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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第三章

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メアリー様の評判

「王都からいらした聖女様は、大変強いお力を持つらしいね」

「しかも大層な美人だっていうじゃないか」

「辺境の聖女様の再来かもって話だってね」

「そうそう。ご当主様の婚約者様も力がおありだそうだけど……」

「地味だし、色気もないし、パッとしないんだよね~」

「どうせなら聖女様が奥方様になってくれたらいいのになぁ」


 騎士の救護院で治療をしていた私は、怪我をした騎士たちの世話をする女性達の会話を聞いて固まってしまった。彼女たちにお礼と必要ならば治療を、それ以外でも困ったことがないかを聞きに行こうと控室に向かったところでこんな会話が聞こえてきたのだ。側ではユーニスが険しい表情をして何か言いたそうにしているのを目で制した。彼らの言葉は民の生の声そのもの、噂を否定しても意味がないし、頭から押さえつけるのが逆効果なのは貴族でも平民でも同じだから。


「アレクシア様……」

「大丈夫よ、ユーニス。ありがとう」


 私を労わる視線を向けてくれる彼女の気持ちが嬉しいわ。


「そうですよ、お嬢様。私共はお嬢様のお力とお優しさは十分身に染みて感じております。どうかお気になさいませんよう」

「お嬢様のお力も素晴らしいものです。一度に何人も治療が出来るのはお嬢様も同じではありませんか」

「そうです、それに……あちらの聖女様は、いい噂を聞きませんし……」

「え?」


 私を案内してくれた騎士たちが慰めてくれた。彼らは私が治療した騎士たちで、今では私がここを訪問するといつも護衛としてついてくれる方々だけど、最後の言葉に私だけでなくユーニスも驚いていた。


「噂って?」

「あちらの聖女様は、身分の高い方か金持ちしか相手しないって噂ですよ」

「まさか……」


 そんなはずはないと思うけれど。神殿では身分に関係なく治療をすると触れ回っていると聞いているわよ?


「でも、お布施と言って高額な金を要求されるって聞きましたよ」

「それに、難しい治療は力を使い過ぎるからと断るって話です」

「そんな事が……」


 メアリー様が素晴らしいとの声はたくさん聞いていたけれど、この様な話は初めてだから驚いたわ。でも、ラリー様も騎士の治療は大変だと言って治療を拒まれたと仰っていたわ。まさか、相手を選んで治療しているの?


「ああ。それと最近、聖女の力を持つ女性が行方不明になっているそうです。どうかお嬢様もお気を付け下さい」

「行方不明?」


 知らなかったわ。そんな話があったの? 騎士たちの話ではここ最近相次いで聖女の力を持つ女性が行方不明になって、街でちょっとした話題になっているのだという。行方不明になった女性に共通するのは弱いながらも聖女の力を持っていて、貴族の屋敷や神殿で治療を行っていたという点だった。地方の医療が脆弱な土地では、基準に満たない者が治療を行うのは珍しくないけれど……


 いなくなった三人は出かけて行ったまま戻ってこないだけで、今のところ事件かどうかもわからないらしい。三人とも家出をする理由はないけれど、まるっきり今の生活に満足していたわけではないという。


「隣国にスカウトされたのかもしれませんしね」

「隣国に?」

「ええ、たまにあるのですよ。聖女の力に限りませんが、優秀な者が隣国に誘われて向こうに移住するのは」

「そんな事が?」


 そんなに簡単に行き来が出来るの?国境には関もあるでしょうに。


「まぁ、我々にとっては隣の村の感覚ですからね」

「あちらに親戚がいる者もおおいですしね。それもあってここの土地の者の国境超えは緩いですし」

「一人は元々は向こうの出で、実家に帰った可能性もあるそうですし」


 なるほど、ここではそうなのね。何だか不思議な感覚だわ。王都では国境を超えるのはとても難しいと言われていたから。



 治療院から戻った私は湯浴みをして着替えると、夕食までの時間少し休むことにした。今日は怪我の程度が重い人が何人かいたせいか、いつもよりも疲れの度合いが高かったから。そんな私を労わってユーニスが香りのよいお茶を入れてくれた。こんな時のユーニスの選択は完ぺきなのよね。私の好みをよくわかってくれていて、それだけで心が温まるのを感じた。


「それにしても……メアリー様が金銭を要求していたのは知らなかったわ」

「神殿ではお布施を受け取っていましたから、その感覚なのかもしれませんね」


 王都では聖女は神殿で治療するのが一般的で、神殿ではお布施という形で寄付を受け付けていたわね。だったらメアリー様もその感覚なのかもしれない。


「でも、あの方がアレクシア様と同等に言われるのは納得がいきませんわ」

「でも、大聖女並みの力があったというわよ」

「それが変なのですよ。神殿では平均的な能力しかなかったと記録されています。大聖女の候補にあがった事もありませんし」


 ユーニスはハッキリとメアリー様の噂を否定した。ええっ?どういうこと?


「ねぇ、ユーニス、その情報はどこから……」

「王妃様からですわ」

「えええっ?」


 ユーニスが王妃様付きの侍女なのは知っているけれど、どうやってそんな情報を?いつの間に?


「王妃様から、お手紙が届くんですの」


 涼しい顔をしてユーニスがそう言ったけれど……


「お手紙って……」

「文通という名の報告ですわ。非公式な物ですので伝書鳥を使っています」

「伝書鳥を……」


 伝書鳥と聞いて私は納得した。ここから王都までは馬車で二週間、早馬でも七~十日はかかるわ。でも伝書鳥だと最短五日くらいで着くのよね。非公式な文通ならこれで十分だけど……


「王妃様は今でもアレクシア様の事を心配しておいでです。式が延期になったから余計にですわ」

「そ、そう……」

「王妃様に言付けがございましたら遠慮なく仰ってくださいね。何でしたらローレンス様の過去の女性関係も調べられますわよ」

「……いえ、それはいいわ」

「そうですか?でも、気になったらいつでも仰ってくださいね」

「あ、ありがとう……」


 忘れていたわけじゃないけど、今でもユーニスは王妃様の侍女なのね。私の侍女でいるのは彼女の希望で、王妃様も私を心配して許しては下さっているけれど……それにしても王妃様と文通だなんて……まぁ、半分は仕事というか報告なのだろうけど……


「でも、金銭を要求してるのは気になりますわね。トラブルにならなければいいのですけれど……」

「そうね」


 ユーニスと同じ懸念を私も感じたわ。お布施という形でならまだしも、金銭を要求して後でトラブルにならないかしら……過去にそういった事例もあったとかで神殿では金銭は要求せずお布施という寄付の形をとっていると習ったけれど……昼間聞いた騎士たちの言葉もあって悪い予感が膨らんでいくのを止められなかった。




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