【二章】14. 孤島の主
シオンが〝忌まわしきの亡霊達〟のメンバーと邂逅した翌日。
シオン、キュリアス、秋水は、ミラが魔術で操縦する船に乗ってシオンの目的地──「N-843」という番号で呼ばれる無人島へと向かった。
途中、A級以上の危険度が指定されているような海洋モンスターからの襲撃を受けた一行。
巨体が波を割り、牙と触腕が船体を狙う。
しかし、秋水の一閃と、ミラの展開する魔法陣が光を帯びる度、瞬く間にモンスターたちは悲鳴を上げて海中へと沈んでいった。
襲い来る海洋モンスターの全てを秋水とミラの二人が難なく撃退し、四人は無傷で目的の島に辿り着いた。
早速目的の場所へ向かおうとするも、素材の入手場所がどこにあるか──そこまではシオンは把握できていない。
しかし、散策していれば恐らく簡単に見つかるだろうシオンはキュリアスらに説明し、四人は島を歩いて移動した。
「シオン殿には一人だけ護衛を付けて、分担して探すのはどうでござるか?」
「いえ……。もしそれが見つかっても、素材を入手できるのは俺だけだと思うので……」
そんなやり取りもありつつ、四人は固まって島内を練り歩いていた。
道中、遭遇するモンスターはどれも異常なまでに強力だった。
危険度はA級を超え、人が住む土地で出現すれば記録的な犠牲者を出すような個体ばかりだ。
しかし、そんなモンスターに対して手加減をしながら致命傷にならないようなダメージを与えつつ、秋水とミラは難なく撃退していた。キュリアスはというと、気の抜けた顔で歩いているだけだった。
「すごいですね……。殺さず、あえて大怪我させないように手加減まで……」
と、シオンはその圧倒的な腕前に見惚れていた。
「今日は狩猟が目的ではござらぬからな。凶暴なモンスターでござるが、それでも縄張りを踏み荒らしているのは拙者達でござる故に。ただ、人間を見て襲ってくるような猛獣には最低限の痛みだけ覚えてもらっているでござるよ」
「ま、海で襲ってくるようなモンスター共は一般人にも被害を出すから、容赦なく殺すんだけどな」
「……なるほど」
そんな会話もありながら、四人は歩き続けた。
◆
「(……近づいているでござるな)」
──秋水は元より、身に迫る危険を事前に察知する感覚が鋭い。
そんな彼は、その島に降り立ってから──否、それよりも前、船に乗ってこの島に近づくに連れて危険な匂いを感じていた。
ミラもまた、この島の違和感に気付き始めていた。
島に降り立ってすぐ、海岸近くの森の中にいたモンスター達は凶暴だったが、それはどこか、何かに怯えているような様子だった。
そして、島の中心部に近づくにつれ、大陸ではその強さと凶暴さで知られるモンスターたちでさえ、どこか気性の穏やかな個体ばかりが目につくようになった。
それはまるで、己の無力さを悟り、力を誇示する本能すら失ってしまったかのようだった。
そのように、モンスターに襲われる危険は薄れているはずなのに、秋水とミラの胸には、拭いきれない危機感──正体の知れない〝何か〟への不安が息づいていた。
そしてそのまま一行は歩き続け、島の中心部、森を抜けて視界の開けた草原に、──その〝何か〟はいた。
それを目にしたキュリアスは、表情を変えないまま納得したように頷いた。
「──なるほどね。だから、立ち入り禁止なんだ」
「なるほどじゃねーだろ。どうすんだよ、これ。こっち見てるぞ。おい、馬鹿侍。お前、あれ斬れるか?」
「本気を出して……、ま、一分持てば上出来でござるな」
「使えねー……。キュリアス、本気のお前なら……」
「勝てないだろうね。あれには」
「あ、マジ? いるんだな、お前より強い生物って。この世によ」
「しかし、あれなら納得でござるな」
……と、そんな会話を繰り広げる三人の十五メートル程前方には、──全長四十メートルを超える漆黒のドラゴンが、まるで四人を待ち構えるように座していた。
2026/1/25 ……三巻発売!




