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貴方は尊いのだから  作者: 若葉マーク
始まり
39/59

第37話 丸山先輩、思い切る

自分の中でだんだんお気に入りの人物が固まり始めました。

放課後、例によって菅田すがた先生の手伝いをしてから職員室を出る。菅田先生は「誰も手伝ってくれないのよ」と嘆いているので、役に立てるならと思うのだけど、最近はコピーを取りながら菅田先生の身の上話を聞いているだけになっている。


職員室を出て、廊下を少し進んだところで後ろから声をかけられた。


「こっ、こんにちは立木くん!」


すぐに、丸山先輩だと分かる。振り返り、笑顔で挨拶した。丸山先輩は校舎に差し込む夕陽のせいか顔が真っ赤になって見える。


丸山先輩はしばし、僕を見つめていた。そして、「あのっ!」と大声を出す。その後、声は急激に小さくなり、「あの、一緒に、その、一緒に、帰ってくれないかな・・・?」と、最後は消え入りそうな声で言った。


僕は「もちろん、いいですよ」と返す。前も一緒に帰ったのだし、そんなに緊張するようなことでもないだろうとは思うけど、丸山先輩は恥ずかしがり屋なのかと勝手に納得する。


校舎を出てからすぐ、丸山先輩の妙な緊張の理由が分かった。


「立木くん、その、もし良かったらで良いんだけど、どこかでコーヒーでもどう、かな?いや、ほんと時間があって立木くんの迷惑にならないならってことで、その、あの、ほんと」と、先輩がしどろもどろに言うので、僕は思わずくすりと笑ってしまう。「いいですよ。駅前のコーヒーショップに行きましょう」と答える。


丸山先輩は、「ほんとっ!?迷惑じゃない?」と言いながらも嬉しそうな表情をしている。


「全然、迷惑じゃないですよ」と言うと、丸山先輩は胸の前で手を組んで、「ありがとう!」と喜んでくれた。


駅前のコーヒーショップに入り、注文をする。先輩は甘くて冷たいコーヒー、僕は温かいブラックコーヒー。先輩が奢ると、頑として譲らなかったので厚意に甘えた。


「立木くん、意外と好みが硬派なんだね。私、甘いのしか飲めなくて」と、先輩は照れながら言う。そして、「女らしくないかなぁ、カッコ悪いかな」と、カップを弄ぶ。


僕が「そんなことないですよ。可愛いと思います」と微笑むと、先輩は「可愛い・・・、うーん」と腕組みをして目を瞑ってしまった。言葉のチョイスを間違えてしまったかな?


話題を変えようと、「先輩、この前教えてくれたマンガ、読んでみました。絵がとても綺麗だったし、主人公の男の子もすごく可愛いですよね」と話題を振ってみる。


先輩は、「でしょ?やっぱり面白いよね!?まるで美少女のような男の子なんだよね!」と、楽しそうに語る。やっぱり、先輩は好きなことを話している時が一番可愛いと思う。


先輩が、「立木くんの好みももっと知りたいな、映画とか音楽とか。ラインだとあらすじとか書くと長くなっちゃうし、直接話したかったんだ」と、すっかりリラックスした様子で話す。


「映画はよく観てましたよ。スポーツ系のばかり観てた時期もありましたし、音楽が気に入って、そこから好きになった作品もあります」等々、映画のタイトルを何個か挙げると、丸山先輩は知ってる作品が出てくると嬉しそうに内容について感想を言う。自分の好きなものを他の人が好きだと言ってくれるのは嬉しいものだ、と思う。


丸山先輩は、映画については「悪食だよ」と笑う。超大作から、素人が撮ったんじゃないかと思うような低予算なものまで。あらすじを聞くだけで面白いのは、きっと丸山先輩が映画をとても愛しているからだろう。


「先輩、ほんとに映画が好きなんですね」と言うと、先輩は「漫画とかはそうでもないんだけど、映画のことになると語っちゃうんだよね」と照れたように笑う。「立木くん、退屈じゃないかな?マイナーな映画のあらすじばかり話してるような気がするし」と、今度は心配そうに言う。


「そんなことありませんよ、先輩と話すの楽しいです」と答えると、先輩は「そうかな・・・」と頬を染めた。


その後は主に音楽の話になった。先輩は音楽にも造詣が深いらしい。いくつかおすすめのバンドを教えてもらう。意外にも、先輩が一番好きなジャンルの音楽はヘヴィメタルだった。大人しそうな先輩がヘッドバンキングをする姿はあまり想像できないな・・・。先輩は一番好きだと言うバンドのことを熱っぽく語る。曲だけでなく、ビジュアルも凄いんだよ!と携帯の画像フォルダを見せてくれる。

確かにすごいビジュアルをしている。怖いものが苦手な人は夢に出てきそうな、何とも厳つい仮面をつけている集団だった。


丸山先輩はすっかり満足したらしく、僕に何度もお礼をしながら店を出る。僕の方も、コーヒーを奢ってもらったお礼を言う。そして、先輩と話すと色々なことを知れるので楽しいです、と伝えた。


先輩は、店に入る前のようにまたぎこちない雰囲気で、「もし、立木くんさえ良かったら、またお喋りしてくれるかな・・・?」と、俯き加減で言う。


僕は「ええ、是非また」と答えた。


先輩はとても嬉しそうだ。僕としても、気軽に話せる人が増えるのは嬉しい。それに、先輩は可愛らしいから単純に一緒にいるとなんだか癒される。


駅で先輩と別れる。先輩はとても名残惜しそうに手を振ってくれる。僕も手を振り返して、改札を抜けた。








遅筆になってきましたね。しかも同じようなネタの繰り返しに(笑)

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