婚約披露パーティー
そうこうしている間に婚約披露のパーティーが開かれる日を迎えた。
私は昨日からマッサージだ、爪の手入れだなんだと、身体を磨き上げるために朝から大忙しだったけれど、それは当日もそれは変わらなかった。それらが終わったら今度はドレスや宝飾品で飾られ、髪を結いあげて化粧もされて、完全に別人に仕立て上げられた。うん、化粧も盛りに盛られて鏡に映る私はもう別人だわ……
「まぁ、アレクシア様! お綺麗に出来ましたわ!」
「本当に、ここまで映えるとは思いませんでした!」
ユーニスとヘイローズ、ヘイローズが連れてきた侍女たちが、私を囲って大騒ぎだ。今日の私のドレスはハイネックとパフリース、ふんわりと広がるスカートと一般的なもの。私くらいの年齢の令嬢が好む形で、トップは鮮やかな青で、スカートの下に向かって青銀に変わり、金と濃紫の刺繍がアクセントになっていた。色合いは鮮やかだけど生地は光沢を抑えたシックな素材のせいか下品にならず、むしろ気品があって王都でもこれだけの品はあまりお目にかかれないように思えたわ。スカートもよくよく見ると、微妙に色合いが違う透け感のある生地が重なって青銀色になっていた。
アクセサリーもドレスに合わせ、金の地にラリー様の瞳の色と同じ青玉を中心に据え、その周りを小さな紫玉が彩っていた。どこから見てもラリー様の色だわ。婚約披露のパーティーだから当然なのだけれど。
「ああ、綺麗に出来ましたね」
にこやかに入ってきたのはラリー様だった。こちらは私の髪色の青銀色を基調に、襟などには鮮やかな青を刺し色にして、金と濃紫の刺繍が施されていた。アクセサリーは銀の地に濃紫があしらわれている。互いの色を纏って、二人並べばお揃い感が強い。
いつもは無造作に後ろで一つ結びにされている髪も、今日は綺麗に後ろに撫でつけられて飾り紐で結われている。そのせいか綺麗な青い瞳が一層鮮やかに見えるわ。背が高くて姿勢もよく、まるで男神が舞い降りたよう。これほど麗しい殿方は王都でもお目にかかったことがないわ。思わず見とれてしまったけれど、これは仕方がないと思う。
「えっと……何か?」
暫くラリー様に見とれてしまったけれど、そんな私をラリー様がじっと見ていたため、私は見過ぎて気を悪くさせてしまったかと思って焦ってしまった。うん、まじまじと見るなんてマナー違反だわ。あまりにもお美しい上に気品と風格もおありだから、気を抜くと呑まれてしまうわね。
「いえ……シアがあまりに愛らしいので…」
「……は?」
「いつも飾らずにいらしたから気が付きませんでしたが……こうして着飾ると春の妖精のようですよ。失敗しました……もう少し衣装なども増やしましょう。あんなに地味な格好ではシアの魅力が半減してしまう」
「は、ぁ……?」
何だか恥ずかしいことをさらっと言われたような……褒められて……いるのよね? 王都にいた時は地味だ、花がないと貶められるばかりで褒められた事がなかったから、この状況が今一つ理解出来ない……これって褒め殺しなのかしら? 私は呆気に取られてしまい、またラリー様の真意がわからず何も言えなかった。
「もう、アレクシア様。辺境伯様は褒めて下さっているのですよ」
「ええ? そうなの?」
「シア……今の言葉のどこにそれ以外のものが……?」
ラリー様が首を傾げ眉間に薄く皴を刻んだけれど……そんな姿もかっこいいなんて反則だわ……いえ、そうじゃなくて……
「だって……王都ではそんな風に言われた事がなかったので……その……褒め殺しかと?」
そう言った私に、ラリー様だけでなくユーニスやデザイナー達も頭を抱えてしまった。そんなにおかしい事を言ったかしら……でも、令嬢たちの会話の多くは皮肉や嫌味で出来ていたし、王都ではそれが普通だったわ。
「ヘイローズ。明日にでもシアの普段使いのドレスなどを手配してくれ。ああ、アクセサリーなどもセットで」
「畏まりました。お任せください!」
待ってましたと言わんばかりにヘイローズが背を正して請け負った。
「他にも、シアの身の回りを整える侍女を増やそう」
「ラ、ラリー様、さすがにそこまでは……」
「いや、前から思っていたんだ。シアに付ける侍女が少なすぎると」
「でも……今でも十分に間に合っていますし……」
変な人を付けられるくらいならユーニス一人がいてくれたら十分だわ。多少のことは自分で出来るもの。
「いいや、足りな過ぎる。心配しないで、私が信用できる者を付けるから」
そう言われてしまえば何も言えなかった。スザンナが手配した者ではなくラリー様が信用している方なら大丈夫かしら? 私が周りに人を置かないのは単に危害を加えられないためと、まだ誰が信用出来るかわからないからなのだけど。
だけど本音を言えば今は一人でも味方は増やしたいし、ラリー様とももう少し歩み寄りたい。それを思えば申し出を素直に受けるしかなかった。




