絡み、グランバートに手汗を舐められ、ライトの謎面接を経て、ロリババア先生にバレて。
え、てか、私ほとんど終わってね?
メインキャラと関わりすぎじゃね?
やらかしすぎじゃね?
これも物語の強制力様の思し召しでございますか?
だとしたらちょっとハイペースすぎん?
本来の物語だってもうちょい気長だったでよ?
なにこれ。フルマラソンを全力疾走しとるやん。
もうやめて。私のライフはもうマイナスよ!!
「……わたくし、このあとの説明をまともに理解できる自信がありませんわ」
「わたくしもですわ」
ほら見ろ。ルビーの口調が移っとるやんけ!
「……でも、グレースさんと同じクラスになれたのは良かったですわ」
「……それは、こちらこそ!」
「うふふ」
「ドゥフフ」
そうなのよ。ルビーと同じクラスになれたのよ。
事前にクラス分けは決まってたらしいんだけど、ロリババアが謎のウインクをこっちに放ってたから何か細工したのかもね。ま、それには最大限の感謝をするよ。あざーっす。
「ようっ!
グレース・アイオライトにルビー・シュタルク!
なかなかに面白かったぞ!!」
「で、殿下っ」
「……(うげ)」
でもね。
「貴女たち。先ほどのこと、猛省なさいね」
「……お姉様。申し訳ありませんでした」
「も、申し訳ありませんでした」
ライトとルミナリアまで一緒のクラスにすることないじゃんかーーーーっ!!
「ふんっ! ルビー様はともかく、男爵令嬢は特に弁えるんだなっ!」
「……」
いや、誰お前……あ、筋肉ダルマか。あんたライトの取り巻きだったのか。一話だけのぽっと出かと思ってた。あ、知り合いだからルミナリアも筋肉ダルマゆーてたのか。完全にそういうキャラなんだね。
よろしくー。物語には出てきてないオリキャラさーん。
なんかもうオリキャラ多すぎて誰が重要キャラなのか分からんけど、とりあえずよろー。
「ガルダさん。本当に、申し訳なかったですわ」
「あ、い、いえ。ルビー様は何も悪くないのです! そこの男爵令嬢が全ての元凶に違いありません!」
「おーい。ずいぶんな言われようでございますわー」
「そんなっ。グレースさんはわたくしに付き合ってくれただけですわ」
「そんなことはありませんっ! 男爵令嬢が騒ぎ立てなければエミーワイス先生もお叱りにならなかったはずですっ!」
「……え、私の声聞こえてませんの?」
筋肉ダルマガン無視なんだが。
「ごめんなさいね、グレースさん。
ガルダったら、昔っからルビーに首ったけなのよ」
「ルミナリア様……」
あ、そゆこと?
言われてみれば、顔面も全身の筋肉もほんのり桃色でだいぶキモいな。
「だからルビーのことになるとああなってしまうの。許してあげて」
「あ、はい。それはもちろんー……」
てか、なんか普通にルミナリアと話してるんですけどーーーっ!!!
くそう。最初に立てた「我、不関」の誓いはどうした!
これは非常にマズいで!
ルビーの友達になるからには多少の関わりはやむなしとは思ってたけど、これ完全に主人公一派に加わる流れじゃね!?
「……あのね、グレースさん」
「あうっ。は、はいー、な、なんでしょー」
あかん。
ルミナリアとは関わったらダメってのもあるけど、その前に推しに話しかけられてるっていう事実にオタクのダメなとこが出てる。
いやいや、ルミナリアたんマージで綺麗だな。
グランバートのイケメン具合もエグいけど、ルミナリアのちょっと妖艶なぐらいの色気もヤバい。もうヤバいしか言えないぐらいヤバい。あかん、(語彙力)ってやつや。
流れるような艶やかな、なんなら艶かしい黒髪におっきな黒真珠みたいな黒目。ちょっと猫目なのもズルいんよ。
一見、ちょっとキツそうに見えるのに上品で落ち着いてて。そのギャップにくらくらよ。
「……ありがとう。ルビーと友人になってくれて」
「え?」
「……あの子、私のせいで昔からあまり友人を作れずにいたの。だから一人でいることが多かったわ。
だから、あの子があんなふうに嬉しそうに笑っているのを見たのは久しぶりで、嬉しかったわ……」
「……ルミナリア様」
そう!
しかも優しいのよ! この人!
ライトとグレースに国外追放された時も、追求して捜査して糾弾すれば二人が断罪されるからって何も言わずに国を出ていったのよ。ざまあしたのだって、グランバートが王国のためだとルミナリアを諭さなければ起きなかったぐらいだからね。
ホント、根っからのいい人なのよ、この人。どーよ。私の推しは!!
「おいっ! 男爵令嬢!
ルミナリア様と親しげに話すなど無礼だぞっ!」
なんやねん。筋肉ダルマ。
「ガルダ。グレースさんを悪く言うのはわたくしが許しませんことよ」
「はっ! 承知しました!
おいっ! 男爵令嬢っ! これから仲良く頼むぞっ!」
「それで宜しくてよ」
「……なんなん」
「ふふふ」
ルミナリアたんの、手を口に当てた微笑みが可愛いから許してやるけど、やっぱり普通の人の私に対する態度ってこんな感じなんだろーな。なんか筋肉ダルマは仲良くしてくれるみたいだけど。
「……ふんっ。私は認めませんよ。そんな下位貴族」
「え?」
「もう。サイードったら」
ん? 誰?
え、ずっと後ろにいた?
ぜんぜん気付かんかった。
「……サイードっ」
ルビーのじろり攻撃炸裂。
「いくらルビー様の意向であっても、この伝統ある王立学院において男爵家などという下位貴族の令嬢など、認められていいわけがありません。
たとえ学院が入学を認めても、私は認めませんからね」
「もう。ごめんなさいね、グレースさん。
サイードったら頑固で」
「あ、いえー」
ポジション的には筋肉ダルマ(ガルダだっけ?)と同じライトの取り巻きかな?
紫色の髪、ちょい長め。細めのメガネ男子。理知的、っていえば聞こえはいいけど、まあヒョロメガネガリ勉って感じかな。顔はそこそこ整ってるけど。
キャラ的には生徒会長タイプ?
「ふんっ」
「……」
なんて冷たい目。
どうやらかなり選民思想が強いみたい。
まあ、本来なら高位貴族しか入れない王立学院だからね。男爵令嬢なんて、異分子でしかないんだろうな。平民と大差ないとか思われてそ。
どうしよっかな。
このままこの人に私をこのグループから弾いてもらって、ライトたちとは距離をとってルビーだけと付き合っていくように振る舞おうかな。
前世ではこの類いとは距離をとってたから付き合い方が分からぬ。下手すると同類と思われるポジションだからね。私みたいなメガネクソ陰キャオタクjkは。
私はあんな周囲と隔絶した確固たる自分ポジションスタイルでは生きていけなかったからなー。基本的に大衆に迎合スタイルの事なかれ主義だったからなー。
今回はあのタイプの人を逆に利用させてもらうのもありかもなー。
「こらっ! そんな人を見下すようなことは俺が許さんぞっ!」
「……ライト殿下?」
その時、横からライトが話に割り込んできた。
「……とにかく、私は貴女を認めませんよ」
「あ、おいっ! 待て! サイードっ!!」
ライトを疎ましそうにすたこら去ってくサイードさん。
大丈夫? ライトの取り巻きやろ、あんた。王子をシカトて。
「いいかっ! そもそも我が王家は……」
「行きますわよ、グレースさん。サイードのことはおいおい。まずは教室へ」
「え? ルビー様まで」
「私ももちろんご一緒するぞっ!」
いや、筋肉ダルマは王子の話を聞いたれや。
「ほっといていいわよ。殿下はああなると長いもの。大丈夫。私が適当に相手しとくわ。
先に行ってちょうだい」
「ルミナリア様まで……」
「時は遡ること数百年! 始まりの王は平民にも分け隔てなく……」
「うんうん。そうですねー」
ライトさん? もうサイードさんいませんよ? それ、誰に話しとるん?
「ほら。今のうちですわよ、グレースさん」
「は、はあ……」
いや、皆ライトの扱い雑じゃね?
そんな感じなん?
けっこう大事なこと言ってない? てか、いいこと言ってそうだけど?
「我ら王族もまたその精神に則り、この王立学院においても……」
「それは素晴らしいですねー」
「大丈夫ですわ。ライト殿下は教室に着く頃にはわたくしたちが逃げたことも忘れますもの。
ルミナリアお姉様が上手く聞き役に徹してくださるから、殿下も気持ちよくなって楽しくなってしまうのですわ」
「……う、うん。皆がいいならいいのだけどね」
なんか、ライトのキャラがどんどん崩壊してくんやけど。
なんだろ。
原作勢がアニメの改編についていけないみたいな気分。
コミカライズでちょっと変更されて、「お、おお……」みたいな感じだったのに、アニメ化で完全に原作とは別人のキャラになってて戸惑いを隠せないみたい状態よ、今。
こんな、側近にさえ適当にあしらわれるようなおバカな王子が次の王になる予定だったの?
てか、私はよくこんなんを次の王にしようとしたね。まー、たしかに操りやすそうではあるけど。
「ほら。グレースさん」
「あ、はい」
差し出される手を取り、教室に向かう。
筋肉ダルマが羨ましそうにしてるのをシカトする。
「……!?」
走り去る私にルミナリアがウインクをしてきた……ウインクをしてきたぁーーーーっ!!!
「ごふっ!」
「グ、グレースさんっ!?」
「あ、大丈夫です。ただの発作、いえ、なんにも問題ないです。ほっといてくださればそのうち復活するです、はい」
「そ、そうですの?」
ホントに吐かなかった私を誰か褒めてほしい。
嬉しすぎて、尊すぎて吐きそうになったのは初めてだったのでしたとさ、ぐふ……。
「はあ、はあ」
「ふぃー」
ルビーに合わせて疲れたフリをする。
「大丈夫ですか? ルビー様」
「うん。平気よ、ガルダ。ありがとう」
おい。私の心配もしろよ、筋肉ダルマ。
なぜか教室まで走ることになった私たちは無事に教室の入口に到着したのでしたとさ。
「うふふ。久しぶりに走ると疲れるけれど、やっぱり楽しいわね。お友達といるからかしらね」
「そうかもですねー」
まぶしい。ルビーたんがまぶしいよぉ。
なんで走って汗かいたのにそんなにフローラルな素敵な香りのままなの?
え、てか私は大丈夫? 汗臭くない? 魔法で浄化しよかな。あ、でもそれは光の属性の魔法だからダメだ。
「さ、いきましょ」
「あ、は、はいー」
しゃーなし。
まあ、今の私はサラサラ金髪ヘアーの青いパッチリお目々の、ちっちゃいのに豊満なお胸を持った無敵美少女だからね。
くんくん。うん。匂いだってお日様みたいで、かつ甘いいい香り。
バッチリファーストインプレッション決めてやんよ!
ガラガラガラ、と教室の扉が開かれる。
たのもー!!
「……」
「……」
「……」
「……来たぞ」
「しっ」
「……」
うん。ハイパーアウェー!!
ステラー! もうおウチ帰るー!!




