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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第三章

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久しぶりの慰問

 メアリー様との気の重いお茶をした翌日、私は久しぶりに街に出ていた。王都に行く前から始めていた孤児院や貧民院への慰問のためだ。この慰問も最初は反感や抵抗が凄くあって罵られたり物を投げられる事もあったけれど、それでも回数を重ねるごとに少しずつ態度が好意的になってきて、私はそれに手ごたえを感じていた。家族に冷遇されるのに慣れていたせいか、彼らの冷たい視線を受けても落ち込まない私に呆れた部分もあるのかもしれないけれど。


「働き口がない?」

「ええ、実は……」


 その日の貧民院での治療を終えて院長と院の様子などを聞いていた時、院長から怪我が治った人達が中々仕事に就けずに困っているのだという相談を受けた。一度仕事を辞めると元の職場への復帰は難しく、かと言って違う職場も年齢などを理由に断られてしまうのだという。仕事が決まらなければ次の生活の目途が付かず自立が進まない、出来れば仕事を斡旋して貰えないかというものだった。てっきり怪我さえ治れば元の生活に戻れると思っていた私は驚くしかなかったけれど、なるほど、実際にはそういう問題もあったのね。


「わかりました。彼らが社会復帰出来るような方法を考えましょう。何かいい案があれば教えて下さい」

「ありがとうございます」


 私は院長に協力を求め、同時にラリー様に相談する事にした。





 屋敷に戻った私は、直ぐにメイナードにラリー様の予定を確認すると、今は執務中だけど急ぎの用事はないと言われたため執務室に向かった。部屋に着くとラリー様は快く私を出迎えてくれた。


「ラリー様、少しよろしいでしょうか?」

「シア、どうかした?」

「ええ、ラリー様。貧民院の事なのですけど…」


 私はラリー様に、貧民院で見聞きしたことを説明して、何か改善策はないかと尋ねた。ラリー様が始めた貧民院だから、まずはラリー様に確認をと思ったから。それに、何かを始めるにしても領主の許可は必要だもの。


「それなら、ロバートが前に言っていた話はどうですか?」

「ロバート?」

「ええ、前から自警団を作りたいって言っておりましたでしょう?」

「ああ、あれか」


 私達の会話を聞いて、レックスが思い出したようにロバートの事を持ち出してきた。ロバートはラリー様の副官の一人で、蜂蜜色の髪と薄茶色の瞳をした青年だ。年は二十八歳とラリー様より下だが、生まれも育ちもヘーゼルダインでこの地の習慣や風習にも詳しいため、ラリー様は重宝しているのだと仰っていた。話を聞くとロバートの希望に私の希望が重なりそうな感じがする。自警団は案外いい案かもしれない。


 そんな事を考えていると、にわかに執務室の外が騒がしくなった。ドアの外で誰かが言い合っているようにも聞こえた。


「ラリー様!」


 ノックもなしで執務室に入ってきたのは、メアリー様だった。領主の部屋に無断で入ってくるなんてどういう了見かしら?重要な話をしている可能性もあるのに……


「まぁ、ラリー様、アレクシア様とお茶を?私がお誘いしても忙しいと仰ったのに……」


 何だか咎めるような物言いに呆気に取られてしまったわ。私は別に遊びに来ていたわけではいし、婚約者なのだからお茶をしていても問題はないもの。客人のメアリー様と同格で考えられても困るのだけど……


「メアリー嬢、別に私達は遊んでいたわけではありません」

「でも、一緒に……」

「シアは私の婚約者で、私の妻となる女性です。一緒にいておかしい事はないでしょう。それに今は仕事の話をしているのです。お引き取りを」

「まぁ、では私も混ぜてくださいませ!」

「は?」


 何かしら、この流れは……まるで遊びに加えて欲しいといわんばかりの気軽さだわ。普通仕事だと言われたら遠慮するものではないかしら……ラリー様もレックスもさすがに呆れを隠せなかったけれど、メアリー様は気にしていないようだった。


 ラリー様が断ったのにメアリー様は強引に部屋に居座った。席が足りないので仕方なく私がラリー様の隣に移動して、メアリー様に席を譲ったのだけど……なぜかご不満のようだった。まさかラリー様の隣に座る気だったのかしら……でも、婚約者を差し置いてそれはあり得ないわ……


「ラリー様、ロバートが言っていたという自警団とは?」


 気を取り直してロバートの案について尋ねると、ロバートが騎士の負担軽減も兼ねて自警団を結成し、彼らに街の見回りをさせたいと教えてくれた。騎士がいない小さな町や村は自警団が騎士の代わりをしているけれど、その組織を騎士の下位組織として日々の見回りは彼らに任せてはどうかというものだった。騎士だと人数も限られるし、回れる場所も限定されるけれど、自警団であればよりきめ細かく見回りが出来るだろう、というのがロバートの考えだった。彼らの方が犯罪が起きそうな場所や時間もわかるのも強みだとも。


 ラリー様は騎士の下位組織として結成しようと仰って、細かい詰めの作業はロバートに任せる事になった。彼はこの手の事が得意なのだという。


「ラリー様、お話は終わりましたの?でしたらお庭を案内してくださいな」


 私達の話に目途がついたと察したメアリー様が再びラリー様を誘った。この人はどういうつもりなのかしら……婚約者の前でその行為はかなり顰蹙を買うものなのだけど……


「メアリー嬢、先ほども言ったが私は仕事中で、これから客が来る。お引き取りを」

「え……そんな……」

「私は領主で、王都に行っていた間に仕事が溜まっているのです。暇で困ると仰るのでしたらお引き取り頂いても構いませんよ」

「そ、そんな事は……」


 さすがに邪魔するなら帰れと言われてしまえばメアリー様もそれ以上は強く言えなかったらしく、お手数をおかけしましたと言って出て行った。彼女の姿が消えると室内の空気が軽くなった気がした。無意識に緊張していたみたいね。


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