週間リーク 特集3 〜カルト教団と闇バイト〜
一昨年の5月、白昼に堂々と行われた銀座の高級時計店の強盗事件を、読者諸氏はご記憶だろうか。
この1件だけでなく、2023年は闇バイト関連の事件が全国で多発した。
この闇バイト事件は、ほんの出来心、小遣い欲しさから闇バイトサイトへ応募した若者達が、身元を抑えられている恐怖から無謀な犯罪に加担させられている。
また、襲撃先については事前に詳細に調べられたリストが存在したこともわかっている。
闇バイト事件が大きく報じられた当時、世の大人たちは巻き込まれた若者達が、友人や親や警察になぜ助けを求めなかったのかと首を傾げるしかなかった。
大人たちは知らないのだ、現代の若者達は、人間関係に心地よさしか求めていない。心地よさを乱すものは悪なのだ。
本誌では、若者たちに多く取材している。彼らが抱える悩みや問題を友人に相談すればいいだろうと問いかけると、彼ら、彼女らは友達にそんなことは絶対に言えるわけがないと言うのである。
筆者などは悩みを相談できずに何が友人かと思うのだが、読者諸氏はどう思われるだろうか?
かくも、現代若者の人間関係はドライ&クリーンなのである。
昭和は遠くなりにけり。友達に言えないことを、家族や警察に言えるはずもない。
脅威が目の前にあり、味方はなく、自分にはその脅威を撥ね返す力もない。絶望である。
この事件の構造を簡単に抜き出してみると以下のようになる。
①匿名のネットと実名のリストを元に
②ささやかな希望からの絶望で若者を思考停止に
③犯罪によって金儲け
この構造を少し書き換えたものを見て欲しい。
①匿名のネットと実名のリストを元に
②ささやかな不満から身に余る幸福感で若者を思考停止に
③宗教によって金儲け
お気づきだろうか。そう、本誌は闇バイトの構造と天の階教会の構造が同じであることを指摘したいのである。
それだけではない、派手に稼いでいた闇バイトが摘発されたが、生き残っているものもいる。
それらと天の階教会との接点を我々は入手した。
蛇の道はヘビ。オレオレ詐欺を取材していた際に、繋がったリスト屋の一人Y氏から本誌へタレコミがあった。
Y氏は、霊感商法の被害者リストや投資詐欺の被害者リストの他にカルト教団の信者リストも扱っている。カルト教団の中には天の階教会も含まれていた。リストの売り先は、A組、B会、ハングレのCだ。
それら3者とほぼ均等に取引をしていたが、反社であるA組、B会との取引額が頭打ちとなり、やがて減少に転じるとハングレCから、Y氏の手元にあるすべてのリストを自分に売ってくれるように言ってきた。
Y氏がどうしたものかと悩んでいるところに、A組とB会からそうしてもらって構わないという連絡が入った。
それからハングレCとの専売取引が始まったのだが、そこで、不可解なことが起こり始める。
Y氏が新たに入手する天の階教会関連のリストに、過去にハングレCに流したリストと重複するものが現れ始め、それが日増しに多くなっていったということだ。
ここから推察できることは、Y氏から得たリストを元に、ハングレCが天の階教会の信者獲得に何らかの形で関わっているのではないかというものだ。
Y氏からハングレCが具体的にどのような動きをしているのかは聞き出すことはできなかった。
本誌は、ハングレCがリストの人物に攻撃を仕掛ける、そこに天の階教会が救いの手を差し伸べるといったシナリオが存在するのではと推測する。
実名リストは以上だとして、匿名リストの方はどうか?
本誌の調べでは、ミスターXも、ハングレCもネットに詳しいという印象はない。
つまり、まだ、辿り着けていないピースがあるのだ。
今後、そのピースを突き止め、読書諸氏にお伝えしたい。
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「おい、鳴門!何だこりゃ、記事になってねぇじゃねぇか!」編集長が原稿を机に叩きつける。
編集部の空気が緊張する。鳴門は疲れ切った目を編集長に向ける。
「舐めてんのか!6行目から23行目までいらねぇよ。書き直せ、馬鹿野郎!30分な!」
ふぅ~と溜息を付き、”そらそやろな・・・あかんもんはあかん”と胸の内で呟いて、鳴門はキーボードを打ち始める。
鳴門礼二は記者となって大阪から東京に出てきて10年になる。
編集会議で天の階教会の特集の話が出たときに、自ら志願した。
前に手掛けたハッカーを特集した記事が好評だったこともあり、メイン担当を任されることになったのだった。
鳴門は3日風呂に入っていない脂ぎった頭を抱える。
伝えるべきことと、伝えたいことがごっちゃになる。
事実と考察が不明瞭なまま、締切だけが明確に意識され、半熟の記事を編集長に出してしまった。
自分のものにしたしたいという思いと、自分の手に負えないという思いが交互に襲ってくる。
鳴門は分厚いレンズの入った黒縁メガネをぐいっと上げた。今は、ただ、記事としての体裁を整える事に注力する。




