表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/214

初めての治療

 婚約披露パーティーは盛況に終わり、私の周囲は一気に静かになった。


 まずスザンナとレイズ子爵が謹慎処分になった。スザンナは資格がないのにパーティーに参加したとして、またレイズ子爵も公爵夫人への不敬を問われてだ。そして他の使用人たちの声を元に彼らの調査が始まった。


「彼らは辺境伯様が何も仰らないからと随分好き勝手していたようですね」


 ビリーが示したのは彼らの横領や不正取引の証拠だった。彼は私の護衛だと思っていたけれど、それだけではなかった。彼はラリー様を案じる国王陛下から密命を受けていて、ラリー様の害になる者を排除するよう命じられていた。ユーニスは動じなかったから知っていたらしい。


「由々しき問題じゃな」

「はい、まさかここまでとは……」


 おじ様が重々しく呟き、モーガン殿が唸り声を上げた。モーガン殿はレイズ子爵が謹慎になったので、その代理を命じられていた。


 調査の結果、レイズ子爵を筆頭とする一派が捕縛された。レイズ子爵は数々の横領が発覚して騎士団の副団長の地位と子爵位を剥奪された。夫人とその子たちも貴族の身分を失い、家門の者も貴族籍を剥奪され、これからは一平民として暮らしていくことになるという。


スザンヌはラリー様の護衛を解任、侍女たちの采配の権限も剝奪され、嫁ぎ先のハウエル男爵家からも放逐されてしまった。ハウエル子爵は若くして未亡人になったスザンヌに同情的だったけれど、子爵夫人はラリー様への態度に度々苦言を呈していたという。それを無視してのこの結果にとうとう子爵は庇いきれなくなったとか。


「こうなったのもラリー、お主にも一因がある」

「義父上……返す言葉もありません……」


 おじ様は彼らが増長する一因はラリー様にもあったとして、使用人たちへの罰は軽めにするよう仰った。レイズ子爵らの横領や不正は小さなものが多く被害が小さかったこと、また元より慢性的な人手不足で、問題のあった使用人を全て解雇すると屋敷も騎士団も回らなくなるからだった。


 それに関してはメイナードもおじ様と同じ意見で、彼も度々ラリー様に進言していたという。結局、問題を起こした使用人は減給と配置換えとなり、今後は上司が厳しく動向を監視して、次に問題を起こせば解雇すると宣言するに留まった。甘いと言われそうだけど、辺境伯家の屋敷を解雇された場合問題ありの人物とみなされ、領内でいい働き口を見つけるのは難しいのだとか。


「ラリー、これからはしっかりするんじゃぞ。これからはシアが危険に晒されるんじゃからな」

「肝に銘じます」


 何だかラリー様が大きな犬になったように見えたわ。本当の親子のような気安い関係が羨ましく見えた。


 スザンナが担っていた家政だけど、本来なら夫人の仕事でいずれは私が担うことになる。でも、さすがに婚約者の立場では反感を買うだろうと、婚姻までは別の方に任せることになった。ラリー様は以前この屋敷のメイド頭をしていた方の名を上げ、彼女を頼ろうと仰った。その方はモリスン男爵の夫人で、三年前に騎士であった夫の怪我が原因で職を辞した方だった。


「シア、モリスン夫人の復帰だけど……ひとつ提案がある」

「提案、ですか?」

「男爵の怪我の治療をお願いしたいんだ」

「治療? 構いませんが」


 怪我で退役した騎士の治療は私がラリー様に提案した計画の一つだから、むしろ願ってもないことだけど。


「シアが言っていた計画をどう進めようかと考えていたんだけどね。彼をその手始めにしようと思うんだ」


モリスン男爵は一個中隊を任されるほどの実力があり、いずれ副団長になるだろうと言われるほどの方だった。ラリー様も彼の退役を残念に思っていたため、男爵の傷を私が治して夫妻の忠誠を得るよう勧めて下さった。これで強力な味方を得ることが出来るし、あの計画も進められるわ。私はその提案を二つ返事で受けた。


 モリスン男爵は四十代前半の陽気で人懐っこい方だった。若い頃からこのヘーゼルダイン辺境伯領の騎士団に属し、数々の武勲を立てていた。一時期は騎士団の副団長を務める程だったとか。でも、三年前の国境付近での小競り合いで部下を庇って利き腕と左足を負傷し、職を辞したという。夫人もメイド頭をされていたのだが、夫の看病のため退職していたのだ。


 その後、彼らの後に収まったのがレイズ子爵とスザンナだったという。スザンナはその少し前に夫を戦闘で亡くして気落ちしていたため、ラリー様は張り合いが出るならと彼女に侍女の采配を任せたのだという。男爵に非はないけれど、現状の切っ掛けになった人だった。




 ラリー様がモリスン男爵に連絡し、数日後、男爵は迎えの馬車に乗って夫人と共に屋敷を訪れてくれた。ラリー様はご夫婦に私たちの計画を話して協力を取り付け、実際に治癒法を受けたモーガン殿も口添えしてくださった。


「おおっ、あ、歩ける……!!」


 私がモリスン男爵に治療を施すと、手と足の傷はすっかり癒えてしまった。ラリー様は男爵よりも私の心配をされていたけれど、これくらいの傷なら全然問題ないわ。予想通り男爵は復職を願い出たため、ラリー様は夫人にもメイド頭への復職を打診した。お二人とも二つ返事で復職を受け入れ、我が領は二人の貴重な人材を取り戻すことに成功した。


 ちなみにこの話は使用人たちの間で大きな話題になって広がっていった。地味で面白味がなく、妹を虐める性悪さから王子に婚約破棄された女だと聞いていたのに、聖女の力を持っていて、惜しまれて引退した騎士を癒してしまったのだから。


 この日を境に使用人たちの態度は一変して、刺々しい視線を向ける人はほとんどいなくなった。お陰で少し気が楽になったわ。ユーニスの負担も減ったのならいいのだけど。


そして私はこれを機に、ラリー様と相談しながら怪我で退役した騎士たちの治療を始めたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ