サバイバル・エスケープ
不意に背中に風を感じ、私は思い切り前方に体をダイブさせた。
直後、私がいたその場所に、轟音とともに分厚い板のようなものが落下してくる。
まずい、奴らに気づかれた!
私は盗んだばかりの重たいお宝でよたよたしながら、必死で逃走を開始する。
子どもたちのために、なんとしてもこのお宝を持って、脱出する!
それだけを目標に、私は出せるだけの力を使い、必死で侵入地点を目指した。
だが、なんということだ。あれほど大きく口を開けていた入り口が、頑丈なフェンスで封印されてしまっているではないか!
ちくしょう、やられた!どこかにすき間は……。
あせりながら、整然と続くフェンスのどこかに破れ目はないか、ほころびはないか、血眼で探しているところへ、またしても轟音が響きわたる。
はっと顔を上げると、私めがけてさらに頑丈な材料でできた分厚い柱のようなものが、横滑りに襲いかからんとしている。
とっさにフェンスを思い切り蹴り飛ばし、反動で体を宙に泳がせて、辛くも激突は避けることができた。が、柱だと思っていたそれは、実は巨大な板状の何かであり、切れ目なく続くその板により、先ほどよりさらに堅牢に、脱出口を塞がれてしまう。
しまった、完全に閉じ込められた!
とにかく他に出口を探そうと、再び踵を返した、その時。つんと鼻を突く異臭が私の脳を直撃した。
まさかこれは…毒ガス!?
やられた。やつらは、宝を盗まれた腹いせに、私を殺すつもりだ。覚悟はしていたけれど、まんまと罠にはまってしまった…。
薄れゆく意識の中、私の瞳に奴らが…巨大な異形が、攻撃態勢に入る姿がぼんやりと映る。
……そして、なにも分からなくなった。
「ママぁ!蚊に刺されたあ!」
「もう、だからさっさと着替えなさいって言ったのに、いつまでもそんな格好でいるから!」
「だってえ…」
「ほら、早く網戸と窓閉めて!蚊取り線香焚くから」
「はあい。…あ、見つけた、こいつだよ!ほら、あたしの大事な血をこんなに吸って、よたよたしてる!」
「まあ、ほんとね。ずいぶん吸われたわね」
「あー、もうムカつく!」
……ぴしゃり。




