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前世で処刑された大聖女は、聖女であることを隠したい  作者: 延野正行
第二章

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第21.5話 聖女は反省する(後編)

◆◇◆◇◆ コミカライズ更新 ◆◇◆◇◆

拙作『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』を原作とする

コミカライズ作品が、コミックノヴァにて最新話が更新されました。

日曜日にはニコニコ漫画でも更新されますので、是非ご覧下さい。


挿絵(By みてみん)

 王宮を辞すると、すっかり外は暮れていた。

 思いの外、アーベルさんと話し込んでしまったらしい。

 私は元聖女で、向こうは現勇者。どうやらこの肩書きに関しては、切っても切れない関係のようだ。


 結局、昼食に、紅茶、スコーン、お菓子までご馳走になった。

 おかげで今、私のお腹は幸せに満ち足りている。

 久しぶりの王宮生活で、ちょっと肌つやがよくなったような気さえするわ。


 あ……。いけない。いけない。


 贅沢は今の私にとって敵よ。私は普通の貧乏貴族令嬢で、魔術師なんだから。

 それに元とはいえ、これでも聖女。清貧を心がけないとね。


「随分とご機嫌だな」


 そのご機嫌を急降下させるような冷たい声が聞こえた。

 王宮から出てきた私を待ち受けていたゼクレア教官だ。

 その前には、王宮まで乗ってきた馬車があるらしい。

 またあれに乗るの? また目立っちゃうんだけど。


「なんだ。その顔は……」


「いや、私は1人で帰ろうかなって」


 あはははは……、と笑うと、何が気にくわなかったのか、ゼクレア教官は目を細めた。


「15歳の女を暗い時間に帰らせるほど野暮じゃない。大人しく乗れ」


「はい……」


 はあ。変なところで、紳士なんだからこの教官は。


 私は渋々乗ると、馬車は動き出す。

 護衛役なのかゼクレア教官も乗り込んできた。


「随分と長話だったようだが、総帥と何を話した?」


「アーベルさんと……」


「アーベルさん?」


「いや、そのそ、そうすい??」


「別に言い換える必要はない。総帥が許したのならな」


 なんか随分と不服そうな態度なんだけど。

 もしかしてゼクレア教官、妬いてたりするのかしら。

 ふふふ……。ちょっと可愛く思えちゃった。


「それで?」


「他愛もない世間話です。私の故郷の話や兄や姉の話を……」


 ウソは言ってない。

 しかし、話にはいくつか前世の内容が含まれていたことは、ゼクレア教官には言わなかった。


「そうか。なら、たまに顔を出してやってくれ」


「え? そ、そんな気軽に会っていいんですか?」


「そもそも勇者と気軽に接する人間が希有なんだよ」


 あ……。まあ、そうね。

 振り返ってみると、私かなり気安く接していたかも。

 最後の方とかタメ口をきいていたような気がするし。


「しばらく公の場には出られない。お前でも少し気晴らしになるだろう」


「どういうことですか?」


 私は質問すると、ゼクレア教官は1度目を伏せた後、口を開いた。


「お前だけには言っておく。勇者アーベル――魔術師師団総帥に無期限の謹慎処分が言い渡された」


「……試験での責任をお取りになられたのですね」


「むしろそれでよく済んだと言える。魔術師のひよっこと言っても民間人だ。それに対して勇者が手を上げたのだからな」


 なるほど。話していて感じていたけど、アーベルさんにはどこかずっと悲哀のようなものが感じられた。

 使い魔との関係性に対して、ようやく踏ん切りがついたからだと思っていたけど、裏ではこういう事態になっていたのか。

 擁護してあげたいところだけど、情状酌量の余地はあっても、やはり契約の指輪を自ら放置したアーベルさんが悪いとしかいいようがない。


 こういう時、当事者になりきれない私は無力だ。

 もし私が側にいたらと考えても、それは結局絵空事でしかない。

 でも、人にない力を持っていた私には、アーベルさんの孤独が少しわかる。

 何者にも頼れない、という絶対的な孤独。

 多分、いつ押しつぶされてもおかしくない重圧の中で、唯一アーベルさんを支えていたのは、ミゼルだったのだろう。


「ゼクレア教官はアーベルさんに会っていかないんですか?」


「……そうしたいのは山々なんだが、俺たち師団長と幹部は基本的に面会が許されていない。団員にも制限がある。お前は民間人だから許されたんだ」


「そうだったんですか」


「それに……。何を言えばいいかわからん。こんなことは初めてだ。アーベルとは昔からの付き合いなのにな」


「幼馴染みなんですか?」


「そうだが」


 へぇ……。ちょっと意外。

 でも、なるほど。それで必要以上に、アーベルさんの世話を焼いているのか。

 やっぱりゼクレア教官って顔は怖いけど、可愛いところがあるわね。


「何故笑う?」


「あ。いえ。ゼクレア教官とアーベルさんの子ども時代をイメージしたら、あまりにかけ離れているというか」


 どう考えても、貴族の子息とそのお付きって感じよね。


「あ。そうだ。昔の子どもの頃の話とかどうですか? 堅苦しいのは抜きにして」


「それは悪くないが……。しばらく俺たちは会えないんだぞ」


「じゃあ、手紙をしたためたらいかがでしょう?」


「手紙?」


「手紙ならじっくり言いたいこと、書きたいことを考えることができますし。できたら、私がお届けします」


「手紙か……。そう言えば、あいつに手紙を送ったことなど、1度もなかったな」


「いいですよ、手紙。私も家によく書いてます」


「……わかった。次、お前がアーベルに会う時までにしたためよう。頼めるか」


「勿論です」


「なんでそんなに嬉しそうなんだ?」


 ゼクレア教官は足を組み直し、ムスッと鼻息を荒くする。

 ちょっとふてくされてしまったのか、明後日の方を向いて黙り込んでしまう。

 からかいすぎたかもと思ったが、ゼクレア教官は口を開いた。


「ミレニア……」


「はい?」


「…………礼を言う」


 そう短く伝えられた数分後、馬車は私の下宿先に辿り着いた。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] いたずら好きのおっさんとか出てきそうですね!
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