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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第三章

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隣国の王の噂

「シアを妃に、か」


 レナード王子の言葉に最初に反応したのはラリー様だった。私はあまりにも思いがけない話で消化できず、呆然としていた。ただ……その可能性はこの前おじ様から聞いてはいた。聞いてはいたけれど、あまりにも突拍子もなくて私は現実的ではないと、その可能性はないと思っていたわ。レナード王子からの求婚だって戸惑っていたのに、更にその父親からだなんて……しかもレナード王子の父親は隣国の国王だし。


「まぁ、言っているのは父親と言うよりもその周りだし、まだ戯言レベルではあるけど。でも、体調が最近優れないらしくてね。それで、傷を癒せる聖女の話がここで話題になっていただろう?だったらその聖女を妃に迎えてはどうだと、酒宴でのたまった馬鹿がいてね」

「……」

「まぁ、それはきっとあの偽聖女の話だとは思うけど。あ、こっちでもあの偽聖女の噂だけは広がっていたんだよ。まぁ、金を積んで噂を広めようとしていたからある意味当然だけどね」


 メアリー様たちがやったことがこんな形で巡ってくるなんて……


「そうですか。だが、何故シアの事を?」

「敵国だからこそ、互いの事はよく調べるものだろう?初代の聖女とセネット家の事だって例外じゃない。あの老いぼれは国の事なんかどうだっていいけど、自分のこととなると必死だからね。セネットの聖女を差し出すなら同盟を結んでもいい、なんて言い出す可能性もある」

「そ、んな……」


 レアード王子の言葉に思わず声が漏れてしまった。国王たる者が自分の事しか考えないのにも驚いたけれど、病気を治すための道具として求められることに言いようのない嫌悪感が広がった。そして……この話が両国にとって案外悪くない話だという事実が心を急速に暗く沈ませていった。


「ねぇ、辺境伯殿?早く結婚しないとあの爺が口出してくるよ?」

「だが、国王はあなたの父でもあるのでは?」

「まぁ、そうなんだけど。でも、俺の母親はあの爺に手籠めにされて俺を産んだんだ。母はそのせいで両想いだった恋人と婚約破棄する目になって、死ぬほど恨んでいたからね。俺も父親だなんて思った事はないし」


 レアード王子のお母君にはそんな過去があおりになったのね。隣国の王は好色で見境がないとは聞いていたけれど、臣下の婚約者を奪うなんて……


「なるほど」

「それに、これは礼だよ」

「礼?」

「この子を治してもらっただろう?」


 そう言ってレアード王子はお菓子を頬張っている女の子の頭を撫でた。優し気に目を細めるその表情からは、心から姪を可愛がっているのが伝わってきた。


「いくら王命での結婚とは言え、国同士の婚姻ともなれば話は変わる。そっちが優先されるだろう。だから早くした方がいいよ。まぁ、あんな爺がいいって言うんなら止めないけど。でも、あいつに正妃はいないけど、側妃六人と、子を成して妾妃になった者が二十人ほど、お手付きの女は数え切れないほどいるからね。好色で見境がないし、後宮は権力狙いの女狐たちの巣窟だ。アレクシア嬢みたいないい子は、一年と経たずに誅殺されちゃうだろうね」


 レアード王子の言葉に寒気を感じて思わず自分を抱きしめるように両腕を摩っていた。我が国の陛下は側妃も置かず、王妃様だけを大切にしていらっしゃる。それが普通だと思っていただけに、隣国の王の乱れ具合には嫌悪感しか湧かなかった。


「ま、そういう事だから。それに今日は、辺境伯に提案があるんだよね。二人きりで話が出来ないかな?」


 まるで友人に語りかけるような感じの物言いに、ぎょっとしてしまったのは仕方ないだろう。見ればレックスたちも驚いた表情を浮かべていた。ラリー様はしばらく無言だったけれど、レアード王子が私に姪と暫く遊んでやってくれる?と彼女を引き渡してきたため、ラリー様は了承の意を表した。


 ラリー様とレアード王子を残して他の者が部屋を出ると、レックスたちはレアード王子の護衛を隣の応接室へ誘ったけれど、姪の女の子が不安そうに私を見上げていたため、庭に出る事を提案した。昼間だし、ここの庭は城壁に囲まれていて安全だわ。幸いビリーもユーニスも一緒だし、レアード王子が連れてきた護衛も一人付いてきた。特に問題はないわよね。


 小さな子と何をしようと考えていた私だったけれど、子供は何もなくても楽しむ天才なのだと思い知らされたわ。ただ庭を歩いているだけでも何にでも興味を示し、それだけで楽しそうだったからだ。花を摘み、虫を見つけて目を輝かせ、鳥を追おうとする姿に、私は元気になった事を心から嬉しく思った。


 三十分ほどしたら、女の子が急にぐずり出して私は戸惑った。優しく声をかけても、抱っこをしても、いやいやと言うばかりだ。困っていると隣国の護衛騎士が、さっきお菓子を食べてお腹が膨れ、その後遊んで疲れたから眠くなったのでしょうと教えてくれた。私が侍女に客間の手配をお願いすると、騎士はその子を抱っこしたまま侍女についていった。


 女の子が寝てしまったので、私はそのまま庭の東屋に残った。ユーニスがお茶を入れてくれたので、それを飲みながらレアード王子の話を思い返していた。


 隣国の国王の話はまだ噂の段階だとレアード王子は言っていたけれど、王子の耳に入るのにも時間がかかるだろうから、かなり前の話なのかもしれない。となれば、明日にでもこの話がこちらに入ってくるかもしれないわよね…そう思うと言い知れぬ不安が押し寄せてきて軽く身震いした。


 そうなった場合、私の行く末は二択しかない。隣国の要請に従って嫁ぐか、ラリー様との婚姻を早めるか。でも、それも私の意志とは関係なく、まずは国王陛下のご判断を待つしかないわ。陛下は私と親しくして下さっているけれど国益が絡んでくれば話は別だわ。その想いが私の気持ちを一層暗くした。


 ラリー様は、どうお考えなのかしら。白い結婚をご希望のラリー様だから、もしかしたらこれ幸いと婚約を解消しようと考えられるかもしれないわね。確かに国益を考えれば、私が嫁いで同盟を結んだ方が得策だもの。そうなればこの地の情勢は一気に安定するのだから……



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