家族の末路
「では、次にセネット侯爵家への沙汰を下す」
エリオット様の次は、私の家族に対してだった。陛下のお言葉に三人は三様に身を竦ませたけれど、こんな状況にも関わらず罪の意識を感じている様には見えなかった。メイベルに至っては拘束されているのが不服だと言いたげに頬を膨らませている。
「セネット侯爵夫婦とその子女は貴族の身分を剥奪の上、生涯監視付きの修道院送りとする」
「な……!」
「そんな……」
「ええっ!どうして!」
エリオット様とは一転して、この三人は貴族位すらも剥奪という、より一層強い罰が下された。陛下のお言葉に三人は顔を赤くし、この決定に不満の声を上げた。王族への加害は基本死刑、これくらいで済んだと温情に感謝するレベルなのだけど……頭が痛い事に三人にはそれが理解出来ないらしい。
「み、身分を剥奪などと……わ、我がセネット家は建国以来の名家ですぞ」
「セネット侯爵よ。王族への加害はどんな内容であれ厳罰ですぞ。それは建国以来の忠臣であろうとも関係ない」
「そんな…」
宰相にそう言われた父は力なく項垂れた。貴族の当主として、王家の者を害しようと考えただけでも罪になるという事を、今になって思い出したらしい。メイベルが私からエリオット様を奪って婚約者候補になった時もお咎めがなかったから、自分たちは何をしてもいいと気が大きくなっていたのかもしれないわね……
「ど、どうしてですか?私は何も悪い事なんかしてませんわ!」
陛下の決定に大きく異を唱えたのは予想通りメイベルだった。その発言ですらもここではまずいというのに、この子は……
「王族に毒を盛ろうと計画しただけでも厳罰の対象。それなのに、実際に毒を手に入れたなら王族殺害容疑として十分です」
宰相が淡々とそう告げたけれど、その眼には嫌悪と侮蔑がはっきりと見えたわ。
「でも、私はお父様にそう言われただけで……」
「父親を止める事も出来たのに、エリオット様に毒を持って行ったのはあなたでしょう。それにあなたは王子妃教育の期間中だというのに、授業を抜け出して他家の子息と交流を繰り返していましたね。王子妃に求められるのは強い貞操観念。王子妃教育の理由なき欠席は十分に王家への不敬に当たります」
ああ、やはり王子妃教育をサボって他の子息と会っていたことを周りは問題視していたのね。エリオット様のごり押しがあり、陛下たちも呆れつつも様子をみておられていただけ。普通なら姉の婚約者と必要以上に親しくなっただけでも不敬と咎められても文句は言えないのだから。
「で、でも……」
「反省の色が見えないというのであれば、より強い罰も下されるが?それにあなた方には、長女であるアレクシア嬢を虐待していたことも忘れなきよう」
「な……!」
「ぎゃ、虐待などと……」
両親が声をあげ、メイベルが不満そうに私を睨みつけてきた。そんな態度じゃ反省の色が見えないとより重い罰が課せられる理由にもなるのに……
「王命で結婚する娘にろくな共も付けず、辺境伯領に追いやった事は重大な虐待と言えましょう。実際、アレクシア嬢は途中で賊に襲われている。また、アレクシア嬢のために下賜した支度金を、断りもなく次女に横流ししていた事も調査済みです。これだけでも王家への重大な不敬ですな」
「な……」
宰相の指摘に父が声を詰まらせた。
「アレクシア嬢は王家が正式に決めた王子殿下の婚約者で、その時点で準王族とされていた。なのに、あなた方は支度金をアレクシア嬢に使わず、夜会などのドレスもろくに準備していなかった。アレクシア嬢が何も言わなかったからと言って、その支度金は王家のものである事に変わりないのです」
「そ、んな……」
「それから、メイベル嬢には他家からも多数告発が上がっております。婚約者たる子息を誘惑し、嘘を吹き込んで不仲や婚約破棄に至らしめたとの事。そちらも既に調査済みです」
ああ、やはりそちらも問題になっていたのね。私が婚約者だった頃から令嬢方やその家から苦情や相談を受けていたけれど、私が辺境伯領に向かった後も続いていたのでしょうね。
「あ、あれは……私のせいじゃないわ。私は何も……」
「婚約者がいる子息と二人きりで会っている時点で、不貞とみなされても仕方ないのですぞ」
「けど、私が誘った訳じゃ……」
メイベルはあくまでも自分は悪くないと言い通すのね。いえ、本気でそう思っているのでしょうね。
「そもそも、エリオット様を誘惑して婚約解消に至らしめた事が論外だったのです。エリオット様が庇っておられたから不問とされていただけで、本来ならばアレクシア嬢との婚約が解消になった時点で不敬罪に問われる事案だったのです」
「そんな……」
「なのに、エリオット様のご厚意に甘えて王子妃教育を蔑ろにするなど…あなたの罪はあなたが思う以上に大きいのです。それが理解出来ないとは、セネット候はどのような教育をされていたのか…」
「……」
まだ言い募ろうとしたメイベルだったけれど、宰相の言葉にそれ以上何も返せなかった。三人は騎士たちによって連れていかれたけれど、エリオット様とは逆に最後まで納得出来ないように見えた。




