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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第二章

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妹の告発と姉の実績

「待ってくださいっ!」


 ラリー様の理路騒然とした追及に、両親だけでなくこの場にいる誰もが言葉を発することが出来ずにいる中、声を上げたのはメイベルだった。両手を前で組んでラリー様を潤んだ眼で見上げている。ほんの少し前に近づくなと言われたというのに、もう忘れたのかしら……頭どころか胃まで痛いわ……


「ラリー様、お待ちくださいっ! 両親は悪くありませんっ!」


 怖いけど言いたいことは勇気を出して言う健気な私、という雰囲気のメイベルに、周囲の目が集まった。何も知らなければ可愛くて庇護欲を掻き立てられるのだろうけれど……この流れではあまり効果はないと思うわ。皆様、呆れた表情をだもの。


「セネット侯爵令嬢、あなたに愛称を呼ぶ許可を与えた覚えはないと、先ほど言ったばかりだが?」


 眉をひそめて不快感を露にしたラリー様にメイベルは一瞬ビクッと怯えた様に身体を揺らしたけれど、泣きそうな、縋りつくような表情でラリー様を見上げた。ああ、またメイベルの十八番ね……何だかイラっとする。


「も、申し訳ございません、辺境伯、様……でも、辺境伯様は騙されているのですっ!」

「……騙されている?」


 ラリー様が不快感を隠しもせずに繰り返しただけなのにメイベルの表情が一層明るくなったけれど……嫌な予感しかしないわ。


「はいっ! 辺境伯様は、お姉様に騙されているのです」

「……ほぅ……」


 一言、そう告げたラリー様の言葉を肯定的に受け取ったらしく、メイベルは目を輝かせた。そこで喜色を表すなんて、ラリー様の怒りを余計に煽るだけだと思うのだけど……


「お姉様は本当に意地悪なんです。私も何度も苛められました」

「……具体的には?」

「え、っ……」

「具体的に、いつ、どこで、何をされたというのだ? そなたが姉の婚約者を奪った以上の事があったと?」


 ラリー様、容赦がありませんが……もしかして楽しんでいらっしゃる?


「な……あ、あれは……お姉様が意地悪だから、エリオット様に愛想を尽かされて……」

「他人の婚約者を奪うだけでも非常識だが、身内の、それも実姉の婚約者を奪う方がよほど意地が悪いと思うが? その後のセネット家の対応も褒められたものではないしな」

「それは……」


 両親がどんな行動をとっていたかなんてメイベルは知らないわ。自分以外のことには興味がないから。だから答えられないのね。


「アレクシア嬢は文句も言わず、付き添ってくれた護衛達を労わりながら我が領に来られた。途中で襲撃を受けて傷を負った者には治癒魔法で癒し、我が領に来てからも隣国との戦闘で傷つき退役を余儀なくされた騎士たちを、身分に関わらず癒して社会復帰させている。その様な優しい心根の者が、どんな意地悪をしたというのだ?」

「……」


 何も答えられないメイベルに対して、周りの貴族たちは一様に騒めいた。私が護衛や辺境伯領の騎士たちを癒したこともだけど、私が襲撃を受けていたことに更に驚いたみたいね。


「アレクシア嬢は騎士達を癒し、夫を失い困窮に喘ぐ未亡人に職を与え、その子供たちに勉学の機会を与えようと新しい政策を始めた」


 夜会の参加者に言い聞かせるように話していたラリー様はそこで一旦言葉を区切る。そしてメイベルを静かに見据えた。それだけでメイベルから無音の悲鳴が上がったように感じたわ。この威圧感、さすが王族にお生まれだけあるわ。


「その間、そなたは何をしていた? 姉を上回るだけの何かを成し遂げたのか? 噂では王子妃教育すらもまともに出来ていないと聞くが?」

「……っ!」


 ラリー様の糾弾が鋭すぎて怖いわ……こんなお厳しいお姿は始めて見るし、私でも足が竦みそう。甘やかされて嫌なことから逃げてばかりのメイベルには耐えられないわね。


「……っ、……ひ、酷いですわ、ラリー様……」


 案の定、このような場だというのにメイベルは泣き出してしまったわ。でもまぁ、泣いて相手の同情を引くのはメイベルの常とう手段だから驚きはしないけれど。でも、ラリー様相手では逆効果だろうに……


「泣けば許されると思うな。王族は非情でなければ務まらぬ厳しい立場だ。そのような甘い気持ちでは王子妃などとても無理であろうな」


 冷たく一瞥したラリー様だったけれど、誰もメイベルや両親を庇う者はいなかった。周りにいる貴族たちは皆、両親とメイベルに冷たい視線を向けるだけ。頼みの綱のエリオット様も側にいらっしゃらないし、これは居たたまれないでしょうね。


「私としては、アレクシア嬢と婚約解消してくれたエリオットに礼を言いたいほどだ。仮に意地が悪くとも、やるべきことをきちんとやってくれるのであれば異存はないが、これほどに聡明で心優しく、慎ましい令嬢は今まで出会ったことがない。恥を恥とも思わず、礼儀も弁えない者とは雲泥の差だ」


 ラリー様、褒め過ぎです! と私は叫びたくなったけれど何とか耐えたわ。私はそんなに出来た人間じゃないのに。いやだわ、顔が赤くなっていないかしら……



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